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…気に入ってたんだけどな
ここは
[顔の向きはそのままに、少年を見遣る。
緩く詰るざらついた声音は当時のまま。]
ごめんなさいの一言くらい
――聞きたいじゃない?
―回想 実験体との遭遇前/崩れ掛けのビル―
[化け物が床下の穴へ落下していった直後のこと。
戦闘の余波で上層部を構成する煉瓦は次々と崩落を始めており、
その内のいくつかはビルの外側を転がるように落ちて行った。
――くぐもった呻き声が聞こえたは、大き目の破片が一つ剥がれ落ちた直後の事]
……この、声は。
[聞き覚えがある声――有翼人の天敵たる「銃」の持ち主の声であった。
たまたま近くで眠っていたか、派手な物音を聞き近付いて来たのかはわからない。
ただ、瓦礫の直撃を受け顔を上げた彼と、有翼人の視線が合ったのが不運であった]
――見たな。
[有翼人の鋭く細めた目が、帽子の下の童顔を捉える。
相手の反応はどうであったか。
こちらの気配を察し武器を構えたにせよ、それは怒りを刺激する結果にしかならない]
あたしの穢れた姿、こんなにも間抜けで醜い姿を――
[きりきりと、音がしそうな程眦を吊り上げる。
暗闇の中でそれと気付かれたかはわからぬが、既に弁明を聞く気はなく。
その手は弓を引いている]
記憶に残させるものか……!
[そして矢は放たれた。
男の記憶を、その脳ごと破壊すべく**]
―回想・了―
[賞金稼ぎとの口頭での契約を終えると、向かう先は、とある路地の裏。
先に何やら大きな破壊でもあったか、崩れる瓦礫の狭間には、いくつかの赤い塊が見えた。
その中に、もし僅か見覚えのある黒い帽子を見つけても、当然のように、一瞥を向ける以上の事はしなかった。
それから、ほんの少しずれた場所。
足元のマンホールを、 ココン、コン、コココン とブーツの踵に嵌められた金属で叩いた。]
クーラ、マルカ?生きテいるカ?
[情報屋の問いかけに、そのマンホールからでは無く、近くの建物から、ひょこひょこと小さな2つの影。
全く同じ顔をして薄汚れたボロを纏う子供は、情報屋の『目』『口』の一つ、いや、二つ。]
――地下を通じて噂を流ス。
『異形ガこの街ヲ異形ノ楽園にしようと狙い、
数名の偵察を向けタ。
偵察ヲ殺サねば、
この街ハ異形に乗っ取らレルだロウ。』
ミョイネン爺の知恵ヲ借りれバ、もっと臨場感溢れル噂に出来るダロウ。
[チャリチャリ。
差し出された薄汚い手に、それぞれコインを数枚落とす。
この街で最も信頼する2人の頷きを、にたりと哂い見送った。
あとはこれで、一般人が『異形弾圧』に動くのを見守ればいい。
――これが、『情報屋』の戦い方。]
[砂塵の街の鳴動。
―――…其れは何時から生まれたのか。
神へ生贄を捧げようとしていた夕刻よりも、ざわつく大気。狂想ではなく、滲む恐怖に彩られた狂騒。
一つの狂信に支えられた教団に比べ、種々な想い渦巻く代わりに根底にあるのは共通した意識。砂塵の街への帰属意識より来たる感情。自らの棲家を護るという結託感。]
…――――……、
[有翼人の矢から逃れ、ベルンハードの元へ戻ろうとしていた男は廃墟の中で身動きせず、少しずつ変わり始めた街の気配を全身で感じようとする。]
[今は未だ大きなうねりではない。
だが時を置けば、街を呑み込むうねりとなるだろうか。]
[正気ある者をも駆り出すには、
何も狂気に堕とさずとも良い。
その良心や不安を煽り刺激してやれば良いだけだ。
其れだけで羊の群れすら地を踏み鳴らす暴徒と化す。
隣人との緩やかな繋がりが、見えぬ大海へ漕ぎ出だす羅針盤となる。喩え星が見えずとも。]
[ウルスラとの応対を終えると
街に数か所ある隠れ家の一つへと向かう。
武器庫の鍵を開けて手にしたのは馬鹿デカイライフル。
ウェザビー・マグナム…アフリカ象やサイを一撃で屠れる程の破壊力を持つ銃で、
クジラの密漁等にも使われ話題になったか。]
……化け物には化け物用のライフルネ。
木端微塵にして報酬がぽり貰うですヨ。
[馬鹿デカイライフルを肩に背負い、
腰には愛用している2本の小太刀。
苦内数本と手榴弾、etc…
軽装が常の女がいつになく重装備なのは、
獲物に対する恐れもあってか。
それでも、持ち前の機動力を損なわないように
気をつけてはいるのだが]
……ホントは待ち伏せして、クレイモア畑に誘導して
影も残らないくらい爆殺するの一番けど
行動見えない化け物にそれ、無理ネ。
[カウコに囮にでもなってもらえばよかった
そう思いながら、異形を探し街を彷徨い歩いた]
[最初に浮かんだのは、身を潜めやり過ごす事。
だが、真実はどう在れ、ベルンハードを「完成品」だと感じていた。その為に、動かぬ思考の中で緩やかな逡巡をしている。]
……―――……、
[身体に凭れ掛けさせながら、弓型のような槍を持ち、その上でもう片方の手で拳を作ると、ぐぅっと開くようにする。
槍はばらばらに解け、砂塵は零れ落ち、硝子や金属片は渦巻くように漂う。
ゆら、ゆら、と指先を上下させ、
この先如何するか定まらぬ侭、瓦礫に背を預け、]
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