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… おやァ
[ふと。霞の向こうへと逃げていく女の影に、
陰気な男は、顔を上げた。]
……お急ぎみてぇです。
[声をかけよう、という調子でなく、
独り言を男は去っていった女の背に呟き、]
[それから、自分が掘り返した穴を見下ろした。]
……ええと…
[ふと、穴を掘っていた手を止める。]
…あンれ
[男は先ほどまでスコップを動かしていた自分の手を
しげしげとまるで奇妙なものを見るような目で見た。]
[男の長い前髪の下のぎょろりとした眼を、
ぽっかりと地面に口を開けた穴に向け]
おれは、
なんだって
…まだ
…… 穴なんざァ、掘ってんでしたかね……?
[──不思議そうに、男は、首を傾げた。]
─墓地─
[暫く地面を見下ろしてから、口元を片手で覆うように撫ぜる。]
……。ああ。ええと。
そおでしたっけ。
[かくり。と、男は何かを思い出すように頷く。]
穴ぁ、あけたら…、
誰かさん…
… 埋めねえといけにゃアならんでしたっけ……?
[ぶつぶつと篭る声で呟くと、ひょろりとした背格好の男は、かくん。と、首を前に突き出し、先ほど女が逃げてきた方へ向けた。]
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