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―― 墓地近く ――
っ!?
[突然の打ち上げ花火の音に、腰を抜かした。
食べかけのとうもろこしは離さない**]
バスガス爆発かと思った……
―1963・神社―
[風が吹く]
貴方の考えは解した。
[封書を小脇に一挙に振り向く。
マフラーが半ば解け、その端が舞い踊り。
た ん――。
風を纏い、参道を蹴った爪先。
先刻とはうって変わり、幻の儚さに似た軽い足取り。
医者の目前へ、下り立った。]
教えてあげよう。
日光に当たると爛れるのは本当、灰になぞならないよ。
ただ―――……
[そこで言葉は区切られる。]
[黒眼鏡を外す。
細めた蒼い瞳で、医師の姿を見詰め
彼の耳元へ、唇を寄せた。]
結城―――。
ワタシに何かしたか。
貴方と会い風が吹いてからこっち、変な心地だ。
[此方に仕掛けられたは興味のみであったとしても、察せずに*無表情*]
― 1963・神社―
[風が吹いて、レンが軽やかに目の前へと跳んできた。
驚き、ポロリと火がついたままのタバコを落とす]
何か……?
[黒眼鏡が外され、至近で見つめてくる蒼に首を傾げる。
己に会い、風が吹いてから…という言葉にきょとりと数瞬]
貴方が“どのような存在”なのか、覗いてみたいと思ったくらい、かネェ。
[結城は代々医者の家系だった。
蘭学がこの国に入ってくる以前は、陰陽道と本草学を基として医者をやっていた家系。
既に陰陽道の作法も知識も、何もかもが伝承が途切れ忘れ去られていても。
その“血”が持つ体質的な“能力”だけは残っていた。
実際に“人ならざる者”を“視た”事が無かったから、自分でもその“能力”については半信半疑だったけれど]
― 現代 ―
[夕闇が闇に変わる。
程なくあがった、花火]
たまやー…って、うおぉい。
大丈夫っすか?
[山を下る道を数歩駆け下りて、
バランスを崩したように見えた人影に駆け寄る]
なんだ。
ばーちゃんが腰抜かしたのかと思った。
― 現代・結城医院 ―
[『結城医院』という看板を掲げた小さな個人病院は、50年前と変わらぬ場所に建っていた。
流石に、建物は{2}×5年前に立て直していたが]
さーて、っと。
露店でも冷やかしてくるかネェ。
[狛狼のお守りを結わえ付けた巾着袋を手に、子供の頃から慣れ親しんだ道を往く。
巾着の中には、パッケージに弓矢が描かれた10本入りのタバコが(03)箱と、伯父の形見である年代物のジッポライター。
あとは、ハンカチとティッシュと、小銭入れと携帯灰皿だけである]
― 1963 向日葵の迷路 ―
[舞う。
舞う。
神に捧げるための舞い。
衣装もなく、楽もない。
謡いであってはその音程ははずれることなくても、
その舞は]
強くなんか、無いのよ、ショウイチさん。
[此方から彼方。本来の舞を、
彼方から此方。終わりから逆に舞う]
私には、「彼方」に行く、理由が無いだけ。
[迷っていた。グリタの指摘は正しい。
そして私が神隠しを望んでいたような彼の口ぶりも、おそらくは正しい。
正しかった]
無くなってしまった。
[この村の夏に、出会ってから。
――舞う。
誰もいない、向日葵の迷路で。
ただの人である自分が。
彼方より此方へ、帰っておいで、と願い、舞う*]
あんた、ばーちゃんだったの。
ふーん。
[バンビの瞳を眺めて、手を伸ばす]
おぶってやりたいのは山々なんだけど、
汗だくなんで。
立てそうか?
[ヒューと高い音を立てて、次の花火が上がった*]
― 1963・神社―
覗いてみたい だって?
……へえ。
貴方の、その興味の所為で
[この相手が何者であるか
観察する間がしばし置かれたのち――
溜め息と、微かな苦み帯びた笑気が零れる。]
どうやら。ワタシは、去らねばならない らしい ね。
結城。
[マフラーを巻き直す。眼鏡をかける。
頭へ刻み込む態で、代々続くその家名を一音ずつ、声にだして。]
……。
どうも、わからないね。
そんな興味に意味があるか が。
[やがては、踵を返した。
風の中に紛れるように、小さくなりゆくレンの後姿。*]
―1963 向日葵の迷路―
[濃厚な草いきれ。土の匂い。
沢山の、太陽を思わせる大輪の夏花。]
[向日葵迷路の入り口を、
ごくごく微かな足音をたてて過ぎる。]
[して。
逆に舞う人の影を、遠くにのぞんだ。*]
[ひまわりの花。引き返せない、想いの迷路。
手招かれて、誘われて、
引きずり込まれたもの達が集う、夏畑。
あるものはいまだ手を伸ばし続け、
あるものは真実と空嘘の狭間で揺れ動く。]
でも、本当に欲しいものは――
[迷わずとも己の目の前に
いつでも差し出されているのではないだろうかと
ひとり語散る。
迷っているのは、迷おうと自身が決めていて。
歩むべく道へ、自ら目隠しをしているような。]
でも、本当のところは判らないわね。
かみさまが、なにを以ってあたし達を誘ったのか。
[ふわり。風が吹く。
夏の終わりを告げる金色は、
未だキラキラと輝いて――]
―― 2012.8.11 ――
[ふいに訪れた眩暈は、身を崩すほど
強いものではなく。]
あ、……ごめんなさって、大丈夫?
[反射的に差し伸べられた手が、
薄物に触れたかと思うと。
今度は相手の姿が身を崩しそうになっている。
暑さの所為か。それとも――]
かみさまに、誘われたのかしら…?
[自分の一人称に不思議そうなまなざしを向けていた
着飾った姿をやはり反射的に支え。
口先から漏れるのは、この村に伝わるらしい昔話。
先程、通りすがりの村人から聞いた話を思い出す。]
人狼童子…だったかしら?
[夏のまよいみち、かみさまがいざなう
古いふるい、伝承ばなしを*]
―― いにしえのひまわり迷路 ――
ヒナせんせ。
あの村の神社にいる神様は、お願い事をよく叶えてくれるらしいですよ?
[右の手で左を、左で右を引っ張って後ずさり、迷路の中へいざなう。
そのまままよい道を進んでいけば、さかさまの祈りが*耳に届くはずだ*]
― 1963 ―
[袖が在ればふわりと広がるだろうけれども。
赤のワンピースは袖がない。
扇子を持たぬ手で空を示し。
その手が始まりの形に戻る]
……。
[ふう、と息をつく。
濃厚な草いきれ。土の匂い。
それから感じる、何かの気配]
[おおかみの面をとれば、視界は一面黄色の花]
あら?
[振り返る。そこも一面、黄色の花で]
えっと?
[舞いの面の視界は狭い。
しなれぬ舞いにどうやら――]
ここ、どこ?
[向日葵の迷路に迷い込んだことに気づくには、そう時間はかからなかった*]
―現在―
[向日葵畑に沿って歩くと、
祭囃子はどんどんと大きくなっていく。]
そう、クルミ。
レンさんっていうんね。
うん、レンさん。覚えた。
[ひらひら蝶々、夏の風に乗る。]
うん、
こわぁいかみさまが
手招きして連れてってしまうんやって。
なんかねえ。
あたし、よう似てるねんて、
――あ、おいしそう!
[似てる、似てるとはさて、何に?
たこ焼きを指差した後、
目移りするようにイカ焼きのほうも覗き込む。
祭りは、始まったばかり。]
― 2012.8.11 ―
[くらり、と。
暗転した視界に、黄色の輝きが散った]
……。
[のも、一瞬。
だったかどうか。
気が付けば、男……ではない手に支えられている]
神様に、誘われた?
[顔を上げる。
先ほどと変わらぬ景色と、変わらぬ着物の人。
礼を言うより先に、問い返してしまった。
人狼、童子。
[反芻する。
記憶にはないはずなのに、何故か口からするりと出た]
[あの日、あの日――あの日は・・・。
ヨシアキの問いに浮かぶ情景は―――。
最後に見たのは一面の黄色――向日葵の迷路へと誘うこえは誰のものだった?
くらり、くらりと黄金の花粉が舞って]
[あれは、あれは?
あるくように軽やかな影を急いたように追いかけるけれど、距離は縮まることなく。
―――見失った先には湖面に浮かぶ水芙蓉―― 一面の蓮の花]
[告げられた言葉はおぼろなままおもいだすことも叶わず。
影を見失ってたたずむ湖の淵、脳裏に浮かぶのはさきほど見た白面]
招いたのは、あなた・・・?
[問いのようでいて答えを期待するでもない言葉は溶け――。
ふうわりとバランスを崩したように湖面へと投げ出されるも不思議と息苦しくはない]
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