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[ヨシアキの呼び掛けを聞き、少し後ろに下がる。ヨシアキが突撃した事で、扉は開かれた。彼が室内を見るのに続けて、少女も室内を覗き込む。制止の声が落ちたのは、ほぼ同時だったか]
……セイジ……。
[呟き、立ち尽くす。
セイジの姿は其処から消えていた。室内には血の臭いと、床を彩る血の色のみが残されていた]
――言葉は契約、願いは呪力
祈りは糧にして、恐怖は甘味
理を知らぬ者に、亡者の手を――
[そう刻まれた赤い文字を、黙って見つめ]
どうしよって……
どうにかせんと、……
[声は力なく、半ば独り言のように。実際、どうすればいいか、どうするべきかなど、全く判らなかった。暫くの間、その場に佇んだままでいて]
……とにかく、動かんと。
此処にいたって……何もならん。
出られる場所、出る方法、探さんと。
[それから、振り返って言った。対抗出来ない。閉じ込められた。検証だけが。セイジの言葉の断片を、頭に過ぎらせながら]
このままやったら……皆、消えるだけやろいね。
別に消えた皆を放っとけなんて言っとらんわ。
それやって、動かんと駄目なんは同じやろ。
[ヨシアキに向き直り、眉を寄せて]
……だら! 何言っとるん!
そんなんしたら、今度は……
[怒鳴り付けるように言ってから、語尾は霞ませ]
――大だら。
どっちも、一緒に探せばいい話やろいに……
皆で動くぞ。はぐれなさんな。
[ナオとタカハルにも向けて言い]
アンは、トイレに行ったって……
セイジは、言っとったけど。
シンヤはわからん。いないって……これも、セイジが、言っとってんけど。
おいね、まずトイレから行くか。
[言いながら、七不思議の一つが思い出されたが]
この字。……多分、霊や何かが、残したんやろうな。
霊、……多分……七不思議とか、起こしとる奴が。
もしかしたら、セイジには……
……や。それは、今考えても仕方ないか。
[首を横に振ってから、改めて字の方を見]
……セイジが消える前。
連れて行ってくれって、セイジの声が聞こえたんよ。
中であったんが、どんながやったのかはわからんけど……言葉やら願いやらっていうのは、もしかしたら、それなのかもしれん。
後は……何やろうな。
「犯人」が、楽しんどるみたいな……私達を獲物にしとるみたいな。
よくわからんけど、嫌な感じや。
……ナオ。落ち着きまっし。
[へたり込むナオの姿に、其方を見て、眉を下げつつ声をかけた。錯乱しても仕方ない状況であるという事は、解り切っていたが]
じゃまないさけ。
[大丈夫だなどと断言出来ない状況でもあるという事も、解っていたが。とにかくそう言って]
ほうやな。ほうやったら、いいな。
消えた皆も、無事見つけて……
皆で下校しよう、な。
[ヨシアキの言葉に、神妙に、強く頷き]
ん。少し、この辺で休むか。
ほら、ナオも、ちょっこし座ってたらどうや。
[ナオの手を握り、もう片手で背を支えて、理科室の前から見える程近い階段へと歩いていく。一番下の段にナオを座らせ、その隣に己も腰掛けて]
言葉。そういえば、言霊ってあるさかいな。
言葉には魂が、力が宿る。
ほやさけ、いい事言ったらいい事が起こるし、悪い事言ったら悪い事が起こる、って。
[ヨシアキが座る様子を見やりつつ言う。ふと思い出したように携帯を取り出してみたが、やはり使い物にはならないようだった。電波が入らないどころか、電源も入らなかった。ふう、と息を吐き]
[ヨシアキが喋るのに、其方を見やり。
ぱちりと瞬く。お前だけは、俺が。ヨシアキの言葉は半ばで途切れたが――その続きは、何を言わんとしたのかは、なんとなく察せられてしまって]
……何や、言いたい事があるならはっきり……
や、いいわ。言わんときまっし。
[懐中電灯の明かりを消しつつ、顔を正面に向け逸らした。少しの間、黙っていた後]
……だら。
[聞こえるか聞こえないかの声で、ぽつりと呟いた]
[手の内の懐中電灯を見下ろし、くるくると軽く回しながら、ヨシアキの小さな声を聞いて。ややあって、はっきりとした声がかけられれば]
ん。いいうぇ。
[短く了承を返し、此方も立ち上がった]
[場を離れる前に、階段の方を一瞥した。タカハルがナオの隣に座る様子を見れば頷き、ヨシアキの後について歩き始める。近くの教室に入り込み]
……
[暗がりの中、ヨシアキの姿を見る。それから、紡がれる言葉を黙って聞いていた。視線は逸らさずに。声が途切れた後、暫くの間――数分にも思えたが、十数秒、精々数十秒の事だっただろう――沈黙を置いて]
――だら。
[まず、その一言だけを、また口にした]
こんなん、アレやろ。
死亡フラグやろ。
読者やらプレイヤーやらが、笑うとこやないのにと思いつつちょっと笑って和んじゃうようなとこやぞ、これ。
[早口に冗談を並べ語る。手にした懐中電灯を消したせいもあって、慣れた目でも暗い室内。故に見えはしなかっただろうが――少女の頬は幾分赤くなっていた]
私は……
……私も。
ヨシアキが好きなんやと、思う。
[そう、常とは違う、静かで引っ込みがちな声で言った。
少女は、ヨシアキの事を好きだと考えた事はなかった。あくまで大切な友人として、見ていた。好きだと思う相手は、他にいた。――担任である、ライデン。禁じられた、それを置いても一方的な思いだと知りながら、淡い恋心を抱いていた。
だが。
ヨシアキと共にいて、時折、常ならぬ感覚が生じる事があった。それが何かは、気が付かないでいたけれど。あるいは、気付かない振りで、誤魔化していたけれど。それは、間違いなく。
今こうして思いを伝えられて、少女は初めて正面から己の内に向き合い、自覚した。ヨシアキを好きだと思う気持ちを、認めた。――ライデンへの思いが、恋愛ごっことでもいうべき、淡く儚い青春の産物だった事も。
一呼吸置いてから、また口を開き]
守る、なんて言うなら……
遠慮なく守って貰うじ?
やけど……やからこそ。
ヨシアキも、気を付けまっし。
消えるなんて、許さんぞいよ。
[ヨシアキの選択を否定する事はしない。
切り捨てたのではなく選んだのだと、その上で当人も悩んだのだろうと、知っているから。己がそのような選択をしないとは言えなかったから。――その選択に、嬉しさを感じてしまったから。
代わりに言い聞かせるような言葉を、その姿をじっと見据えながら続けた]
/*
(*ノノ)ウワアアアアアアアア
恥ずかしい! 恥ずかしいよ!
恋愛は毎度、嬉しいけど恥ずかしいよ!
というか女キャラではダミー相手除いたら初めての恋愛です まる
短期でネタ程度にはあるかという程度。そわそわわそ。
ヨシアキ男前やで……
[ヨシアキの言葉を聞けば、ふ、と笑って]
そうしまっしま。
私も、気を付けるさかい。
離れんようにするさかい。
……全く、堂々と恥ずかしい事言うやっちゃ。
今に始まった事やないけどな。
[その続きには少しく目を逸らしつつ]
一緒に、無事に学校出んとな。
[改めて願いを口し]
おいね、安心しまっし。
[近くまで来てよく見れば、頬が薄らと赤く染まっている事が知れたかもしれない]
ほーやほーや。
死亡フラグ立てて本当に……
なんてなったら、どんならんわ。
泣くに泣けんというか、笑うに笑えんというか。
[しかし話す調子はいつも通りに。肩を竦めてみせ]
そんなしょむない事にはならんようにせんと。
ようわからん相手に負けるなんてのは、癪やしな。
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