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さて、と。散歩にでも行こうかな。
留守番頼むよ、ハナシロ。
[遅めの昼食を済ませて、のんびり立ち上がる。
白猫に声を掛けた視線が、つ、と上がった。
猫が寝ている棚の上には、素朴な木の人形。
なぜだか、頭と手足が黒く染まっていて…]
……明日はやっぱり、背骨辺りかなぁ。
ひと繋がりの背骨、綺麗だよね。
肋骨の綺麗なカーブも捨てがたいけど。
[なんて言いながら、からりころりと*空き地へ*]
―― 裏路地 ――
ご苦労様です。
これ頼まれてた差し入れ、はいはい。
[本署の警官、パトカーの同僚にコンビニ弁当を渡す。
わざわざ隣町まで警邏の足を伸ばして買ったもの。]
…こういうのは、地元で調達したほうが
村民のみなさまの受けがいいと思いますけどね。
[ちくりと嫌味を言った理由は自身にもわからない。
鼻白んだ同僚には、
地元の弁当屋の電話番号メモを渡しておいた。]
[本署の警官、ノギ巡査部長は駐在所へと戻りゆく。
道すがらすれ違うのはアンという女学生を捜す
捜索隊の面々。顔色を窺うに手掛りは薄そうだ。
人骨遺棄の次は、行方不明。
普段なら駆り出されて足を棒にするところだが、
今は同姓のノギ巡査に代わって駐在所詰めの身。]
…差し当たっては 連絡係、か。
[パンクの直った自転車が、空き地前で減速*した*。]
―― 寫眞館→空き地 ――
[空き地はブルーシートで囲まれていた。
また骨が……そんな声が野次馬の主婦の口から届いてくる]
入り込むのは無理だなこれは。
[ふむ、と近づいて地面にしゃがみこむ。
土と同じような色をした何かが目に入ったので拾い上げると、それは鳴らない鈴だった。
覗いた駐在所は無人だったので、窓枠の溝の所に置いてゆく]
―― →弁当屋まで25メートル地点 ――
モミジさん、今日も麗しく、お日柄もよく。
[マフラーをぐるぐる巻いて、外套の襟を立てた編集者 栗田は、電柱の影から*見守っている*]
おばあちゃん、居ますか?
[引き戸を開けて、声を掛ける。
名前を呼ばれ、頷くように会釈をし、
レジスターの前に座る様を見届ける。]
節分のお豆の数、決まったの。
この間の分より二袋、多く注文してちょうだい?
[追加注文を告げながら、
差し出すのは家から持ち出した、古い写真。]
教えて、ほしい事が有るの。
あの空き地にまつわる言い伝え。
おばあちゃんなら、知ってるかなって思って。
なぜ、お社すら祭らなくなったのか。
[強請るのは、幼い頃よく耳にした、
眠る前のむかしばなし。]
[空き地で警官と何事か話している。]
ふう、ん……。
ありがとう。
[ひとしきり会話が終わると、
警官はどこかへ行った。それを見送って真顔で]
ムーミン堂……。
って読むほうが僕は好きだけどな…。
[語り部のように、紡がれるむかしばなし。
皺む声に聞き入り、情景を思い浮かべる。
「これで知っている話は最後」と告げられて、
ふと、記憶の旅から我に返る。
心に残るのは、掴めずはがゆい微かな違和感。]
――…。
ねぇ、おばあちゃん。それってもしかして――
[上がる疑問は、しかし言葉には出来なくて。
晴れない顔で立ち去ろうとする背中に、
思い出したような老婆の声。]
え? アンちゃんの…落し物?
確かに生徒手帳を落としたとは、言ってたけど…。
[手渡された手帳に戸惑っていると、
はらりと落ちた一枚のカード。]
――…ねえ、おばあちゃん。
これ、預かっていてくれないかな?
この写真と、この手紙と一緒に。
明日、もし誰か尋ねて来たら。渡してもいいから。
[アンの生徒手帳だけを返し、店を出た。]
―― 電柱の影 ――
[外套のポケットに入れていた新聞紙を取り出し開く]
2月生まれの運勢は
体調注意。年下の人から有益な情報が得られるでしょう。
[寫眞館でツキハナに読み上げた箇所をもう一度読み上げた]
……小学校にも行っとくか。
[放課後の小学校。掃除中、空き地で骨が出たという噂で持ちきりの中、自分も骨を見つけた――とは言い出せずにいた。クラスメイトに珍しく元気がない、と声をかけられ]
えっ? そんなことないよ。
ちょっと寝不足なだけー。
[実は、本当に呪われたらどうしよう、なんて怖くて眠れなかったのだった]
― 槻花寫眞館 ―
おーばーちゃん。これやって。
[蓄音機の隣で声をあげる。
差し出すのはインスタントカメラ]
ばあちゃんが現像してきてって。明日にできる?
[写真館のおばさんは、今日でも大丈夫だと笑って言った]
[「そういえばこんな噂知ってる?」とクラスメイトの一人。気になって話を聞きに行くと]
え……骨を見つけた人はあの世に連れて行かれる!?
[本当にびっくりした顔をする少年を見て、得意気なクラスメイト。「だってね」と彼女は続けた]
頭蓋骨を見つけた女学生が、行方不明……。
[「きっとあの世に連れてかれちゃったんだよ」とはしゃぐクラスメイトたちをよそに、浮かない顔をして、こっそり掃除中の教室から抜け出した]
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