情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了
……。
[子供たちが特別に作ってくれたものだから、無下にはできないとは思う。思うのだが]
……えっと。
[さらに眉根が寄って]
飲む?
[どぶ色のそれ、さすがに差し出せずに聞く*]
― いま ―
そうか。
[漸く見つけた絆創膏は、コミカルな[刃渡り15センチの軍用ナイフ]柄。それをモミジに手渡しつつ。
いやそうな声音に、だよなあ、と頭を掻いた]
全部シロップだから、甘いだけだろうけどね。
[まだ氷の残るそれを目の高さにあげてふらふらする]
……そうだな。俺、若先生探してくるよ。
[靴擦れ程度に大げさかもしれない。
さりとて残っても、見ていることくらいしかすることがない]
入れ違ったら、酒まんじゅうは残しとけって、伝言よろしく。
[ひら、と手を振ってテントを出る]
[ひょい、と戻ってきて顔を覗かせて]
モミジさん。
俺、サンダルに靴下はおばさんぽいからやめた方がいいと思うよ。
[言った*]
― いま ―
[靴擦れ予防にはと口を開こうとして、
何路線を目指そうとしたのかわからない絆創膏の貼られたモミジの踵を見るわけだが]
おおっ!?
[大きくなって返ってくる声に、たじろいだ]
あ、いや、ええと?
[なにか地雷を踏んだらしい。
だが、当然のことを口にした以上の心当たりを思いつかない男は、目を白黒させるだけで]
あ、うん。
[頷く]
いってきまーす。
[退散を決め込んだ*]
― いま ―
[最大ボリュームの追撃に、つんのめりそうになりながら]
さすがモミジさん。
[ぽり、と頭を掻いた後、とこらえきれずに笑う]
女子力っていうか、
女性らしい、とは思うけどね。書いている本とか。
[明後日の方向へと続いている文句は耳に届かないから、
安心してつぶやいた*]
― むかし ―
(ああそうか)
[ぷつり、と。
茎の折れる手応えを感じたのが、この世での最後の記憶。
なにかを悟る、とか、感慨にふけるとか]
(そう、走馬燈だ)
[何かを思い出す、なんてこともなく。
少しだけ気になると言った村の行く末どころか、ヤンキー座りするンガムラの姿さえ、見えず]
(これにて、おしまい――)
[物思う自我も、かき消えた*]
― あのよ ―
[ひら、]
[青い花びらが一枚。
下方へ落ちて、波紋を散らす]
[ぴちょん、]
[水滴が落ちるでもないのに、
いくらか先に、広がる波紋]
[ひとつ、もうひとつ]
[花が摘んだ人間の願いを叶えるならば、代価(花)もそれと同じだけの力がある……と願ってもそうははいかなかったことも、それが、自分自身の記憶を削るものであることも、それ故に、忘れてしまった。
ただ、送ることだけ、贈ることだけ、憶えている]
……。
[足音は、ないまま]
あ。
[さまよい歩いた足は、漸く止まる]
[青い花を携えたひとがいる。
見ている先は、青い星を敷き詰めた道の方だろうか。
ふ、と笑えば。
揺らいでいた存在が先ほどまでいた世界と同じように模った]
……かえりみち、どっちだっけ。
[そのひとにかける声音は、そっと*]
― いま ―
結局手伝わないまま祭りは無事開始してるし。
[準備の手伝いを頼まれた。
盛大に遅れたのは、引き出しに入っていた、古い日記を読みふけっていたから]
日記、じゃないよな、あれ。
[えらく細かい字は、自分のものとそっくりで。
日記と言うよりは、備忘録――]
いや、
[記憶、か?
思いついた単語に首を振る]
― あのよ ―
[くつり、と聞こえる笑い声に、瞬きを返し]
……その声。
[懐かしい音。
語りかけては、ずっと、待っていた声だ。
握っていた手を開く。
手のひらにのっているのは、声の主が消えた日に、拾った、青い星だ]
[星から相手に視線を戻す。
楽しげに笑う声はまた、歌うようでもあり、耳に心地よく響く]
(なんてことはない)
(俺の願いを叶えてくれたのは――)
[青い星を握りしめる]
ありがとう。
かえろうか。
[相棒、そんな言葉が照れくさい。
どこにかえるか、などとは問わない。
彼女が帰る場所が自分の帰る場所]
ああそうだ。
[改めて、見やる、相棒の姿。
くすり、笑って告げる**]
― いま ―
[屋台で買った酒まんじゅう(赤ワイン)を手に、向かうのは神社の裏。まあ、向かったと言うよりは人混みに押し流されたという方が正しいが]
……?
[流されてたどり着いた先。
神社の裏にある祠に、花が、一輪咲いている**]
青い花なんて、めずらしいな?
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了