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[赤黒き空の中。
幾度か瞬きを繰り返し、視力が飛行に問題ない程度まで回復したことを確認する。
左手の弓は一旦背の固定具に納めていた]
さって、哀れなイケニエちゃんはそろそろ始末されちゃう頃かな?
ニンゲンたちの愚かな所業を見物してやるのも悪くないわね。
[元々は異形の一種であったはずの有翼人だが、伝承に準え天使と呼ぶ者も少なくない。
命を散らす供儀の前に降りてやったら、面白いものが見られるかもしれなかった]
ま、面白くなかったら楽しいお掃除ね。
[言うが早いか、翼を傾け供儀の娘が居た辺りへ体を向ける。
軽い落下と共に気流に乗り、羽ばたきは最小限に目的地へ飛んだ]
―イケニエの祭壇傍―
[儀式が行われる祭壇の上空。
ビルの屋上より高い位置を悠々と横切り、手近な建物の屋上に着地する。
既に信者らの一部は有翼人の登場に気付いている様子だが、まだ「降臨」の時ではない。
生贄がその尊き命を犠牲にした時、天使はそれを哀れみ救いの手を差し伸べるのだ]
――おや?
[舞台袖から登場の時を待つ心持ちであったが、ふと舞台の端から中央に向けて、異変があることに気が付いた。
白装束の信者らが、不自然に倒れ、或いは押し退けられていく]
まあ随分と派手なシナリオじゃないの。
今宵の主役は誰かしら?
[くくっと喉の奥でくぐもった笑い声を立てると、今はショウの成り行きを見守る心算で祭壇を見下ろした]
[身を隠しつつ儀式を眺めていたが、ふとビルの狭間から流れる煤煙を見付け、顔を顰める]
この煙――さっきの軽業男のものかしら。
やだやだ、環境破壊だわ。
[その煙が溶けるまでもなく空は赤黒い。
一定の高さで拡散する煤煙を逆に辿れば、梁上に予想通りの姿があった]
「儀式」を見てる――訳じゃないわね。
[今はショウの成り行きを見るが先決で、こちらから手を出す気はない。
それでも左手は弓に回し、いつでも抜けるようにしていた]
[爆破の音に、素早く視線をそちらに戻す。
開祖を模したらしい趣味の悪い像が崩れ落ち]
わー、派手にやるわねぇ!
[地上が混乱しているのをいいことに手を打ち鳴らす。
その混乱の中、一直線に生贄に向かう姿を見れば、殊更興奮した表情で]
さあさ、早くやっちゃって!
[今にも飛び出しそうに片足を屋上の縁へ掛ける]
……っふ、あはははははっ!
[ドロテアの首から噴き出す鮮血を合図に、ビルの屋上を蹴り飛び出した。
まずは斜めに上空へ。
祭壇の真上に差し掛かれば、翼を掲げ空気を切るように垂直に舞い降りる。
両足を揃え、音も無く祭壇上へ降り立つ頃には、笑いも消え神妙な顔]
おお、哀れな……。
その儚き命を神に捧げる間もなく散らしてしまうとは。
[ドロテアの傍に跪く素振りだが、血溜まりが足元まで広がるのを見ればさり気なく後退してかわす]
貴女の尊き犠牲も神のお導き。
決して無駄にはならぬでしょう……。
[言っている間にも、下手人が少女を袋詰めにする。
無論、それを咎める気はなく]
――あら、そちらのお方も尊き犠牲となられるので?
[混乱の中、教祖らしい男が詰め寄られている。
「天使」たる自分と教祖の男と、果たしてより視線を集めているのはどちらだろうか]
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