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《ゴッ》
[本日二度目の拳骨。
頭には計4個のこぶが出来ていた。
つまるところ、父は一部始終を見ていたのである。
木槌を見つけたことであげた大声が届いていたらしい。
離れているのに目が合ったのもそのためだった]
[公衆の面前で怒鳴り散らされるよりは良いが、痛いのには変わりない。
殴られた箇所を押さえながら、友幸は訥々と話す父の声を聞いていた。
「仕事道具の管理はしっかりしろと言っただろう」
「仕事を手伝い始めて何年目だ」
「二十歳になったんだからもう少し落ち着け」などなど]
手伝い始めて二年目ですすいません…。
[思わず敬語になりながら答えて、ぐさぐさと突き刺さる言葉を受ける。
帰れと言われないだけマシだが、思いっきり凹みそうだった]
……あ、そういや親父。
藤代さんからの手紙、なんだったんだ?
写真だけじゃないだろ?
[話が一段落した頃、ふと思い出したことを口にする。
問われた父は再び作業を開始しながらその問いに答えてくれた]
…八重藤の花つきが悪い?
それで、診に来てくれって…?
[返答を聞いて友幸の表情が変わる。
あの藤園の片隅にあった珍しい藤。
幼い時の記憶が残る場所]
……あれは、枯らしちゃならない。
親父、診に行く時は俺も連れてってくれ。
[そう頼み込むが、大学があるだろうと突っぱねられた]
じゃあ、連休の時だけでも良いから!
どの道、治療するとなれば長くかかるんだろ?
[恐らく父と他の作業員が長期出張してあたることになるだろう。
ずっと居るのが無理なら休みだけでも良いからと譲歩して、好きにしろと返事を貰う]
さんきゅ。
行く時期決まったら教えてくれ。
[強張っていた表情を緩め、安堵した様子で笑みを浮かべた]
[藤園にある八重藤が自然発生の突然変異のものなのか、他から移植されたものなのかは知らない。
けれどその樹は友幸にとってとても大事なものだった]
───約束したからな。
[咲き誇るあの樹の下で、また会おう、と]
/*
誰と約束したかは書かない不親切設計(
一応六花想定だが、藤そのものと再会を(一方的に)約束したと言うのもあったり。
[話が途切れ、作業に集中し始めた頃。
木槌で打診を行っている時に、ポケットから着信を告げる音が鳴った]
杏奈?
[軍手を脱いでスマホを操作し、通話状態にする]
どうした?
[問いかけに返るのは困惑の色。
兎やら藤やら捲くし立てられる言葉は文章になっているようでなっていなかった]
待て待て、落ち着け。
ちゃんと順序立てて話せ、な?
[「お兄ちゃんみたいに頭打ってないのに!」
「兎が二足歩行で!」
「なんでか藤みたいなのが!」
まだ落ち着いていない模様]
それ暗に俺が頭おかしいとか言ってないか?
[そんな風に話が若干ズレたりもした]
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