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…、ああ。
[その通りだと思う。
瞼の裏には、先に見た冷たいグリタとソラの姿がある。
あの怪我は痛かっただろう、と思った。
ぐ。と、唇を引き結ぶ。今はその時じゃない。]
お前───、”も”?
[セイジと間近に視線が交わった。
疑問は、先に見たゼンジとの親しげな様子を思えばそうかとも思う。]
うん…。だからさ。
俺は、”仲間”を増やして勝とうと思っていた。
[言葉を継いだ。]
俺は鬼で、だから日記で繋がる仲間とあとは、
他の”仲間を”見つけようと考えた。
自分が生きながら最大に世界を救えるのはこの遣り方だけで、
だから俺は、仲間と呼べる人を探していた。
…こういうと綺麗そうだけれど、別に綺麗なものじゃない。
人数は多い方が勝ちやすい。
だから俺は、完全に俺の利害で動いていた。
クルミやソラと出会ったのは偶然で、
話してみたら2人とも裏がないっていうか──…
だから、これでいいと思ったんだ。
丁度いい味方を2人ゲットしたくらいに、思っていた。
心から信用出来るとは、最初は別に思っていなかった。
けどさ。
会話をして、行動をして……ソラが言ったらしいんだ。
俺やクルミが、鬼でも何でも関係なく守る、…って。
それは利害とかじゃなく、気持ちだと思う。
俺は利害を思って動いていたけれど、
結局、何だかこう──…自分で納得出来ないと、
満足出来ない気が、してきて、
[クルミに問いを掛けられ、グリタの願いを聞いた。
思いは少しずつ、この世界で変質してきた。]
…だからセイジが、
信頼で動きたいと言うのを聞いたときは嬉しくて、
そんな風に在りたいと──…そう思って、
鬼役とか関係なく手を結べたらいいと思って、
…──それも利害のうちでも、あったけれども。
やっぱり…嬉しくて、
だからあの時俺が言った言葉は、
半分くらいはきっと打算で、けれど半分は本当だ。
けど、その”半分”が、きっとお前を傷つけた。
…俺は、日記の仲間にも信用があまりないから、
大事な仲間だと言っても、要らないような顔をされてしまうけれども、
──…多分、大事だと思うのは返されるのが大事じゃないから、
[そしてひとつだけというものでもないと思うから]
[足音を立てて、二人へゆっくり近づく]
なあー。
誰が誰を、殺したん?
[投げる問いは軽い声。
答えを黙秘されるなら、それはそれで後を追わない程度の**]
俺からは大事な仲間だと言い続けようと思っていて、
だから──…お前も、
ソラも、クルミも大事だけれど、
あっちが。とかじゃなくて、お前とも大事だと言いたいと思う。
そんな風な関係になりたいと願う。
……我侭な言い草とは分かっているけど、
もし出来るなら、もう一度あの時の言葉を繰り返したい。
[口にするのは、あの時セイジの表情を見たから気付けたこと。
傷ついた金の瞳を見たから、気付けたこと。]
けれど、今度はすぐにとかじゃなくていい。
ゆっくりでいい。
そんな時間があるかは分からないけど、それでも。
お前と、利害じゃなく…気持ちで繋がりたいんだ。
俺はお前に、これを伝えたくて──…、…
なんか、ごめん。
[饒舌を恥じたように、口を閉じた。]
お前は大事なものが多すぎる……。
そして僕はお前の大事なものを、
大事にはしてやれない、大事に思えない。
[3rdに向けた言葉を、
聞いていたのならわかるだろう。
あの女の言葉にどれほど嫌悪を覚えたか]
お前のことは、いい奴だと思う、
こんな所で、会わなければよかったって。
でも、もしこの世界じゃない所で会ってたら、
それが僕の世界なら……、
きっと口を聞くとこともなくお前を殺してた。
敵だから、っていうそれだけの理由で。
[出血は大分止まっただろうか、
押し当てている手をそっと離して]
……だから、
ここでお前に会えて良かったんだと思う。
なんか、うん……、
うまくいえないけど。
……ありがとう、
[不意に零れた感謝の言葉、
それきり何を言っていいのかわからなくて、
黙り込んだ*]
[傷口が、鼓動のリズムを伝えてくる。
当てられる手は布越しに、彼の体温を伝えてくる。]
…、ああ。
[彼が失望を重く語るのに、息を落とした。
返す言葉はなくて、それを受け止める。
言い訳は、ただ軽くなるだけだろう。]
うん、多いな。
…多いって、実は、言われた。
[誰からとも言わず、続ける。]
これだけの手しかなくて──…
零れ落としてしまうものもあって、でも、
…俺にはこれが、
ただ生き残るだけのゲームに思えないから。
勝手な、…もしかしたら鬼だから思うことかも知れないけど。
手を伸ばして、欲張りでも掴めるだけ掴みたい。
…──ただの我侭だと、分かっているけど。
[告げる。彼が応えないことに、強い感情はない。
多分そうだろうとは思っていた。
けれど伝えたかった。伝えずにいられなかった。
これも自分の、我侭だ。]
────、うん。
[大事なもの。
クルミの強さと優しさを守りたいと思っている。
大切なものに思っている。
けれどセイジの思い。
痛みを連想させる言葉に、告げられる言葉を自分は持たない。
だから、口を噤んだ。]
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