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[『 麦茶 頂戴いたします。
かたじけなくも ちょっとだけ。
映写機回れば 語りの合間 合間に 水飲む身。
腹ちゃぷちゃぷに ならぬ程度のちょっとだけ。』
若旦那へ向けた感謝も、活弁士独特の節回し。
出版社員を名乗る男がやってきたのはそんな折。
"出版社員"の手はすこし犬のにおいがして、
弁士は失礼にもフククと笑みを漏らしたのだった。]
[――それから1年。
雛市 トキはまた村へやってきた。
錆びたバス停の脇へ降り立って空を振りあおぐ。
ネギヤを連れて行ってしまった狐雲を探して**]
そう、グリタさんは
こちらの村のご出身でしたか。
[村役場前のバス停から、神社へ続く道。
茶革のトランクを持って出版社員と歩く。]
私は去年の―― ネギヤさん探しを
お手伝いしたご縁で、村長さんが
今年もお祭りに呼んでください*まして*。
[蝉が鳴く。ネギヤを探す山狩りの灯に
昼夜を違えた蝉たちの声を思い出す。]
… 自分だったら。
自分がいなくなったとき、
誰も探してくれないのは こわい
[誰が とも 彼が とも 皆が とも言わず、
弁士は眼鏡を掛けた出版社員の顔を見遣る。]
[道中には、何人かの村人とも出会う。
ひとりは、都会でもあまり見ない妖艶さを持つ少女。]
『呼ばれて』しまったら、
行きたくなるものなのでしょうか。
[ひとりは、出版社員の知人らしき、犬連れの少年。
弁士は犬の正面に屈むと、
「君でしたか」と言って鼻と鼻をぷいと合わせる。]
少年少女の大冒険 是非にいらしてくださいな。
[今年の葱汁もとい豚汁は
うんとおいしくたべられると*いい*]
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