[彫像セクションホール中央。
昨晩と同じように男は天使像の前に立っいた。そしてゆっくりと像に手を伸ばす。
その動作は録画した映像を流しているかのように寸分の狂いもなく昨晩の軌跡を辿る]
………。
[しかし、今度は男の手は引き戻されることなく、そのまま像の左足に触れた。
しばらく男は何かを確かめるようにじっと指先を押し当てていたが、やがて撫でるように指を動かし始める。
踝から踵、そして爪先へ、男が手を滑らせた端から石像がゆっくりと赤みを帯びていく。
やがて左足のくるぶしから下が完全に朱に染まるのを見届けると、男は口の端をゆがめて笑い、踵を返して廊下の奥の闇に*歩き去った*]