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[そろそろ起きてきただろう 連れに]
獏君。こんな事になって…誘って悪かったなぁ。
私は1週間の休みを貰っていたから平気だけど…。
[溜息をつきながら 申し訳なさそうにバクに声を掛ける]
そうだ。
退屈なら、タカハル君や管理人さんのところの女の子と遊んでくればいいよ。
丁度同じ年くらいだし…
私は…少し気分が悪くて・・・
[青い顔をして しばらく ごろりと横に*なるだろう*]
- 早朝・割り当てられた家屋内 -
〔瞳は虚ろ。
捉えるのは朝の光を受けて舞う、塵。
結局、杏奈は眠りに落ちる事が無かった。
押入れからシーツを引き出すと、
身体にきつく巻きつけて部屋の隅に埋まり。
そのまま朝を迎えた、という具合。〕
―― … 。
〔勿論、あらゆる事に手がついてない。
逃げる様にこの場所へ来て朝を迎えたのだから。〕
- →割り当てられた家屋前 -
〔丸まったシーツがちょこちょこと。
家屋の前へ踊り出ると見上げ、立ち止まり。〕
……。
〔言葉無く、望み続けるのは
世界を覆い溶け出しそうな、ハナミズキ。〕
―――、え?
〔遅れて出た、感嘆は疑問に近い。
寒さでかたかたと小さく震える白いシーツ。〕
〔恐らくの高さは10m程度。
ハナミズキの中でも大型なのだろう。
その真下、白のシーツが黒の真ん丸を揺らした。〕
――、あれ?
〔黒の真ん丸がはらり、散らす言の葉。
シーツから伸びた手が頬をなぞる。〕
え、え?……え?
〔其処には確かに頬を伝う、温もり。
流す本人すらその理由がわからない。
ただ、見上げていた。それだけなのに。〕
〔杏奈の胸が、きゅうと音を立てる。
雑巾をきつく絞る様な、あの感覚。
無理に言葉にすれば、其れが一番近い。〕
――。
〔指先に残る温もりを見つめ、逡巡。
ほぅ、と息を吐き唇をきつく噛み。
ハナミズキをもう一度見上げると〕
……御腹、すいた。
〔ぽつり、と呟いた。
白のシーツはそのまま管理棟方面へ向かう。〕
- 管理棟・玄関 コルクボード前 -
〔結局、一言で言えば世間ズレしているのだ。
杏奈はシーツを纏ったまま此処まで歩いた。
目撃した者が在れば不思議に思うだろうか。〕
えぇ、と
〔辿り着いたボードの前で、
文具を持参していない事に気付くが、
周囲を見渡せば用紙とペンは備えられていた。〕
〔一枚の紙とペンを手に取り。
ペンでこつこつと顎を叩いて逡巡。〕
よし。
〔貼り付けたメモを見つめ、真顔で頷いて。
白のシーツをふわり、と翻すと
何食わぬ顔で表へと歩き出す。〕
……、
〔辿り着いたのは、
管理棟近くのハナミズキの真下。
微かな風に揺れるシーツを纏ったまま、
潤んだ瞳は暫くの間、見上げ続けていた*〕
[夢を、見た。悪い夢だった。風の魔物に襲われる悪夢]
……なん、だよ。気味悪ぃ。俺、ビビリすぎ。
[がしがしと頭を掻きながら、悪夢の原因に昨晩の夕食時を思い出す。次々に起こる奇妙な出来事と、不穏な話に口を挟めず身をこごませていた]
[起き上がって窓を開ければ濃密な花の香りに包まれる。
香りに触発されたかふと思い出される義姉の声]
"名は魂を持つって本当ね。あんた本当に獏なんだから"
[呆れた声音に思わず顔を顰める。その時テンマが帰ってきて]
オッサン、おはよ。………平気なん?
悪かった、って、オッサンがあの土砂崩れやったわけ?
ま、いいや。ん、了解。適当にしとく。
[彼の青い顔に、少し心配そうに眉を寄せて。
それでもあっさり頷くと着替えて外に出て行った]
[両手をジャケットのポケットに突っ込み、サクサク雪を踏みしめる。ふと、指に冷たいものが当たった。引っ張り出してみれば、獏の絵が印じられた銀のタグ]
……あれ。俺、これ持って来てたっけ?
[義姉から貰ったプレゼント。自宅に置いて来た筈なのに。
首を傾げるも、目の前に見覚えのない女の子が立っていて]
おはよーっす。って、あれ、昨日夕食来てなかったよね? てか、シーツ? 管理棟に行けば、毛布借りられると思うけど。
[挨拶してから気が付いて、ちょっと気まずげに自己紹介とか。
奇妙な格好に首を傾げながらも、会釈を残して通り過ぎた。
向かうは、昨日、管理人に医者っぽいこと言っていた人の所]
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