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[空き地で警官と何事か話している。]
ふう、ん……。
ありがとう。
[ひとしきり会話が終わると、
警官はどこかへ行った。それを見送って真顔で]
ムーミン堂……。
って読むほうが僕は好きだけどな…。
[語り部のように、紡がれるむかしばなし。
皺む声に聞き入り、情景を思い浮かべる。
「これで知っている話は最後」と告げられて、
ふと、記憶の旅から我に返る。
心に残るのは、掴めずはがゆい微かな違和感。]
――…。
ねぇ、おばあちゃん。それってもしかして――
[上がる疑問は、しかし言葉には出来なくて。
晴れない顔で立ち去ろうとする背中に、
思い出したような老婆の声。]
え? アンちゃんの…落し物?
確かに生徒手帳を落としたとは、言ってたけど…。
[手渡された手帳に戸惑っていると、
はらりと落ちた一枚のカード。]
――…ねえ、おばあちゃん。
これ、預かっていてくれないかな?
この写真と、この手紙と一緒に。
明日、もし誰か尋ねて来たら。渡してもいいから。
[アンの生徒手帳だけを返し、店を出た。]
―― 電柱の影 ――
[外套のポケットに入れていた新聞紙を取り出し開く]
2月生まれの運勢は
体調注意。年下の人から有益な情報が得られるでしょう。
[寫眞館でツキハナに読み上げた箇所をもう一度読み上げた]
……小学校にも行っとくか。
[放課後の小学校。掃除中、空き地で骨が出たという噂で持ちきりの中、自分も骨を見つけた――とは言い出せずにいた。クラスメイトに珍しく元気がない、と声をかけられ]
えっ? そんなことないよ。
ちょっと寝不足なだけー。
[実は、本当に呪われたらどうしよう、なんて怖くて眠れなかったのだった]
― 槻花寫眞館 ―
おーばーちゃん。これやって。
[蓄音機の隣で声をあげる。
差し出すのはインスタントカメラ]
ばあちゃんが現像してきてって。明日にできる?
[写真館のおばさんは、今日でも大丈夫だと笑って言った]
[「そういえばこんな噂知ってる?」とクラスメイトの一人。気になって話を聞きに行くと]
え……骨を見つけた人はあの世に連れて行かれる!?
[本当にびっくりした顔をする少年を見て、得意気なクラスメイト。「だってね」と彼女は続けた]
頭蓋骨を見つけた女学生が、行方不明……。
[「きっとあの世に連れてかれちゃったんだよ」とはしゃぐクラスメイトたちをよそに、浮かない顔をして、こっそり掃除中の教室から抜け出した]
[オススメ何か、と問いながら、一応自分でもメニューを眺め。
て、いれば聞こえる人の話]
……骨が出てきたり、行方知れずが出たり。
なんか、騒々しいなぁ。
[なんてぼやいていたら、先生の作品みたいだね、と客の一人にからかわれ]
円満解決したら、尾鰭つけて、新作のネタにでもしましょかねぇ。
[なんて、呑気に返してみたり]
明日でいいの。かんしきには時間がかかるものなのよ。
[右手で鉄砲の形を作ると顎に当てて、なにかのポーズ。
笑う相手が伝票を書けば]
また明日来ます!
[敬礼っぽいものをして、走り出して]
―― 小学校付近 ――
[ちょうど空き時間だった恩師と話し込み、さらにお土産に饅頭まで貰ってしまった。
紙袋片手に歩いてゆく]
アンさんは大人しくて教室の中で遊んでいるような人だった
と来たもんだ。
[急ブレーキをかけて戻ってきた]
はいこれ。おねーちゃんに。
[干し柿いっこ。
伝票をポケットにぐしゃっと入れて]
早く元気になってね。
[昨日聞いた、風邪の話。もう元気になったとは知らぬまま、長靴がこがこ言わせて走っていった]
[少しだけ足取り重く、自宅へと向かった。
途中立ち寄った空き地は、
昨日と打って変わって、ひとだかりが出来ていた。]
ひとが行方不明になると、本格的に騒ぎ出すのね。
警察もやじうまも。
[生徒手帳を拾った者が駐在所ではなく、
雑貨屋に届けた意図を、ブルーシートで酌む。]
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