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こういう時、人間は謝るものなの?
[よく、わからない
記憶の海の中には、答えはない
だから、不思議には思ったけれど
不快には、思わないのだからよいとしよう]
ん・・・――――
[唇で、そっと触れた時に
なんとなく、懐かしい暖かさを感じた]
・・・――――
[暖かい、ね]
[そうか、と思い当たる]
俺に、この光景を見せないためだったのか…
[目の前で苦しむセイジを見て]
ありがとう
[素直に礼を言った]
さて、そろそろ奴も連れて行く時間であろうか
紅、お前の器が動かないなら、ここ、抑えていてくれぬか?
[準備室の扉を抑えてくれるように頼む。もし断られるなら、他の仲間を呼んだだろう。]
[一緒に行こうという声とは別の声が聞こえる]
「痛いのが辛いなら
連れていってくれと頼むが良い
楽になるぞ」
楽に…なる…?
楽に…なる…のか…?
[声をかけたのは仁に残った人としての思いやりゆえか。
それとも、自分が体験したことを思い出したゆえの優しさか…―――]
意地を張ってもいいことはない。
もう…お前は…逃げられない…。
[早く連れて行けと言ってくれと
どこかで願っていた]
[なおも語り続ける]
お前にできるのは
連れていってくれと言うことだ。
魂の契約を…結ぶのだ。
[悶え苦しむセイジに淡々と語る姿は
紅の目にどう映っただろうか]
魂にとって言葉は契約…
これは人間どもには分からぬこと。
お前の器に伝えるのは容易かろうが、
他の二人には…どう伝えるつもりだ?
それとも…伝える必要も…ないものかの?
[紅の方を見て、首をかしげる]
[やがて理科室の前に到着して。ナオが準備室の扉に手を掛けるのを見ると、すぐに後から入れるようにと歩み寄っていき――]
!? ……
[瞬間、ナオを押し退けてセイジがその扉を開けた。そして、中へと入っていった。素早く、何処か不自然に。見えない何かに引きずり込まれるかのように]
セイジ!
何してん、いきなり……
[よろけ下がったナオを一瞥してから、扉に手を掛ける。そのまま開こうとした、が、鍵のかけられていない筈の扉は、しかし先の教室の窓のように、びくともせず。
ガチャガチャという空転する音ばかりが、あちら側から扉を開く音と共に響き]
[此方側からあちら側から、開こうとしようと叩こうとしようと、扉はびくともしない。ヨシアキが近付いてきたなら試みるのを譲ったが、彼がやっても――誰がやっても――結果は同じ事だっただろう]
っ……
おい、セイジ! セイジっ!
[聞こえてくる叫び声に、祈る思いで名を呼んで*]
[ナオを追って理科室にたどり着く。
理科準備室の扉を開けようとしたナオだが中に入ったのは割り込んだセイジだった]
・・・
[中から叫び声が聞こえる。中から扉を必死に開けようとしてるのが分かる。でも開かない、開かない]
また・・・なの・・・
[必死にセイジの名前を呼ぶマシロの後ろで、タカハルはそう呟いた]
ん…―――
わかった
[長いようで、短い口づけが終わった後
ドアを抑えるよう、頼まれたから
ドアに背を預けて、様子を見ていた]
言葉は契約、と言う事
教えた方が、いいのかな?
そうだな、ヒントくらい、あげよかな
ねぇ、仁
どんなヒントの出し方が、いいと思う?
どんなヒントの出し方か…
最期の最期に、俺がこいつに乗り移って話すこともできるが…
[それでは功を奏さないだろうという思いがあった]
んー…――――
私には、肉体がないしな
憑依するのも、良いけれど
それだと、この器がなぁ…―――
[色々、考えてはいるけれど]
血文字でも、かこうかしら
言葉は契約、願いは呪力
祈りは糧にして、恐怖は甘味
理を知らぬ者に、亡者の手を
こんなの、どうだろう?
[少し考えて、怖そうな文章を考えた]
[がちゃがちゃ、がちゃがちゃ
マシロから交代した、ドアを開く試み
だが、押しても引いてもドアは開かずに]
おい、セイジ…――――!
[叫ぶ声も、届くかどうかわからない
どんどん、どんどん
ドアを叩いてみるけれど、弾かれてしまう]
くそ…――――
[不意に片手が自らの意志と関係なく持ち上がる。
指先が切られるような感覚がしたが、それ以前に体中の激痛により、その痛みを認識することはなかった]
“言葉は契約、願いは呪力”
[...の指が勝手に床を這う]
[血に塗れた指は勝手に床を這い、
言葉を紡いでゆく]
“祈りは糧にして、恐怖は甘味”
“理を知らぬ者に、亡者の手を”
[すでに...の意識はほとんどなかった]
[次に扉を開けた者は、この言葉が...の血によって、
床に綴られているのを目の当たりにするだろう]
“ 言葉は契約、願いは呪力
祈りは糧にして、恐怖は甘味
理を知らぬ者に、亡者の手を ”
[この意味を理解する時、…何を思うのだろうか]
こいつを向こうに送ると同時に、
この扉は開かれる。
その時に…
血文字を確認させればいい。
[セイジを冷たく見据え、仁は言い放つ]
紅…
お前と出会えて…よかったぞ。
人としての…“幸せ”を垣間見れた。
[紅の方を見て]
ありがとう…な。
[すぐに目を逸らした]
そっか、良かった
幸せだったなら、それで、きっと
大丈夫、また会えるよ
[すぐ目を逸らしてしまうから
目を見ては、言ってあげられないけれど]
私も、楽しかったよ 仁
寂しいことなど…あるものか。
[仁は薄く嗤う]
また…すぐに紅に会えるであろう?
時は永劫続くのだ。
まだまだ、教えを請わねばならぬ。
それに…
離れる時は束の間……だ。
[先ほどの感触が忘れられず、少々赤面して呟いた]
俺も…楽しかった…ぞ。
[なるべく目を逸らさないように、紅を見つめて]
後は…頼む。
向こうから…見守っているぞ。
[紅が好きだと言ってくれた笑顔で]
そうだね、無限に続く輪廻の輪から
離れてしまった、私達は
束の間の闇を潜った後に、また出会う
また出会ったら、色々教えてあげるね
先輩、みたいだし、私
[くすくす、笑っているけれど
扉が開くまで、もうあまり時間がなくて]
仁、束の間の別れだ
こっち、来ない?
[手招き、してみた]
目印…――――
[触れられは、しないけれど
霊には霊の、印も存在する
呪印だのと、言われる物の類であるけれど]
言葉にして、仁
私と、再び出会いたいと
その言葉が、私と貴方を契約で結ぶ
再び出会う事を、義務付ける呪いとして
コトバハ…
ケイヤク…
ナンダヨ…
[模型が...に吸い寄せられるように“入り込む”]
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
[断末魔の叫びを残して、...は…消えた]
ん…―――?
二度と、あれれ?
まぁ、いいか
[なんだか、言葉が違った気がするけど
でもまぁ、言葉にした願いなのなら]
貴方の願い、叶えましょう
[ふぅ、と冷たい息を吐く
呪文のような言葉が、細い帯となって舞い
願いの通りに、左手の薬指に呪印を施した]
忘れないで、この呪印を
たとえ魂が巡っても、消えぬ呪いの傷を
次に出会った時に
本当の名前、教えてあげるね
[ヨシアキとマシロが必死にドアと叩いているときに呆然と突っ立っていることしか出来なかった]
[その時、一段と強い叫び声が]
[タカハルは一瞬ビクッとして・・・そしてすぐに感じた]
[あぁ・・・もう・・・]
[それでも、なにもすることが出来なかった]
[連れて行ってくれ。そんな声が聞こえた。何処か遠く、軋むような、ノイズに割れた音のように。それからまた、叫び声が――激しい、一際大きな叫び声が、聞こえて]
セイジ……!
[名を呼ぶ声は、空しく空間に響き]
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