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[聞き慣れたドアの軋む音微か。
バー独特の重だるいような空気が迎え入れてくれる。
好きだなあ、と"いつも"思うのだ。]
ねえ、『"血塗れ"メアリー』をちょうだい。
ちょっと軽めでさ。
[薄ら笑いのままでわざとらしく注文するのは、真っ赤なカクテル。
その色が好きだった。]
本当はトマトジュースなんて好きじゃないんだけど。
[タンブラーの中が無色透明から赤に変わるのを、カウンターに頬杖をついてただにこにこと見ている*]
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やあ (´・ω・`)
ようこそ、バーボンハウスへ。
このうさんくさい笑顔はサービスだから、まずスマイル0円お買い上げで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、この鋏を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれると思う。
殺伐としたこの村の中で、そういう気持ちを忘れないでほしい
そう思って、僕は懐に鋏を仕込んできたんだ。
じゃあ、注文《ころしかた》を聞こうか。
[バーの扉は音もなく開く。
女の纏う香りを合図に、バーテンがコースターをとある席に置くのはいつものこと]
甘いのを、お願い
[細い指を頬にあて、唇は弧を描く。
つばの広い帽子を押さえ、窓の向こう、暗い通りに視線を投げる]
/*
あーぺろぺろしたいこのアイコン
嫌がられたいわー真顔で嫌がられたい
ぜんぜん関係ないけどダンボールって甘い匂いするよね。
[表通りから一歩入った薄暗い道。
橙色の明りに照らされる窓辺に、嫣然と微笑む女が一人いた。
白い頬。黒い髪。赤い唇。
薄桃の帽子は、少女が被れば微笑ましいだろうに、この女にとっては、どこかその肉感的な印象を強めるにすぎず]
ありがとう
[仄かに白みがかったカクテルに口をつけ、濡れた唇を静かに*舐めた*]
[かたり、と味も素っ気もない音が小さく響く。古びてはいるが手入れは欠かされていない、見慣れた扉を開けて、男はバーに足を踏み入れた。
黒く厚いロングコート。口元までを覆う、縁が薔薇じみた青の飾りで彩られたファーの襟。年季が入り少々くたびれた帽子。
小柄な身にはそぐわないような、ぎょろりと鋭い眼差し。そんな些か一般的ではないような出で立ちにも、マスターは何等難色を示さない]
[当然だ。此処は、馴染みの店なのだから]
[カウンターの端の方の席に、男は腰を下ろした。帽子もコートも脱がないまま、マスターを一瞥し]
[ややあって差し出されたグラス、その中に入った薄茶色の液体を、男は襟を下げて一口飲んだ。甘く柔らかい、カルーアミルク。
氷がからりと涼やかな音を*立てて*]
[赤に満たされたタンブラーは、深くマドラーを差しいれ一度軽くステアされる。
マドラーの溝を伝う僅かに粘性のある赤に、うっとりと目を細めた。
カウンターに置かれたブラッディ・メアリー。指を触れ、口元に引き寄せ、唇を示すように一口飲み下し。]
ああ、やっぱりトマトジュースなんて嫌いだな。
[カタン、とタンブラーごと倒して、にっこりと表情は変えぬままで残りのすべてをカウンターにぶちまけた。]
[怒声が響いても、文句が飛んできても、気にしない。
あ、よく殴られもしたっけ。随分昔にそんなこともあったような。
時々起こすこんな癇癪に、ブラッディ・メアリーを出す時点でマスターももう勘づいていたかもしれない。
だってそれくらい、ここにはよく来ているだろ?]
そうそう、マスター、美味しかったよ。
トマトジュース以外は。
[味の感想も忘れないのが礼儀だって、ちゃんと知ってるくらいには。]
あのさ、誕生日言ったっけ。
6月の18日。いい日でしょ。割ともうすぐなんだ。
キミのは? なんか、聞いたかもしれないけど、忘れちゃってさ。
[赤いトマト色の血がカウンターから滴るのをただ背後に、女の黒髪に視線を向けた。]
/*
めもの自己紹介欄をざっくりと書き換える適当野郎。
いやだってそっちのほうが明らかにしっくり。
うさんくさ男です! よろしくおねがいします!!
しかし風呂の中でずっとログ打ってたらのぼせた。
はんぶんくらい誕生日決めてたとか秘密。
さきに誕生日きめちゃうの実は初の体験なのでどきどきそわそわ。
この誕生日に従ってロールできんのか俺。
あら
[カクテルグラスを静かに置いた。
見ない顔だ。そう思ったが、すぐに否定する。
今の見苦しい行動も、この親しげな表情も、このバーとセットで知っている]
ベッドに、
[綺麗に整えられた指先を男へと向ける]
来る?
[緩く首を傾げて、視線をグラスへと流した。
何を飲んでいるか、それが*答え*]
……それとも
貴方の誕生日までおあずけかしら
[見覚えのあるような、ないような。曖昧な記憶の男は、6月18日の男として上書きされた。
買われたことはない。それは断言できる]
私は……
[緩やかに波打つ髪を指先で弄び、俯きがちに視線を男の背後へと送る。
赤が滴る音はほどなく止み、片づけを終えたマスターがカウンターに向かう客へ、お詫びの一杯を差し出す声が聞こえた]
初雪の頃よ
……それ以上は
[まっすぐ立てた人差し指を、キスするように口元へ]
此処では、秘密
[目を細めて、笑みを*返した*]
[タンブラーが倒れる音。液体が溢れる音。少し離れた横からしたそれらに、男は視線だけを動かして其方を見やった。
カウンターの上に広がる赤。物騒なその色は見慣れ、好きだとも嫌いだとも思わないものだ。
赤をぶち撒けた相手に対し、男はただ片眉を動かしたばかりで、別段文句を零しはしなかった。その奇行は、いつもの事、だったから。
勿論、直接被害を被れば話は別だが]
……十一月の、三日だ。
ヴィルヘルム・ライヒが死んだ日だな。
[生誕を問う声には、呟くように返答した。マスターから詫びのグラスを受け取り*つつ*]
ベッドに?
[残念ながら、甘やかなやりとりにはてんで向いちゃいないたちなものだから、その言葉がすぐにカクテルの名前には繋がらない。
ただ、この売春婦めいた風貌と艶めいた声で、"ベッド"の単語が示す意味くらいは、わかる。
そうしたらもしかすれば、答えはその先だ。けど。]
そうだな、とても魅力的なお誘いだけれど、まだ勢いに任せるには早いかな。
ボクの誕生日までは待たなくてもいいけど、もっと夜が更けるまでさ。
[この女が、いつもの常連だったかそうでないかは、別にどうでもいい話。
誰だって等しく、変わらずに笑いかけるだけ。
金輪際馬鹿な真似はよせとマスターが言っても聞こえないふり。
だってこの侘びの一杯を目当てに来ている奴もいたりしただろ?
時々タダ飲みするためだけに、何杯分も先に金を落とす客を連れてくることもあるんだ、ボクの手柄じゃないけど感謝してほしい。]
初雪から産まれたから、きっとキミはこんなに綺麗な色をしているんだ。
羨ましいな。女の人って綺麗だから。
[彼女の指先が弓なる口元に吸い寄せられる。
あまりに官能的で、唇を湿した。]
[男はたくさんの名を持っていた。
現在のところ、この街ではカウコと呼ばれていることが多いから、まあそれが彼の名、ということにしておこう。
はいよ、という声とともにかすかに煙の香りのする水割りがトン、とカウンタに置かれた。
いつもの銘柄、モルト仲間にはせっかくの個性をそんなに薄めるなんて、という苦笑いをされるほどの比率。しかしこれが彼にとっての完璧な水割りだ。]
……旨い。
[しみじみと呟いて、薄い水割りを一杯だけ、ちびちびと飲む。これが彼の日課だった。]
[彼は気がついていない。
いつもの酒を飲むそのカウンタが、いつものあの場所ではない事に。
マスターも、常連たちも、彼の知らない、誰か。
ただ海の香りのする水割りだけが、いつもと変わらずそこにはあった。]
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