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―翌日・校長宅―
[アンの通夜が始まる頃に起こされるまでは意識は眠りの中にあったらしい。猫はやはり猫であるが故に睡眠も長時間であるようで。
通夜に集まる村の者達の会話はアンのことだけではなかった。
ケンちゃんが突然――今度はナオちゃんが―――どうしてこうも続けて―――
人間達の口から何度も紡がれるそんな言葉。]
………なぁう?
[ぴくり。としっぽが動いた。
ぐるりと部屋を見回す。
家の主はこんな時なもので何かと忙しく,猫に構う余裕はないようで。一声鳴いても気付く様子もない]
んなぁ〜う。みゃあ〜う。
[何度か鳴いても相変わらず校長が気付かない様子を見れば、
そろり。しなやかな動きで通夜の行われる間を抜け出して玄関へと。
開放されている玄関の外に見えるは相変わらずの雨模様だが、今は昨日程には雨音も強くない。]
……みぃ。
[ぺろぺろと毛繕いを終えれば、家の外へ]
――茶屋――
[なるべく雨を避けて移動してもやはり体はいくらか雨に濡れる。茶屋の老婆が濡れた体をタオルで拭いてくれるのは雨の日にはよくある出来事]
なぁ〜う?
[きょろ。きょろり。
と茶屋の中を見れば、老婆はご主人は忙しいようだねと、今はヘイケも出かけているから遊んでもらうのは無理かもしれない、そのような事を猫に話し、そろそろお腹のすく時間かと、甘納豆を数粒分けてくれる。空腹の猫がそれに口をつけるのを確認すれば老婆は再び店の奥へと戻っていく]
………
[こくり、と口の中の甘納豆を飲み下すと、老婆が戻っていったのとは別の方向……店の中の一点をじーっと見つめた]
なぁう?
―校長宅でのこと―
[起こされた後は、アンの通夜の様子を見るばかりであった。当のアンは何処に行ったのか、今この場に確認することはできない。通夜開場である自宅にやってくる村人達の口から出るケンやナオの話題も、自然と耳に入ってくる訳で]
アンさんだけじゃなくて、ケンさんやナオさんまで……??
おかしいお亡くなりかたをしているって、どういうことですかにゃあ?皆さん、ご主人、もっと詳しいところお願いしますにゃ!……とか言っても人間さん達にはわからないですかにゃあ。
うーん……皆さんのお話内容から組み合わせると、
ナオさんが茶屋で突然消えて、校庭で見つかった、
ケンさんはアンさんのお体を迎えに行ったあの吊橋で突然倒れてしまい……
アンさんとナオさんは雷さんに打たれたような感じなのに傷ひとつない、不自然だということですかにゃあ。
ナオさんももしかして、アンさんみたいにどこかにいるかも……?
んなぁ〜う!
[見つめていた一点のほうへ、とてとて歩む。
ぐるり。と一周小さな円で囲んで]
にゃあ〜う。
[ちょこん、と円の中心を向いて座った]
ご主人〜!ウミは出かけてきますにゃー。
あ、そういえば。
生き物である以上どんな時もお腹がすきますにゃ、出かける前にウミにご飯を……
[通夜で忙しい校長は気付く様子はない]
にゃあ〜……気付いてくれないのはちょっと堪えますにゃあ。でもお通夜はこういうものですにゃ、猫の優先順位が低くなるのもしかたありませんにゃあ。自分でどこかで調達するとしますにゃ。
ウミは勝手にお出かけしますよ〜!
[玄関へ向かえば外は雨]
…にゃあう〜……雨振り苦手だにゃあ。でも、ねこまっしぐらしなくちゃな時だと野生の勘が告げる!
水はけよくして、よくして
[ぺろぺろ毛繕いをして]
ご主人〜!聞いてないかもしれないけれど行ってくるですにゃー!
でもどこから向かうかにゃあ?とりあえずは、いなくなった場所の茶屋を探してみるですかにゃあ。
[雨の外へ飛び出した]
――茶屋――
にゃあう〜……お水はやっぱり得意でないですにゃぁ……ナオさん見当たらないですにゃあ?
あ、お婆さん、いつもありがとうございますにゃ。雨の日に安心してお出かけできるのも優しいお婆さんのおかげですにゃあ。
うーん、見えないにゃあ……
[きょろきょろと探していると、老婆はヘイケは出かけていると話し、栗甘納豆を差し出してくれる]
にゃ、ヘイケさんを探してる訳じゃなくて……って言ってもわかりませんにゃあきっと。
おなかぺこぺこですにゃ、ありがたくいただきますにゃあ。
[はむ。と甘納豆をほおばっていると何者かが店の中に入ってくる気配]
[だが老婆は出迎える様子がない]
お婆さん、お客さんですにゃあ、来てますにゃあ〜……
……!!
ナオさん!
[店に現れたのはアンと同じような気配を纏うナオ。
老婆は全く気付く様子もない]
ナオさん、見つけましたにゃあ!ウミが見えているのがわかりますかにゃあ?
[じーーーーっとナオを見る]
にゃあ!
[空間へと元気に鳴く。
しかし、しばらくすると首をかしげて]
みゃあう〜〜……。
[ちらり、と様子を伺うように見て、栗甘納豆を頬張る。猫が少し申し訳なさそうな様子である事は人間からも感じ取れるかもしれない
はむはむ、ごっくん]
にゃ、ナオさん気付きましたかにゃあ!
[こちらへ手を振るナオのほうへ、栗甘納豆をくわえてととてとて歩く
ぐるりのナオの前を一周して、その目の前に甘栗納豆を置いた]
ナオさん気付いてくれてよかったですにゃあ。確かナオさんは栗を楽しみにしておりましたね。ささ、甘納豆をどうぞどうぞ。
[ナオの手が甘納豆を空振りして、ちょっと未練がありつつもウミちゃんお食べと言うナオに]
うみゃあう〜……そういえば、こんな状態のお方は食べる事ができないんですにゃあ…ナオさん申し訳ないですにゃあ〜…!
ウミは見えるだけなので具体的にどうすることもできないですけどにゃあ。お話のお相手はできますにゃー。そちらからはわからないかもしれませんがにゃあ。
それにしてもナオさんのとーくはいつも面白くてウミ好みですにゃあ。
くぁ…あ〜〜。
[甘栗納豆を食べ終わってぺろぺろと身だしなみを整えると、本能には逆らえないのは猫の宿命であって、要するに大きなあくび。
目元がとろとろ。うつらうつら]
みゃあう〜……
[細い目ではあるが、一点を見つめて、鳴く]
んなぁう〜〜。
[しっぽをしゅんと下げて、小さく動かした首はかぶりを振っているように見えるかもしれない]
みゃあ〜〜。
[そろりそろりと、茶屋の入り口のほうへ移動して一度立ち止まり振り返り先ほどと同じ一点を見る]
んなぁ〜〜〜〜〜う。
[くい、くい。
動かす首は外を示しているようだ。
そのまま茶屋の外へと飛び出す。雨振る中で選んだ道は蔵がある場所へと続いている]
にゃあう、すみませんにゃあ〜。ではでは、ありがたくウミがいただきますにゃあ。
[もぐもぐもぐ]
それがですにゃ、ケンさん見当たらないんですにゃー。一体どこにいらっしゃるんですかにゃあ?
うーん……。
ケンさんは皆さんと一緒にいる時に倒れたというお話ですにゃあ。もしかしたら皆さんのところに行っているのかも……?そうだとは言い切れませんが可能性として無きにしも非ず。にゃあ?
くぁ…あ〜〜。
おっと失礼。ご飯後の眠さには猫勝てませんにゃあ。でも、がんばって起きてみますにゃ。ナオさんお一人になったら寂しいでしょうにゃあ。
そういえばここに来る途中にホズミさん達が診療所のある方向からどこかへ歩いていくのが見えましたにゃあ。ウミは雨に濡れないようにいろんな陰を通って来ましたので、あちらはウミに気付かなかったようですけれどにゃあ。
確か、蔵がどうのこうのとお話が聞こえてきたような……。
ナオさんナオさん、行ってみますかにゃ?
[人間にも通じればいいな!というようなジェスチャーで茶屋の外を示す]
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