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(うんと、サービス……)
[漏れ聞こえてくる、「イケメンさん」と「お色気さん」の大人の会話。ナオは顔を真っ赤にしてしまう。
それでも、目を離せなくて。文庫本の隙間からそっと2人の様子を窺う]
(飽きさせたりしないって、どゆこと)
[目がぐるぐると回り出す。ナオにはまだ早すぎる、大人の世界が広がっていたのでした]
ひょえっ。
[ナオの思わず漏れた呻き声は。
小さな車内に、存外大きく響いたように思う]
……あ。ごめんなさ、い。
[顔を真っ赤にして、「イケメンさん」と「お色気さん」にぺこりと頭を下げていた。なにをやっているんだ自分は。でも、こんな公衆の面前で身体をくっつけるなんて]
(し、刺激が強すぎます)
[ぷすぷす、と頭から湯気が出そうだった**]
[「知らないおじさんからものを貰ってはいけません」。
そんな注意文なら自分がこの子くらいの歳だった時によく聞いた。
「知らない女の子からものを貰ってはいけません」
――とは一度も聞いたことがなかったが、
どちらにしろ要点は“知らない人から何かを貰うな”だから同じことだ。
そんなとりとめないことを考えてしまうくらい、
彼女にとっての知らない相手であるこの子が何故飴玉を?]
(もしかして……私と同じ?
私のことを仲間だと思って……)
[ならばお近づきのしるしとしてこの子にも何か渡さねば]
(お金? 10円玉渡しちゃう?
いやいやいや……)
[とっさに浮かんだ案をすぐに却下する。
しかしすぐに渡せそうなものがそれくらいしかないのも事実]
[視線がそれらふたつだけでなく、
楽器ケースの脇にちょこんと置いた学生鞄もうかがい見るようになるまで、
そう時間はかからなかった。
――が、鞄の方は数秒で見るのをやめた。
再度少女に向き直り、飴玉を指差しながら、]
………、綺麗な色ね。
[そんなことを呟いた。
そんなことしか呟けなかったともいう。
お行儀がいいか悪いかなんて、そんなこと気にしていられる余裕はなかった。
この場に親がいればこの子にいい顔はしなかっただろう、とは、
頭の隅で思考が働いたが。
車内を見回しても、この子の親らしき姿を見つけることはできなかった]
[男には妹がいる。
少し年の離れた彼女はまだ学生で
電車に揺られながら男は、
妹の生まれたときを思い出していた。
手が紅葉よりもちいさくて。
身体全体がふにゃっとしていて。
別の生き物みたいだった。
男は新しく現れた存在に、
恐怖し、嫉妬し、不安になった。
そんなことを思い出す。]
[車内にいる少女達を見ると、
余計に不快な思いが想起されて苛立ってきた。
彼女らが悪いわけではない。
それは分かっている。
だが、安心が欲しかった。
当たり前のように現れた妹を見た、
あのときのような不安が全身を覆っていた。
だから女性のいる進行方向を見まいとする。
せめて人を見ようと男子学生の方を見たが、
その近くにいる小さな少女が目に入り
男は誰もいない方へと視線を処理した。]
[家族らしき乗客は、この車両にはいない。
それがまだしも有難かった。
もしはしゃぐ子供の声や、優しい母親の声や、
余裕ぶった父親の声なんかを聞いてしまったら
男は嘔吐でもしていたかもしれない。
若い乗客しかいないことを、改めて認識する。]
[ここにいる乗客達にも家族がいて、
兄弟や両親との軋轢や安らぎがあったりして、
そんなことを男はぼんやりと思う。
会社員らしき男にも妻子がいたり、
おっさんとしか見えないあの人物にもパートナーが、
はたまた難しい年頃の学生達にも。
そこまで考えて、違和感に気付く。
あの一番幼い少女は、どうしたのだろう。]
[自分の知ったことではないと分かっていたが、
車内をもう一度見回した。
ほとんどが学生で、
会社員と自分は社会人。
あのおっさん(?)は職業不明だが、
恐らく独立しているだろう。
ひとりでいたとしても何の不都合も不自然もない。]
[ルリは自分の心臓がどっくんどっくん鳴るのを聞いていました。徒競走のときよりもドキドキして、顔も熱いくらいなのに、そのくせ飴玉を握った手は少し冷めているようでした。
だからでしょうか、お姉さんがもらってもいいの、と聞いた時に、ルリはうまく答えることが出来ません。耳の中でドキドキしている心臓がうるさくて、なんて言えばいいのかルリには分からなかったのです。
お姉さんは驚いた顔をしていました。もしかして、もしかしてやっぱり、ご挨拶としては飴玉はダメなのでしょうか。でもルリは果物は持っていないのです。]
[お姉さんの視線がいったりきたりする間に、ルリの目線も少しずつ下がってきてしまいました。あらやだ、鼻がツンとします。お寿司を食べた時のようです。
けれど、しぱっと、ルリが瞬きしたら、眼の中の海は薄れました。
綺麗 ですって?]
[ルリはきちんと目を上げます。そうして、指さされた飴玉とお姉さんとを見て――さっきのお姉さんの真似っこみたいでした――、それから、ウン、と頷きました。]
あの あのね、これ、
ルリのお気に入りのアメ、です、ドウゾ!
[やった。やりました。
今度は言えました。ドウゾ。たった三文字です。なんでこれがさっき出てこなかったのでしょう。勢い込んで言ったせいか、少し早口でしたけれど、とにかくルリは言えたのです。御挨拶を言えたのです。]
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折角なので「みっちゃん>>1:=6」は『三四郎』からとってみた。
名前を圭か碌入れたいよねって思ってるけどギンスイって名字なの名前なのどっちなの
/*
ここで挟んだりメモで非村建てばれたりしている銀水ですどうも!
銀水って書くと井上陽水みたいだね!(???)
・共鳴の方でログ伸ばしてしまいそうです。
・降車後のポルテさんの日常がとても気になる。
[ルリはあんまりにも一生懸命でした。御挨拶をする使命に突き動かされていたものですから、参考にした『果物の大人』の正体に、気づけていませんでした。よくよくその人を見ていたら、きっとルリは今度こそ完璧に動きを止めてしまっていたでしょう。
けれどルリは、一つ御挨拶ができたものですから、あの怖い人にもご挨拶だって出来るかもしれないわ、とむくっと自信を育てたものですから。正体に気付く機会をひとつ、逃してしまっていました。]
/*
お眠りしているムカイさんのところに飴おいて、
そんでウサギさんを触りたい思っているんだけど
ムカイさんのお席はどこでしょう
ルリちゃん分裂しちゃう?しちゃう?
[彼女は己が放った問いに少女からの答えが返るのを待っていた。
待てる限り待つつもりでいた。
途中で電車が駅に止まったとしてもそこは降りるべき駅ではない。
彼女の方に時間はまだあるのだから]
ありがとう。
リンゴ味は好きだよ。
[はしっこをつまんで飴玉(リンゴ味)の入った袋を受け取る]
でも、えぇと……、私。
お返しにあげられるものを持ってなくて。
[それでもいいのという言葉は、少女の様子を見ていれば消えた。
心情は想像するしかなく、当たってるとも限らないが、
ともかく少女がいっしょうけんめいに差し出してくれたのがこの飴玉なのだから]
(ありがとう、お仲間さん)
[ちゃんとした(?)お礼の言葉はひとまず胸中にとどめて―――
それとは別に胸中にはさっきから、
少女を見てどこか懐かしいと思う気持ちがあった。
こんな時間に、親と離れて、電車に乗っている少女という光景。
その、実例が。身近にいたせいか]
/*
この流れからどうケンとのあれを拾い上げるか方策はかんがえようとしている! る!!
とりあえず実例=妹というのと、
キー曲を情熱大陸にしたいというのをめもめも(選曲理由:バイオリン)
[ガタン、と大きく車体が揺れた。
向井はもぞりと肩を動かし、ややあって丸めた背中をゆっくり伸ばして身を起こした]
ね、み
[すぐ横にある、ボックス席の背もたれ、の反対。
頬を預けるにちょうどいい場所は、車内の冷房によりひんやりしている。
鞄は空いた隣に滑らせる。
勢いあまってコン、と頭が音を立てる]
[ああ今日も朝起きられなかった。
朝ごはんを食べられなかった。
電車に乗り遅れた。
学校に間に合わなかった。
授業に出られなかった。
全部、夢。
そんな不真面目な自分は、全部夢]
[横に置いた鞄に添えられた指は、右の人差し指にタコがあった。親指も少し、赤くなっていて。そして左手の人差し指がうっすら黒くなっている。
夏。
机に向かい続ける学生。
夢の中でも、数字に追われているのだろうか。
それとも、顔の見えない家族か、教師か]
とま と
[寝言からは、そんなことちっとも、窺い知れないのだけれど**]
[頭を文字通り抱えながら、厄介なものに眼をつけられたな、と思考する
何処に眼をつけたんだと聞いてみたくもなったが、会話をすると余計に気力を消耗するように思えて憚られた
名刺で確認した街はそれほど遠くもない。あと少しで降りるなら特に強く拒否しようともしない
もう一つの気がかりは女学生の反応だ
あの頃の年代なら暫くはクラス内での話題の種にされてしまうだろう。そんな懸念を頭の中で混ぜ返しながら、あらためて訂正したものか、と思考を巡らせる]
[まだ顔が火照っている。電車で素っ頓狂な声を上げてしまった。恥ずかしい。しかも「イケメンさん」の前で]
(……読書の続き、しよ)
[ページをめくる。“竜岡町から池の端へ出て、上野の公園の中へ――”。駄目だ。文字が頭の中に入らない。
ナオは空想が得意だった。ひとたびページを捲るだけで、明治時代の東京の様子がまざまざと頭に浮かんでくる。はずなのに]
(ああ、もう)
[今日は超ラッキーなはずだったのに。おかしい]
(おかしな子だって思われちゃったよね……きっと)
[しゅん、とナオは肩をすくませた。
文庫本から顔を上げて、「お色気さん」を見遣り]
(主に、あなたのせいですから……!)
[拗ねたような視線を送った。伝われ。この思い。
もちろん、挑発に乗ったナオが悪いのだが]
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