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―― 電柱の影 ――
[外套のポケットに入れていた新聞紙を取り出し開く]
2月生まれの運勢は
体調注意。年下の人から有益な情報が得られるでしょう。
[寫眞館でツキハナに読み上げた箇所をもう一度読み上げた]
……小学校にも行っとくか。
[放課後の小学校。掃除中、空き地で骨が出たという噂で持ちきりの中、自分も骨を見つけた――とは言い出せずにいた。クラスメイトに珍しく元気がない、と声をかけられ]
えっ? そんなことないよ。
ちょっと寝不足なだけー。
[実は、本当に呪われたらどうしよう、なんて怖くて眠れなかったのだった]
― 槻花寫眞館 ―
おーばーちゃん。これやって。
[蓄音機の隣で声をあげる。
差し出すのはインスタントカメラ]
ばあちゃんが現像してきてって。明日にできる?
[写真館のおばさんは、今日でも大丈夫だと笑って言った]
[「そういえばこんな噂知ってる?」とクラスメイトの一人。気になって話を聞きに行くと]
え……骨を見つけた人はあの世に連れて行かれる!?
[本当にびっくりした顔をする少年を見て、得意気なクラスメイト。「だってね」と彼女は続けた]
頭蓋骨を見つけた女学生が、行方不明……。
[「きっとあの世に連れてかれちゃったんだよ」とはしゃぐクラスメイトたちをよそに、浮かない顔をして、こっそり掃除中の教室から抜け出した]
[オススメ何か、と問いながら、一応自分でもメニューを眺め。
て、いれば聞こえる人の話]
……骨が出てきたり、行方知れずが出たり。
なんか、騒々しいなぁ。
[なんてぼやいていたら、先生の作品みたいだね、と客の一人にからかわれ]
円満解決したら、尾鰭つけて、新作のネタにでもしましょかねぇ。
[なんて、呑気に返してみたり]
明日でいいの。かんしきには時間がかかるものなのよ。
[右手で鉄砲の形を作ると顎に当てて、なにかのポーズ。
笑う相手が伝票を書けば]
また明日来ます!
[敬礼っぽいものをして、走り出して]
―― 小学校付近 ――
[ちょうど空き時間だった恩師と話し込み、さらにお土産に饅頭まで貰ってしまった。
紙袋片手に歩いてゆく]
アンさんは大人しくて教室の中で遊んでいるような人だった
と来たもんだ。
[急ブレーキをかけて戻ってきた]
はいこれ。おねーちゃんに。
[干し柿いっこ。
伝票をポケットにぐしゃっと入れて]
早く元気になってね。
[昨日聞いた、風邪の話。もう元気になったとは知らぬまま、長靴がこがこ言わせて走っていった]
[少しだけ足取り重く、自宅へと向かった。
途中立ち寄った空き地は、
昨日と打って変わって、ひとだかりが出来ていた。]
ひとが行方不明になると、本格的に騒ぎ出すのね。
警察もやじうまも。
[生徒手帳を拾った者が駐在所ではなく、
雑貨屋に届けた意図を、ブルーシートで酌む。]
ただいま。
[少々疲れきった声で帰宅を告げる。
あの新聞の占い、中々当たるかもと、ひとり語ちて。]
? なぁに? これ。
[出迎えた母に、いきなり手渡されたのは、
小さな干し柿。
聞けば、昨日小さなお客さんから貰ったのだという。]
あまい。そして美味しい。
[近付く白猫にも、一口分け与える。
猫は、ひとつ鳴いて母の許で再び甘えだす。]
ねえ、おかあさん。
そのお客さん、まだいらしてないの?
[まだ見えていないというのなら、
お礼にと用意したのは、
あまいすみれの砂糖菓子と、節分への招待状*]
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