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想いガ、強カッタカラ?
[兎の言葉が相変わらず意味不明]
ソレデ、お嬢サンは無事なのカネ?
[問いもあっさり無視されて、職人は眉を下げた]
ヤレヤレ、のんびり懐かしがってモ、いられナイらしいネエ。
[覚えている。何かと世話を焼いてくれていた彼に、「前の夫のことを忘れることはできない。貴方に恋愛感情を持つことはできない。一緒になることはできない。」とはっきりと言ったことを。そして、彼はそれでもいいから通ってもいいかと聞いてきたことを。それを許したことを。]
「えー。そんなはなしありますー?」
[やはり彼女たちは懐疑的で、]
「あ。そっか。みーちゃん、でしたっけ?
あの子が嫌がってるんでしょ。だから結婚できないんじゃ・・・」
[一人の言葉に「ああそうか。」と全員がうなずく。]
「みーちゃんは関係ないよー。それよりも、エミちゃんはどう?最近、彼氏さんとうまくいってる?」
[いい加減嫌になってきたところで、「自分」も話題変換を図り、そして]
「そーそ、きーてくださいよー。カレったら・・・」
[成功し、愚痴という名ののろけ話が始まったところで、だんだんと「自分」たちの姿が薄くなり、声も小さく消えて行った。]
……今、ここで絵、描いたら。
それ、持ってけんのかな。
[しばし海を見やった後、口をつくのはこんな呟き。
それから、軽く首を振る]
つか、描いてどーすんだよ。
大体、描いたって、見せる相手は……。
[いない、わけじゃ、ない。
貢も六花も見たいと言っていたし。
まあ、今ここで絵描きなどしていたら、貢には確実にイイ突っ込みをもらうだろうが]
…………。
[自分で言って、自分でつけたオチ。
何となく、それは引っかかって。
けれど、なにがどこに引っかかったのかが、今ひとつ掴めなかった]
・・・なんなの・・・
[ふらふらと店から出る。]
「思い出」って、これのこと?これが、私が思い出さなきゃいけなかったことだとでもいうの?
[そんな馬鹿な。
そして、それを思い出したからと言って、なんになるというのだ。
この場に連れてきた変な生き物に文句を言いたくなった丁度その時、]
[カツン、とステッキを鳴らし、職人は、傍にいる二人の若者を振り返る]
ドウヤラ、ここに居るのは、ミンナ、ワスレモノをした人ラシイ。
ソノ中に、鍵と螺子も隠れてイルかもしれないヨ。
ワタシは、ワスレモノだらけだけれどネ。
[そう言って笑うと、二人の顔を交互に見た]
キミたちは、何をワスレテいるノかナ?
─ 海辺の道 → 風音荘 ─
…あたしの…ワスレモノ。
[父親の変わった理由が、そうなのだろうか。
解らない。
新しい困惑に小さく頭を振って。]
…まずは、風音荘に戻ろう。
[ここで考えていても、答えは出なそうで。
まずは、気がかりを一つずつ潰していこうと、足を進めた。]
─ →風音荘 ─
…じぃちゃん、何書いてんだろ。
[自分に背を向けたまま、黙々と何かを書き続ける祖父。どうせ気付かないんだからと横から覗き込んでみたが、何故か影になって内容を読むことが出来なかった]
ちぇ、見れねーとかなんだよこれ。
……ん?
[覗き込む姿勢から背筋を伸ばして、つまらなそうに唇を尖らせる。視線を別へと向けた時、座卓が置かれている側の壁に張り紙があることに気付いた]
「薬師の道は日々是精進」
………なんだこりゃ。
つか、薬師って───……あれ?
[訝しげに眉根を寄せたあと、何かが引っかかり僅かに首を傾ぐ]
…そーいや、前に何か聞いたことあるな、このフレーズ。
他に続きがあったような……。
[うーん、と唸って腕を組み、どうにか思い出そうとするも、すぐには出て来ない。その間に祖父が書き物を終え、書き留めた紙を封筒に入れて封をし、傍にあった小箱に封筒を仕舞いこんだ。その作業の途中、封筒の宛名が目に入り、あ、と小さく声を漏らす]
俺宛…?
貰ってねーぞ、あんな封筒。
あっ、待てじぃちゃん!
俺ここに居るんだからそれ寄越せ!!
[祖父は小箱を手にすると立ち上がり、どこかに持ち出そうとしているようだった。思わず声を上げるが、それが祖父に届くはずも無く。こちらへと向かって来た祖父が目の前で掻き消えるのを呆然として見るだけになってしまった]
…………結局、なんだったんだ。
[10年前の自分が知らぬ出来事を垣間見ることは出来たが、それが何を意味するのかまでは判明せずに終わった]
……ワスレモノ……か。
[何となく、心の内側に生じたもやもや。
これが、ワスレモノに関わるのか、と。
そんな事を考えつつ、神社の方に向き直る。
ここは確か、海の安全を護る土地神か何かを祀っていた神社で。
伯父が神主をやっていたから、その縁で掃除やら何やらにかり出される事はよくあった。
その時は大抵、いとこたちも一緒にいて──]
だよなぁ。
自分と会話するとか想像つかねー。
[そんな会話をする間にも、目の前では例の光景が進んでいて]
あー……なんっか、遭遇の心配はしなくて良い、のかも。
いや、これ俺だけなのかも知れないけど。
……今さ、死んだじぃちゃんが居たわ。
声かけても気付かなかったけどな。
[ぽつ、と。と言うには長いけれど。ほんの少しだけ気勢の落ちた声で今体験したことを祐樹に伝えた]
はぁ・・・
[帰るどころか、別の場所に閉じ込められるかもしれない。そんな話を聞かされて、それでも、やはり「ここ」で「何か」を見つけるしかないようで、その場に立って思考をめぐらす。]
10年前・・・
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