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起こしちゃって、ごめんなさい。
……私のこと、カノウくんから聞いて、ますか?
[私の世界では見慣れない和服と、落ち着いた雰囲気に、何だか気安く声を掛けづらくて、思わずぎくしゃくした敬語になる。
8番さんに味方だ、なんて言ったけど、私はこの人のことをよく知らない。]
一つだけ、ゼンジさんに聞きたいことがあって。
……そっか。
[カノウくんの言っていた、すれ違いの意味に、小さく声を漏らす。
ソラさんについては、私は口を開かない。]
ゼンジさんにとっての判断基準は、誰を生かすか、じゃなくて……どの世界を残すか、なの?
[それが正しいのかどうかは、分からない。
ただ、私は少し、首を捻る。]
んー………。
滅ばない世界を選ぶのは、ゼンジさんでも、他の誰かでもない、と、思う。
けど、選ぶことの重さとか、身勝手さとか……そういうのを、ゼンジさんが受け止めるなら、私は何も言えない、です。
[>>217言葉を探しながら、最後に申し訳程度の敬語を付け足す。
私と、その向こうにある私の世界が、ゼンジさんにどう見えているのかは、私には分からない。
でも、私は生き残るのだと、決めている。
それはゼンジさんが私をどう見ようと関係ない、私の意志だ。
私は、伝えるつもりだったもう一つの言葉を飲み込む。代わりに、口にするのは、―――。]
私は、生き残ります。
ゼンジさんが私をどう見ようと、……絶対に。
[ゼンジさんをじっと見たまま、目は逸らさない。
宣誓はいつでも、堂々と行わなければならないもの*だから*。]
[>>235 ゼンジさんの言うことは、難しくてよく分からない。でも、顔が逸らされるのは何か、抱えるものがあるかのように見えて。
私は、精一杯考える。]
私だけじゃない。生き残ったみんなが、受け止めるものだと、思う。
その為にも、私は、重さとか、辛さとか、そういうのを知っておきたい、です。……ゼンジさんの分も。
ゼンジさんだって、一人で受け止めるわけじゃない、ですよね。
[たどたどしい自分の敬語に少し眉を寄せて、私は唸る。私の考えていることが何処まで伝わっているかは分からないけど、少しでも多く伝えようとする。
知る為に。知ってもらう為に。]
人間は前に進むもんだ、っておばあちゃんは言ってました。
だから、私は立ち戻らないです。
……ゼンジさんは、私の守りたいものを聞いて、どうしたいんですか?
[守りたいものを問うゼンジさんに、私は逆に問い掛ける。
私は、選んでもらう立場ではない。その為の問いならば、答えないつもりで。
でも、視線が流れればそれを追い、私はようやくそこに、7番さんの遺体があることに気付いた。
傷一つないそれは、死んでいると知らなければ、眠っているかのようで。]
…………。
[黙祷、と呼ばれるものは、おばあちゃんと見たドラマで何度か見たことがある。昔の、祈りのスタイルだ。
ドラマで見たのを模して、黙祷を捧げる。
店の向こう、通りからはお客さんが行き交う声が、微かに聞こえていた。**]
/*
私、すごく勝手なことを言います。
ゼンジさんは、王様みたいに振る舞うけど本当は、自分と同じだけの覚悟と、辛さと、重さを背負ってくれる人と生き残りたくて、人を見て、選んでる……ええと、つまり、仲間が欲しい、のかなぁ、って。
別に、ゼンジさんの期待は関係ないけど、……でも、私は、生き残るって決めてるんです。その為なら私は、迷わない。
っていう台詞下書き。
んー……そもそも、私の言葉は、美しくないです。
私の決意って、要するに自分の為に他の人を犠牲にして我儘を通すってことだから……だから、覚悟は出来てます。
[ブレザーのポケットで、私の端末が光る。
更新された内容は、見なくても分かってる。
だってそれは、私が決めたことだ。
私が選んだ未来だ。]
……あの、思ったんですけど。
ゼンジさんは、本当は、自分と同じだけの覚悟とか、辛さとか、重さを背負ってくれる誰かが欲しいっていうか……ええと、つまり、仲間が欲しいんじゃないですか?
どの世界を滅ぼすか、じゃなくて、どの世界となら一緒に歩けるのかを探してる感じがする、っていうか……んー、上手く言えない、けど。
でも、カノウくんは、ゼンジさんのことも、仲間だって……言ってました。
[問いかける形だけど、答えは求めてない。
私の言葉は、あくまで私の主観でしかないから。
閉店の準備を始めようとしているカウンターの中に声を掛け、私はアイスピックと、なるべく細身の包丁を貰う。
逃げる為の武器じゃない。……誰かを殺すための、武器だ。]
じゃあ、私、行きます。
[物騒な刃物を手にしたまま、私はぺこりと頭を下げて、置き去りにしていた鞄の元に戻る。
中にあったフォーク数本をカウンターテーブルに置いて、代わりに刃物を仕舞ったり、荷物の整理をしてから、あと数個残った飴を、一つは私自身に、もう一つは……。]
あの。おばあちゃんが、考え事するときには甘いものがいいよ、って。
だから、……これ。
[ゼンジさんのところに戻って差し出したのは、グレープ味の飴だった。]
……ゼンジさんだけが、そういう世界にいたわけじゃないです。
私の世界も、勝負の世界だったから。
[科学技術が進歩して、戦争がなくなった。
代わりに栄えたのは、スポーツ。戦争の代わりのそれが、私たちの戦う手段だった。
人は死なない。けど、勝つというのは、希望を一つ、失わせることだ。]
………ゼンジさんは、自分勝手で、我儘で、傲慢、ですね。自分だけが悪役、みたいな顔してる。
あの。もし2番の子を守るなら、チート日記は使わないでくださいね。
もし、そうなったら……正々堂々と、勝負、しましょう。
[それは多分、もう少しだけ先の話だけど。
私は鞄を持ち、カフェバーを後にする。
端末をポケットから出して、画面を見つめながら、下りのエスカレーターを2つ分降りる。
そこが、私の日記の指定した場所だから。]
[『3階、スポーツ用品売り場で、私は、ネギヤさんを殺した。』
それが、私の日記に書かれてある、未来だった。
それが、私の守りたいものを守るための、選択だった。]
[近くの壁に凭れながら、私は>>289 眉を寄せたゼンジさんの表情を思い出す。
そこには、ちゃんと考えてものをいいなさい、っていうおばあちゃんの小言つき。
飴を持たされたのだって、元はといえばそれがきっかけだった。飴を舐めている間は、おとなしく考えていられるし、甘さが頭を動かしてくれるんだよ、って。]
…………んー……。
[詳ただ私は、守りたいものの為に、戦うって決めただけ。
それが何であるかを考えろというゼンジさん自身の中が見えなくて、もやもやする。
もやもやを放っておくのは嫌だ。けど、伸ばした手が掴み切れないような感覚に、幾ら考えても唸るしか出来なくて。何にせよ。]
………また、話してみなきゃ。
[それが実現出来るかどうかは、分からないけれど。]
[手元の日記が更新されていく。
『私は、4階に移動する。』
『私は、包丁を構えてネギヤさんを、』
日記は、まるで私の意志に応えるみたいに内容を増やしていく。それだけ、選択しうる未来が多いということでも、あるのだろうけど。
いつか、デンゴくんが言っていた言葉を思い出す。日記に書かれているではない、もっと別の選択があるはずだ、って。
つまり、日記に書かれていない行動だって、取れる。
私はゆっくりとエスカレーターを上がる。
大丈夫、って自分に言い聞かせるみたいに、何度か胸を撫でて。
>>294 聞こえたのは、ネギヤさんが叫んだ声。
ネギヤさんの背中は、私の前方にあった。
2番の子とソラさんが対峙しているのは、ネギヤさんの向こう。あれならば、私の行動を日記で見る余裕は、きっと無いだろう。
私はそっと、音を立てないようにネギヤさんの方へと近づく。]
[2番の子と、ソラさんの遣り取りが少し遠くに聞こえる。それが距離のせいか、自分の緊張のせいかは、分からないけど。
ネギヤさんに近づきながら、私は鞄の中の包丁を取り出す。そして私は、果物ナイフをブレザーのポケットに忍ばせて、鞄を捨てる。
端末は、反対のポケットの中だ。まだ、点滅していない。
両手でしっかりと包丁の柄を持ち、]
―――……ごめんね、ネギヤさん。
[少し離れた距離からの、一声。
それを契機に、地面を蹴って。
包丁の刃ごと、ネギヤさんに体当たりをしようと、駆け出した。]
[>>316 ソラさんの叫び声がする。
>>319 カノウくんが、名前を呼ぶ。
私は、止まらない。
仲間が、出来ることをしているのだから、ここで止まるなんて、出来ない。
ネギヤさんの身体にぼすんとぶつかるようにして、手にしていた包丁が何かを刺した。
がつ、という鈍い感触は、肉ではない、何か硬いもの。
>>336 驚いたようなネギヤさんの声と、傾ぐ身体に、刺したものがネギヤさんの日記であると「思いこんだ」]
………だって私、決めたから。
ちゃんと、全部背負う、って。
[大きな身体が、うつ伏せに倒れるのに合わせて、包丁からタブレットが抜ける。
私は、うつ伏せの身体の首筋に、包丁を宛がう為に屈もうとする。]
[>>345屈みこんで、ネギヤさんの首筋に包丁を宛がう。
日記を壊すだけでも、相手は死ぬ。それは分かっている。けれど、あの、7番さんのような綺麗な死にざまでは、駄目。私は、ちゃんと、自分の手を汚さないといけない。
端末は、光らない。新しい未来を教えはしない。
つまり、最後の項目は変わらず、「私は、ネギヤさんを、殺した。」のまま。
ネギヤさんは妖精だとか何だとか、って聞いたけど、まさか急所まで人間と違う、ってことはないはず、で。]
―――……おやすみなさい。
[言葉と共に、首の血管を切るつもりで、包丁の刃を皮膚の奥へと押し込もうとする。
>>342 解散の声は、何処か遠く。ぼんやりとだけ、聞こえていた。]
……ネギヤさんだって、ずるい。死んだふり、なんて。
だって、私は我儘なことをしてるだけ、だから。
どういう理由でも、私は人を殺すんだよ?
だから、……だから、綺麗なままの手じゃ、ダメなんだよ。
誰かを傷つけたひとと同じように誰かを傷つけて、
誰かの世界を壊して、誰かを殺して、……それを全部受け止めるのが、生き延びる人間の、責任、だから。
[包丁を持っていた手を、地面に押さえつけられる。
空いた手は、ブレザーのポケットの中でそっと、果物ナイフを掴む。]
私は、生き延びたい。生き延びて、神様になって……全部、無かったことにするの。
こんなこと、起こらなくて、世界はどれも残って、誰も死なない、ようにするの。
/*
むしろ読み違った、というのが読み違いだった件。ごめんなさいネギヤさん、そっと灰でもちもちしておくので許して下さい。(もちもちもちもち)
[派手に鳴っていたクラッカーの音も、ソラさんの悲鳴も、見ない。
簡単に死んだりしない、って、信じてるから。
だから私は、目の前のことだけをこなそうとする。
私の、成すべきことだけを。]
……死んで、なかったもん。
[嘘を吐かれていたことを根に持つように呟く。
武道の嗜みなどはないから、手を引かれることの意味は分からない。
ただ、ネギヤさんの体重が背後にのしかかろうとするのを察すれば、
逃れる為に身動ぎしつつ、ポケットに手を突っ込んで果物ナイフを取り出そうとする。]
私が死んだら、誰がやってくれるか分からないから、死ねないよ。
生き残っても、元の世界に戻らないつもり、だから。
大事な野球道具で人を傷つけておいて、今更野球続けてもいられないし……おばあちゃんにも、合わせる顔が、無いし。
でも、私は私の世界が好き。だから、守りたい。
まだ全員とは話せてないけど、ここにいるみんなだって……きっと、悪い人じゃない。
だから、私は神様になって、全部、……全部、元に戻す。
生き残って、神様になるよ。
それが、どんなことでも、私は後悔しない。
[ぽつ、ぽつと落とすそれは、多分、初めて明かす、私の本当の願い。]
[果物ナイフを持つ腕を押さえようとする足を、腕で払い、足にナイフを突き立てようとする。]
それは……仕方ないよ。
でも、きっと私が何かやってるんだなー、っていうのは、分かってくれると思う。
チームだし、……親だから。
それに、戻ってももう元の生活には多分、戻れない。
……何なら、みんなから、私の記憶も消しちゃえばいいし、ね。
あと、自棄になんて、なってないよ。私なりに考えた結果、だから。
だから……自棄なんて、言われたくない。
/*
ネギヤさんは走って5番さんの方に言ってたんだから、それでこっちに急ぐっていうのは何かこう、距離感的な違和感が。
1stたちのすぐ近くにいた、つもり、だった。
[ナイフがネギヤさんの足を裏を傷つける感触。
これならば、血で滑るだろう、と更に抵抗を強くしようとした矢先。]
……!
[首に、強い衝撃が走り、ぷつん、と意識が途切れた。
手の平から、ネギヤさんの血のついた果物ナイフが、落ちる。]
……ネギヤさん。
鬼は、悪者じゃないよ。鬼は、敵じゃないよ。
ネギヤさんの言葉は、まるで、鬼が悪者みたいだけど……そうじゃない、よ。
鬼だって、人間だから。
チート日記は卑怯だけど……使ってる人間が、みんな卑怯なわけじゃ、ないんだよ。
[私の言う仲間の中にいる鬼を、きっとネギヤさんは気付いてるんだろう。
私を縛りあげて、何をする気かは、分からないけれど。
仲間の邪魔には、なりたくない。
私は、守りたいものの為に戦っている、から。
手足を縛られたまま、私はごろりと転がる。
転がって進む先には割れた陶器の破片が散らばっている。
そこを目指して、転がっていこうとする。]
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