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[やがてその一時も終わり、芝生から身を起こした。
黒く固められた片翼。
目にした瞬間は硬直するも、両手を固く握るのみで、相手に感情をぶつけはしない]
あたしは――
あたしの名は、アイノ。
[地上に来てから一度も口にしていないそれを名乗ったは、礼の代わりか。
それに応えるかの如く、相手の名も返り――
少年の足音が聞こえたは、その一瞬後*]
―挿話 了―
―現在 四辻上空―
[右翼を半ばまで夜の色に溶け込ませ、宙を翔ける。
鳥目とは言わずとも、闇に紛れた事などない天人には、高空から敵を探すだけの視力がない。
故に、通常より低い位置を、探り探り飛ぶしかない]
――いた……。
[敵は思っていた以上に接近していた。
異形の少年と行動を共にしていたのだから当然か。
怒りと憎悪に歪み掛ける顔を、必死に冷静へと保ちつつ、一本の矢を抜いた]
ここまでしたんだもの――絶対に仕留めてやる。
[右手の甲から指先を伝い、矢へ、そして弓全体へ。
眩い金色は、夜闇の中では余りにも目立ち、振り向かれたなら一瞬でそれと気付かれるだろう。
だが、それと引き換えに一撃は威力を増し、ある程度の指向性すら持つ。
手を離したならそれは、緩い螺旋を描き実験体の心臓を狙う]
[自らの放つ明かりで、異能者の動作がぼんやりと見える。
この距離でも彼の聴覚では気付かれるらしい]
暗闇はこっちの不利か――。
[舌を打ちつつ、放たれた矢の着弾を見る間もなく翼を上方に伸ばす。
限りなく抵抗を少なくし、翼で空気を切るように落下して弓状の槍を回避に入る]
[相手は槍を持って矢を迎撃する。
その軌道や眩い光に惑わされる相手ではない。
気付かれた以上急所は外れただろう]
――ちっ!
[相手の行動を読み違え、下降していたのが仇となった。
槍の届く範囲ではないものの、飛ばされた砂が周囲の風と入り混じる。
咄嗟に翼を大きく振るい上昇に転じるが、それは更に砂を巻き上げる結果となり]
――目が……。
[砂埃が飛び込み目が霞む。
そのまま上昇は続けられたが、次なる攻撃にすぐには転じられず]
下がれ……っ
[相手を視認出来ないながら、斜め下へ向け弓を構える。
相手の助走と跳躍は耳に届いていたが、弓は届き槍は届かぬ距離だと高を括った]
あ……っ
[しかし、予想だにしない一閃が。
腹を切り裂き、紅を散らす。
矢から手は離れていたが、狙いをつけぬ攻撃が何処へ飛んだかはわからない]
くそ……ッ!
[空いた右手で腹部を押さえ、上昇を続ける。
高さと距離を十分に離し、両眼のざらつきが消えるまではこちらから攻撃する事はない**]
―回想 実験体との遭遇前/崩れ掛けのビル―
[化け物が床下の穴へ落下していった直後のこと。
戦闘の余波で上層部を構成する煉瓦は次々と崩落を始めており、
その内のいくつかはビルの外側を転がるように落ちて行った。
――くぐもった呻き声が聞こえたは、大き目の破片が一つ剥がれ落ちた直後の事]
……この、声は。
[聞き覚えがある声――有翼人の天敵たる「銃」の持ち主の声であった。
たまたま近くで眠っていたか、派手な物音を聞き近付いて来たのかはわからない。
ただ、瓦礫の直撃を受け顔を上げた彼と、有翼人の視線が合ったのが不運であった]
――見たな。
[有翼人の鋭く細めた目が、帽子の下の童顔を捉える。
相手の反応はどうであったか。
こちらの気配を察し武器を構えたにせよ、それは怒りを刺激する結果にしかならない]
あたしの穢れた姿、こんなにも間抜けで醜い姿を――
[きりきりと、音がしそうな程眦を吊り上げる。
暗闇の中でそれと気付かれたかはわからぬが、既に弁明を聞く気はなく。
その手は弓を引いている]
記憶に残させるものか……!
[そして矢は放たれた。
男の記憶を、その脳ごと破壊すべく**]
―回想・了―
[巨大なライフルがこちらに向けられることはなかった。
それを見て口にしかけた問いは、呑み込まざるを得ない。
何故ならこちらが弓を構えたのを合図に、相手は苦内を放っていたから]
――ちっ……
[逡巡はあったが、銃器への警戒が勝った――そしてそれは、相手にも伝わっていただろう。
放たれた苦内を弓で弾く。
うち一本は捌き切れず、手の甲に突き刺さった。
その傷をそのままに、反転した直後の女に向けて弓を構え直し]
なんなのよその重武装は!
[狙うは胸の辺り。
当たれば幸いと、撃った]
――どっちの台詞よ。
[手で受けなければ胸に突き刺さっていたであろう苦内を苦々しげに眺める。
弓で弾いた分も含め、いずれも狙いは的確に急所。
称賛するが如き口笛の音も、意識の外に受け流す]
はっ……
[小太刀が閃き矢が弾かれる。
接近戦の経験が薄い有翼人には捉えきれぬ動き。
息を呑み、左手をきつく握り締めるも]
――質問。
[掠れ声ながら、ようやく言葉を絞り出す]
答える気、あるの?
[言いながら、相手のライフルを顎で示す。
左手は力を抜いてゆっくりと下ろし、代わりに何も持たぬ右の掌を見せた]
……好きにしたら?
[返って来た言葉に吐き捨てるも、相手はケラケラと笑い。
逆に質問が返って来る]
――人食いのデカブツは、さっき崩壊したビルに巻き込まれてたわ。
もう一匹は――知らないし、教えない。
[一瞬の沈黙をおいて]
あたしが仕留める。
[相手が刀を鞘に納めるのが見えた。
歩み寄る様にぴく、と体が動くも、後退はしない。
右手を静かに下げると、左手の動きを邪魔する苦内を引き抜こうと手を掛けた]
とどめは刺していない。
屋上から落とした。それだけ。
[相手の苛立ちに気付いてはいたが、それ以上は答えようもない。
声を荒げられても――こちらの方は、退く訳にはいかず]
嫌なこった。
翼を穢された報い、奴に必ず受けさせる――!
[答えつつも間髪入れず、構えた相手に右手で抜いた苦内を投げ付ける。
同時に足は、地を蹴るようにして後退した]
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