虫さん、よう鳴いとるよなぁ……
友達みんな一緒で嬉しいんかもしれん。
それとも、近くにおっても姿が見えんから…
寂しくて鳴いとるんかもしれんね。
自分を見つけて欲しい、って。
[彼とは年も違う。そんなに話したことはなかったかもしれない。
それでも、饒舌に語りだす双季。
それに彼は何かを、感じただろうか。
もし目があえば、へらへらと笑ってみせた。**]
あらあら、お口の周りがソースで茶色になっちゃって。
[今年の焼きそばも時計屋の息子が焼いている。
手渡した一皿を連れの少女は、美味しい美味しいと言いながらもの凄い勢いで食べ終えてしまった。]
まあ、やっぱりこの子私に似ている?
弟のところの娘なのよ。
……チグサ君、ちょっと残念そうな顔をしてるけど、あなたさては私の隠し子だと思っていたんじゃない?
[首をすくめるチグサに苦笑いを向けながら、食べ終わって空いた姪の手は繋いで離さずにいる。]
[しゃがみこんで、姪の口元のソースをハンカチで拭き取る。]
あなた、小学校のお給食の時もお口の周りが真っ赤になったり真っ白になったりしているんじゃない?
[そんな事ないもん、もう幼稚園の子じゃないもん、とふくれた少女のほっぺたを指で突っついた。]
……そうなの。
誰かが寂しいって言っていたのね。
[この子にも聞こえたのか。]
去年の今日、ここからどこかに行っちゃったお姉さんがいたのよ。
おうちの人やお友達と離れちゃって、きっと寂しいのね。
[虫の声に混じって、時折聞こえる杏奈の声。]
だから。
今日は伯母ちゃんから絶対離れては駄目よ。
[村の行く末を占う儀式はこの当代の餅肌には向いている質の儀式であっただろう。杏奈への不安は続いていようとも]
……どれ、今年の占いの儀式は村の者の家庭の運気について出るよう強く願って執り行ってみようか。
[「かみかくし」がささやかれているからこそ、もし安泰の結果が出たのならば村の者は安心するであろう。それに、村にはかみかくしとは別に様々な事情で家族と離れ離れになっている少女も居ると耳に挟むこともある――家庭事を占うのには向く年であろう]
……ラムネを一本いただけるかな。
[>>8そして柳樂商店の出店にて、青年に声をかける。
――彼が言いかけた言葉は、丁度神事への思考のタイミングと重なっていた為、聞き取る事がなかったままだ]