情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
[全てを配置し終え、床に座り込んで息を吐く。
封筒の中には一枚だけ展示場所の分からない写真があったのだが、それはその筈。作品でも何でもない、小さなスナップ写真だったから。
“海の写真コンクール 【中学生の部】”と書かれた垂れ幕を背に、表彰状を持ってピースを作る制服の自分と、母親と―――]
……… 馬鹿ねえ。
こんなの間違って「作品です」なんて見せたりしたら、
ただの、親馬鹿 だよ。
[くす、くすと忍び笑いを漏らす。
同時に、ぱたりと、室内に降るはずの無い雨が落ちた。]
[この写真を撮った時、自分は何と言っただろうか。
両親は何と返してくれただろうか。
多分きっとそれこそが、自分の心の忘れ物なのだろう。]
間違って紛れ込んだんだろうけど… もう。
…わたしのうっかりはどうみたって父さん譲りじゃない。
[じと目で封筒を睨む時には、目元はもう乾いていて。
立ち上がって、壁に立てかけた写真を集め直すと、
元在ったように、丁寧に茶封筒に戻した。]
[商店街の入口。
小さな子供が、騒いでる。]
『わたしね、きょうハンバーグたべたい!』
『ずるいぞ、今日のおかずはおれのすきなのってヤクソクだろ!』
『こら、お前らこんなとこでケンカするなよ。』
[頭一つ分背の高い男の子が、小さな男の子と小さな女の子のケンカを諌めている。
それを微笑ましそうに見ている一人の女性に、ケンカに負けた小さな女の子がかけよりしがみつく。]
『おかーさん、たけにぃがたたいた!』
『あ、こら、おかーさんにチクんなよ!』
『チクるも何も、お母さんの目の前だし。』
[女性のスカートをぎゅっと握って、ぽろぽろ泣きながら訴える女の子と、それぞれ対照的な男の子。
女性はそれぞれの顔を見てから、自分にしがみつく小さな子の涙を拭いて笑いかけた。]
『ほら、泣かないの。
いくつになっても泣き虫さんね、菊子は。』
[あの女性が、菊子と呼んだ小さな子を見つめる。
あぁ、そうだ。
あれは小さな、小さな私。
二人の兄、それと。]
おかあ、さん。
[記憶から、抜け落ちていた人。]
[誰かを探し歩いてはいたものの、気分は暗くて足元を眺めながら歩いてしまって。]
は、はいっ!
[自分の名を急に呼ばれ、びくりと身体を身体を震わせて声の主を探した。]
…祐ちゃん?
[駆け寄ってくる見慣れた馴染みの姿に、今度は安堵の涙を浮かべて。]
……よかったぁ。
[またへたんと座り込んでしまった。]
なんで…
私、忘れて─
[目の前のその人は、小さな私に優しい顔で笑いかけてくれている。
私も、全身で大好きを伝えていて。
どうして、こんなに大好きな人を、忘れてしまったのだろう。
どうして父さん達は、忘れてしまっていることを不思議に思わないのだろう。]
…たしかめ、なきゃ。
[無意識に、足が動く方へと向かった。]
ううん、違うの、大丈夫…
[祐樹の言葉にはふるりと結われた髪を揺らして。]
私、死んじゃったかと思って…、それで、ホッとして…
[それからようやく、自分が情けない姿である事を自覚して、瞳をまた擦って立ち上がった。]
そか、ならよかった。
[大丈夫、という返事>>68にほっと息を吐く。
良かった、に篭もるのは二重の意味。
文字通りの意味と、飛ばした結果でどうにかなったわけじゃなくてよかった、と]
あー……まあ、ただでさえ妙な事になって、更に妙な事になったからなぁ……びっくりするのも無理はない、か。
[妙にしみじみ、とした口調で言って]
えーと、あの兎が言ったの、覚えてる?
ここ、兎が言ってた空間と空間の間……『狭間』に当たる場所だと思うんだよね。
多分、飛鳥さんとか、あと貢もいると思うから、探しにいこーか?
[歩ける? と、首を傾げて問いかける]
そ、そうなんだ…、全然知らなかった。
[歩ける?と問われると、ゆっくりと頷いた。]
飛鳥さんと、みっちゃんも、落ちちゃったんだ。
大丈夫、かな…?
[自分の様に不安な思いをしていないだろうか、などと心配する余裕も少しは出て来たらしい。
そうして、二人を探しに行くのだろうか。**]
―駅前公園―
[さて、公園には誰か残っていただろうか]
……はー……
[六花が戻って来たと思えば、チカノの行方が知れないと言われ。
こちらでは初めて顔を見た瑞原とは、碌に話す間もなく。
急に様子を違えた穂積が出て行けば、入れ違いのようにして戻ってきた祐樹が姿を消し。
それを前にして焦燥していた菊子も、やがて公園の外へと出て行った。
ワスレモノを取り戻すために]
何だかなー。
[髪を掻き上げて、息を吐く。
心配しながらも同行しなかったのは、邪魔になってはいけないという思いと、もう一つ。
多分自分のワスレモノは、探し回って見つかるものでもないと思ったから。
だってこの街に、自分の思い出はない]
[疲労感を覚えて、噴水の縁に腰を下ろした。
先程穂積が何かを“見て”いた、丁度その辺りに]
何にも見えねーんだもん、……ヒント少なすぎだっつー。
[今までに得たものと言ったら、音楽プレイヤーに1つだけ入っている曲と、海を見た時に聞こえた子供の声だけ。
10年前の街並みを見ても思い出すことはないし、見えるものもなかった。
つまりは自分のワスレモノは、此処にはなくて。
なのに今ここにいるのは、たまたまこの街で何かを忘れている人たちの傍にいて、一緒くたに巻き込まれた、だけなのかも知れない]
……。
[はあ、と先程よりも大きく溜息を吐いた]
[今抱いている感覚は以前感じたものと似ている。
さっき、泣いている先輩を前にして何もできなかった時と。
或いはもっと昔――幼稚園の頃、他の子と仲良くできなくて怒られてばかりいた時と]
あー……
[苛々と頭を掻く。嫌になる程の疎外感を何とかしたかった。
手近なところではそれしかなかったから、ポケットに手を突っ込み、とりあえずプレイヤーを取り出そうとして]
[何かを弾いたような高い音が一つ、響いた]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了