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君だね。
今年の「代償」は。
[そう告げれば、アンは大きく目を見開いたのだったか。
その、少女に手を伸べる]
本物は、摘まれてしまったから。
[手に持つのは、自分の着物と同じ、青い花]
持って行くと、いい。
[受け取らない彼女の髪に、花を挿し。
その背中を、そっと押した*]
[おぼろげな、一年前の記憶。
忘れてしまうのが自分であるなら、これは自分が作り出した思い出かもしれないが。
一人の少女が「送られた」のは間違いない]
知っていてもなお、摘んでしまうくらい綺麗で魅惑な花、なんだろうね。
[覚えている音を繰り返す。
今年もまた、その花が咲く季節]
[それはあっという間だった。
今年の願いの代償に。
選ばれた子はまだうら若き女の子。
本物の花は摘まれてしまったからと、耳許に差された青い花はとてもとても美しく。]
またひとり、誘われた――。
[目を細め、歌うように紡ぐ数え歌は。
暗闇の空へ吸い込まれていった。]
そういえば。
アンタも気を付けなよ?
誘うもの在りきならばまた、
誘われる者在り――。
ひとの「念」は怖いからね。
精々引き込まれないようにしないとね?
――…お互いに。
[風が吹き、忽然と姿を眩ませた少女を神隠しと準える騒ぎにくつりと笑みを落し。
「コエ」の主を眇めたならば。
すれ違い様、件の星の砂を差し出しただろうか。]
しあわせになれるんだってさ。
まぁ、引きずられない為の…お守りになるといいね。
[受け取られたのならばそれで。
断られてもさして気にもせず。
やがて季節が巡るまで。
聲は深い眠りに就くか*]
……。
そうか。
[誘うもの。
誘われるもの。
聞こえた音に動きを止める。一瞬。
ようやく意味を飲み込んで、ゆるりと笑う。
と、歩き出した足が、もう一度止まった]
……へえ。
[何気ない様で差し出されたのは、小瓶。砂浜というにはロマンチックすぎる形の砂が、閉じこめられている。
視線をやれば、送り主はどんな顔をしていたか]
ありがとう。
[くすりと、笑う。礼は素直に告げた。
歩き始めてから幾ばくか。
それは、独り言めいて、冗談じみて、薄っぺらな「コエ」*]
……花を摘まなければ、俺も願ってもいいのかな。
今年は誰が…
神様の許へ導かれるのだろうね?
[季節が四つ、巡ってまたこの季節。
咲く花にそれでも手を伸ばし者は現れるのか。
くつり――
零れ落ちる笑みを隠さず。
ひっそりと花開く時を待つ花を想う。]
ねぇ、今年もあの花は咲くの?
[謳うように尋ねるのは。
噂の一夜花ではなく。
代わりにと少女の耳許に飾られし青き花。
色砂と混じりシャラリシャラリと瓶の中、揺れる色と等しかったあの花の色を。
忘れられそうもなく。]
[笑う音に瞬きを一つ]
そうだね。
[それは自分にもわからない。
神が決めるか。
それとも、この音の送り主も、定めに従えば関与もするのだろう]
咲くなら…
また視てみたいな。
[摘まずとも咲く花の美しさに目を奪われたのなら。
願わずにはいられない。]
今年も誰が攫われるのかね?
神様のいうとおり、何だろうけどさ。
[期待に胸躍り、唇を熱い吐息で震わせたのならば。
罪悪感も、*蚊帳の外*]
あの、はな?
[きょとり、とした。その空気さえ「コエ」に乗っただろうか。
思いめぐらせる間が、いくらか過ぎて、小さく頷く]
……ああ。どうだろう。
[空の手を見つめる*]
定められたものに、送らなかったことはなかった……気がするけど。
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