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[薄れ行く意識の中、最後に触れた手の感覚だけが
しっかりと残っている。]
ユノラフさん、
ユノラフさん
わたし、あなたの事を──愛してました。
[そうして目を閉じて、さようなら。]
[想い人を瞼の裏に描きながら、涙で濡れた瞳は閉じられた。
伸ばした左手はただ触れるだけ。
醜い化け物はもう動かない。
嵐が止んで太陽が顔を覗かせるのもそう遠くはないだろう。]
[嵐が終わったら、村人が待ち望む祭の再開。
ユハンヌスは終わらない。
櫓はまだ湖にあるのだから。
さあ、火をつけましょう。
コッコの炎は高らかに天を指し、
水の悪魔は二度と現れることは無い*]
はァ!?
[マティアスの問いに答えたのは、ミハイルだった。
ニルスがイェンニを殺そうとしている事、そしてユノラフが怪我をしている事を端的に告げられる。]
[イェンニを助けなければ、と、思った。
ユノラフは、きっと、怪我をしていてそれが叶わないのであろうから、と。
けれど、自分には目がない。
もし止めようとして誰かを殴ったとして、それがニルスである確証を持つ事が出来ない。
下手に動いて、逆にイェンニを、あるいはユノラフを殺してしまったら?
どうすればいい。どうすれば、どうすれば、どうすれば―――
マティアスにはどうする事も出来ず、立ち尽くす他になかった。
小さく、謝罪の言葉を呟きながら。]
……あァ―――
[どれほど経っただろう。イェンニの声が聞こえなくなった頃だったろうか。
ミハイルの声が聞こえる。
自分に頼み事をする声が。]
…………ユノラフ。
イェンニはな――――――醜い姿になっても、お前を愛してたってよ。
[結局、死者の声を聞くくらいしか、自分には出来ない。何と無力な事だろう。
マティアスは唇を噛みながら、静かな声で、それだけを友人に告げた。]**
[首を締めている途中、苦しげに動く彼女の左手がニルスの手の甲に傷を作る。それは彼女が生きた証を残すかのように。
やがて呼吸音も絶え絶えになってきた頃、不意に伸ばされたイェンニの手にびくりと肩を揺らす。
その時の顔が、まるであの優しかった母のようで。
ニルスはそれを拒絶するかのように、最後の力で首を一際強く締めた。
そして伸ばされた手はするりと落ち、皮肉にもあの時に届かなかったユノラフの手へと触れていた]
はぁっ…はぁ、っ…。
[いつの間にか乱れていたニルスの呼吸も次第に落ち着き、ゆっくりと両の手がイェンニの首から離れていく。
その薄っすらと人肌の残る場所には、赤い、蝶のような締め痕。
周囲の音は何も聴こえない。
ノイズのような音だけが頭に響き、視界の端にある窓の外から極彩色がひらり、ひらりと舞ってきた。
それがニルスだけに見えるものかどうかは知らない。
その極彩色の翅を持つ者は、たった今死んで逝った彼女の心臓へと留まり、鼓動するように翅を動かせばやがてまた外へと飛んでいった]
…僕は……また…
[飛んでいった極彩色を見送り、ぽつりと零れた言葉は最後まで言われず。
彼の脳裏に浮かぶは死んだ母の顔。
静かに頬を伝って流れた涙の粒は、黒い鱗に覆われたイェンニの頬へとそのまま落ちていった]
[窓の外ではやがて雷雨がおさまり始め、待ち望んでいた太陽が顔を覗かせ始める。
暫く呆然としていたニルスは、イェンニの上から退いて部屋を出て行った。
きっと近くに居たマティアスの肩にぶつかっても、何も言わずに行っただろう]
─少し前─
あ、ああ、あ…!
[イェンニの手を取ろうと伸ばした手は届かず、ただ、目の前で絞め殺されていく様を見るしかなかった]
イェンニ、
イェンニ!
――…死ぬな、死なないでくれ
[声を限りに、彼女の名を叫ぶが、届くことはなく]
――…あ、
[伸ばした手の中に、力を失ったイェンニの左手が、
……落ちた]
[ぼろぼろと、溢れ出す大粒の涙を気にもせず、彼女の言葉を告げてくれた友に礼を述べ]
ああ、イェンニ…
――俺も 愛している。
[もう、何も語らない唇に、自分のそれを重ねる。
いつしか雨は止んで、晴れ間が広がり始めていた**]
―自室―
[クレストの部屋から出た後、ふらふらとした足取りで自室へと戻った。
部屋から見える外の景色は明るく、まるで時間を夏至祭の日へと巻き戻したかのような快晴となっている]
…………。
[ベッドへと腰を下ろせば、ぎしりと音を立て沈む。
―――何もかもが終わった。
生きるか、死ぬかの、ゲームが。
たったそれだけの事なのに、この失望感は何だ。もうこの世界には失望しきっていたんじゃないのか]
[ニルスは最後まで気付けなかった。
自身がまだこの世界を、人間を、誰かが手を差し伸ばしてくれることを信じ、望んでいたことを。
そして、それを自らの手で振り払っていたことを]
[彼の頬に残る乾いた涙の痕が濡れることは、もう*無かった*]
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