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―続・クランクアップ〜Level6〜―
…あ。
ありがとう、須藤先生。
[差し出されたお茶のペットボトルを手に取り、いつものように微笑む。
お誘いのことで悩んでいたの、悟られていない…わよね?]
ええ、公開がとっても楽しみ。
きっと絶賛されると思うわ。みんな一生懸命やってたもの。
[須藤先生と共演出来たことも嬉しかったのだけど、
それを口にするのはなんだか面映い。]
うふふ。
ホラー映画って聞いてたから、ちゃんとやらなきゃって思ったの。
ちょっと怖いくらいの方がいいと思うわぁ?
[軽口を返しながら、くすりと笑う。]
…え?
あ、いいんですか?
[あまりに嬉しかったものだから、思わず声が裏返ってしまった。
気付かれていませんように。]
あの、わたし…美味しいフレンチのお店知ってるんです。
あ、純粋にお酒を飲むならお洒落なバーの方がいい、ですか?
[どうしよう。誘い待ちだったのがバレてしまうかも。
…でも、いいかな。別に。]
えっと、それから…。
[流石にこれは大声で話せないから、須藤先生の耳元で]
わたし、お酒はあまり強くないですから。
…つぶれちゃったら、おうちまで送ってくださいね?
[お茶を飲んでいる時、口にする話題じゃなかったかしら。
…でも、ちょっと反応が見てみたかったの。ごめんね?]
―クランクアップ―
[「おつかれさまでしたぁ!」
近藤が学園内に足を踏み入れるとほぼ同時に、監督・二宮の元気な声が響く。ちょうどいいタイミングだったらしい、と思いながら声のしたほうへ歩を進めていると、機嫌良さそうにこちらへ歩いてくる須藤に出会った。
「やあ、近藤さん。また来てたんだ?」
また、のところを強調しながら片手を挙げ、声をかけてくる。]
あぁ、今日クランクアップだって聞いたから。……どうせ此処は出勤途中だし、な。
[何気なく返事をして、慌てて言い訳を付け足す。まあ、こいつはどうせ俺の目的なんて重々承知なんだろうけど。
「今度奢ってくださいよ、近藤さん。誰のおかげで自由に此処出入りできると思ってるんですかぁ」
ひとしきりうるさい年下の友人を適当にかわしていると、片付けを終えた生徒たちが三々五々帰り支度をはじめた。それぞれに弾けんばかりの明るい表情を浮かべている。]
[柔らかい髪を揺らしながらこちらへ駆け寄ってくるコハルの姿を認める、と須藤はにんまり笑って近藤の脇腹をつつき、ついと踵を返した。……やたら上機嫌だ。何か良いことでもあったのだろうか。
息を切らし頬を上気させながら近藤の元へ駆け寄ると、コハルは満面の笑みで挨拶をくれる。
「先生、来てくださったんですね。ありがとうございます!」
ぺこりとお辞儀をした彼女の背中は、映画を撮り始めた時より幾分ほっそりしている。出番の多い役どころを熱心に演じていたせいだろう。]
どういたしまして。いい映画になりそう?
[学園の教師ですらない自分に、学園祭の出し物である映画の出演依頼が来たときには驚いた。しかも、それが普段は大人しい彼女からの依頼とくれば二重の驚きであった。
さすがに最初は断ったのだが、何故か小山内にもしつこく勧められ、「1日目」だけならという約束で出演を決めたのだった。
「近藤先生、母さんに失恋してから暗いんだもん。なんか明るい話題に乗っかってみたほうがいいと思ってさ。うぷぷぷぷっ!」
……最近ハマっているゲームの影響だかなんだか知らないが、小山内はここのところテンションがおかしい。明るくなったのはいいのだが、方向性が間違っている気がしないでもなかった。
だいたい、一時期は“近藤先生にならお父さんになってもらってもいいよ……!”なんてかわいいことを言っていたのに、いざ近藤が振られたときには物凄く嬉しそうな顔をしやがったのだ。あのマザコンめ、と心の中で思い出し毒づく。
しかも、誰が書いたか知らないが、脚本を渡されてみたら自分はまだ片思い中の設定だし、教室で時々視線を感じていたコハルからは“想いを寄せられている”と明記されているしで。
嵌められた、と気づいたときには遅かったのだ。]
どうなることかと思ったけど、出て良かったよ。……こうやって、三枝ともいろいろ話せるようになったし。
[このごろコハルは、以前よりもまっすぐ近藤を見て話すようになった。本人役とはいえ、大役を果たしたことが彼女の大きな自信になっているようだった。
その笑顔の眩しさに目を細めつつ、一緒に塾へ行こうかと促す。ちょうど後ろから寺崎もやってきたところだった。コハルと同じく大役をやったせいで疲労の色は隠せないが、充実の表情を浮かべていた。一緒に居た弓槻と櫻木に別れを告げ2人に合流する]
しっかし、あれ……、全部演技です映画上の設定ですって誤魔化せるのかな。
[苦笑しつつ独りごちる。本人役ということもあってか、演じているうちに本物の感情が零れることが多々あって。
――できれば保護者の目には留まってほしくないが、今更どうしようもない。]
まぁ。どうにか、なるか……。
[先ほどまで演じていたシーンについて盛り上がる寺崎とコハルの後を歩きながら、空を見上げる。
明日も、いい天気になりそうだった。]
クランクアップif
[文化祭に向けての映画撮影がようやく終わり、部屋の隅に身を寄せて安堵の息を吐く。
面白そうだと思ってつい気軽に参加してしまったが、いざ撮影が始まると体を使う事しか脳がない自分は色んな箇所であっぷあっぷしてしまい、演技をする余裕などほぼなかった。
映画の中の鷹野クルミは、少し高慢ちきなお嬢様設定だったのだが、台詞かみかみな上に棒読み、イントネーションがおかしいというまさかの負の三拍子が見事に揃ってしまい、これはもう見ていられないと神田先生からのストップがかかり結局素のままの自分で撮影に参加する事になったなんてまさかそんな…。
全体に多大な迷惑をかけてしまった事に対し、撮影中はずっと胃がキリキリしていた。
皆は気にしなくていいって言ってくれてたけど、こちらとしてはそうもいかない。
畑違いの分野に興味本位で首を突っ込んではいけないのだと今回の件でよく理解した]
テッテッテテーン!鷹野クルミの賢さが1上がった!
…なぁんちゃって。
[壁に背を預け、そのままズリズリとしゃがみ込むと手に持っていた台本をペラペラと捲り、ある部分をお嬢様口調で読み上げてみる]
…しにたくない?
なにを、ちまよった、ことをっ、いってますの?
ただ、となりのっ、しゃりょーにっ、いどー、するだけでしょおにっ。
………こんな喋り方に感情移入出来ないし、スラスラ読めるわけなぁーい!ばかぁ!
[勢いよく台本を閉じると、もう見たくないとばかりに適当な場所へ放り投げる。
緊張感から開放された今なら、気負わずリラックスして読み上げれるかと思ったりしたが、やはり無理だった]
[素のままで参加したらしたで、負の三拍子からは開放されたものの、今度は台詞覚えの壁にぶち当たり、これは一体何の公開処刑なのだろうと真剣に思ったりもした。
初回の考察部分を何度リテイクしても必ず誰かへの考察部分が抜けており、
もう次は誰かへの考察が抜けててもそのまま撮影続行という流れになってユウキ先生への考察が抜けたまま完成してしまったという。
何なの。何の公開処刑なのこれ。何が悲しくて全校生徒に自分の馬鹿さ加減を披露しなくてはならないんだろう。
やばい。なんかマジで目頭が熱くなってきた。うは、おけ、転校しよう。そうしよう。
どんよりとした空気を纏いながら、隅っこでウジウジと俯いていると、不意に頬に何か冷たい物を押し付けられ、吃驚思わず声を上げてしまう]
うっひゃあっ!!
[何事かと思い顔を上げてみると、そこには笑顔の成瀬がいた。
どうやら須藤からの差し入れのジュースを持って来てくれたらしい。
差し出されたペットボトルを受け取ったのを見ると、笑顔を絶やさぬまま成瀬は自分の隣に座り込み、頭を撫でてくれた]
…ありがと。
う〜…リウ〜…迷惑いっぱいかけてごめんねぇええ〜…!
[自分を慰めようとしてくれる成瀬の気遣いが嬉しくて、やっぱり転校するのはやめようと思った。我ながら単細胞である]
そもそも転校するって言ったところで、お兄ちゃんにヘッドロックされて終了な未来しか見えないしね…!
…え、あ、ううんっ!なんでもないっ!なんでもないよっ!えへへっ。
[思っていた事をいつの間にか口にしてしまっていた事に気がつくと、慌てて視線を明後日の方向に向ける。
そして、その視界の先にいた長澤と偶然目が合ってしまった。
劇中内での様々な事が走馬灯の様に脳裏に流れ、顔を赤くして再び俯いた。
心臓が煩い。全力疾走した時のようにバクバクと鳴り響いている。
――公開処刑に等しい散々な撮影ではあったけど、
ずっと憧れてた長澤と劇中内とはいえ、ちょっといい感じになれたのだけは嬉しかったなぁ、なんて……]
―END―
―もう一つのエンディング―
[戻ってからしばらくの間入院していた。
時間の移り変わりというのはあっという間だ。青玲学園同様に世間は一時は大騒ぎであったが、それも退院する頃には沈静化していた。
入院している間にも村瀬に変化があった。
一人称が「私」になり、
口調が変わり、
幼い行動を取ることが無くなった。
学校へ復帰する頃には同世代と馴染むようになっていた]
ねえコハルちゃん、帰りに松柏駅に寄らない?
[他の人には苗字で呼ぶようになったが、三枝に対しては相変わらずの呼び方で声をかける。驚いた顔をしたなら苦笑するだろう]
前のような夜中に行くわけじゃないの。ちょっと寄るだけ。
[またあの汽車に乗ったところであの時一緒に居た人達に会えはしないと、お互い分かっているだろう。
最後の瞬間、目を瞑る前に見た消滅していく彼の姿は今でも瞼の裏に焼きついている]
あのね、小鳥遊先生が言ってた黄泉還りの話が本当なら、もしかしたら二人とも終わりにしたかったのかもしれないって。じゃなきゃわざわざ対抗する力なんて与えてゲームを持ちかけたりしなくてもいいわけだし。
[須藤が隣の部屋に行った時に聞こえた声を思い出す。それは恐ろしくもあり、どこか切なげだった]
それに、皆にちゃんとお別れしてないなって思って……。
[松柏駅に着けば閑散としており、丁度到着した電車に人が乗り込めば他には誰も居なくなった。
夕暮れのホームでゆっくりと辺りを見渡す。
寺崎が消滅した瞬間に死者の声を聞く力も無くなり、目を閉じて耳を済ませても何も聞こえない
椎名はウミという子と会えたのだろうか。
近藤は目的を果たせたのだろうか。
鷹野は寂しくないだろうか。
櫻木にはまだあの力はあるのだろうか。出来るのなら、弓槻の心を守ってほしいと、願う]
[不意に1枚の用紙が風に乗って足元へと落ちる。
拾い上げて見ればそれは、あの日公園に忘れ、近藤が拾ってくれた自分が描いた絵だった。
今でも色あせずに色彩を放つそれは時間の経過を感じさせないものだった。
あの頃は世界がこんな風に見えていた。
今では輝きは失い、褪せたように見える。それでもこの世界で生きて行かねばならない。
絵の上辺にかけるとそのまま引き裂く。細かく破り捨てると紙切れは風に攫われ姿を消した]
――さよなら。
[一言残し、駅を後にした]
―終―
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