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[深く追って、時折僅か隙間をあけてわざとらしく音をたてる。
濡れた音が入るだろう耳を擽り、項へと指を滑らせた。
あの女の首を割いた時と同じよう、今は何も持たぬ手を動かして。
どうやって殺してあげよう。
激しくなるキスにものぼせぬ頭で*考える*]
ん、
[くぐもった声が鼻の奥から漏れた。
耳に触れる指先。擽るようにささやかに動くだけなのに、みだらに思う。
首に触れれば、否応なく傷のあったあの首を思い出した。
ぱっくりと。白いものすら、覗かせて。
その逆さまを辿るように、ウルフの首だって、
――――別の女のことを考えてしまった。
人生最後のキスなのに。目の前のいい女が、こんなに扇情的なのに。]
[ああ、そうだ。
あの時傷口の開きを教えたのも、この唇だった。
ぱっくりと。今にも、何かを補食しそうな。
その唇に、今喰われている。
言いようのない満足感に、ただ酔った**]
……ねぇ
[唇を顎から喉へと滑らせる。
どくどくと脈打つ血管の上でとまり]
何、考えてるの…?
[胸に置いた手に少しだけ、力をこめる]
……キミのこと。
[そう言えばこの女は喜んでくれるのだろうか。
指先は首を辿る。首は命を繋ぐ生命線だ。
力が入り、死への期待に喉がこくりと鳴った。]
やぁね
[とん、と胸を押した。
少しでも傾ぐならば、そのまま相手を引き倒そうとする。無理やりにではない。ここが寝室ならば、きっと自然だろうくらい、手馴れた仕草だ]
嘘は、女だけに任せて
男の嘘は、役立たずだもの
[女の力は、踏み込んで耐えようと思えばいくらでも耐えられた。
それでも、ふらりと傾いだのは、ひとえに抵抗する気の無さ故に。
かつてこれほどまでに殺されることに従順な男がいただろうか。]
優しく、してよ。
[ここがビトウィーン・ザ・シーツなら、きっと言うべき立場は間逆であるはずの言葉。]
優しく、愛してあげる
[押し倒した身体。裾を割り開いて露にした膝で、胸のうえにのりあげる。
服に手をかけ肌に指を滑らせる]
痛いかも、しれないけど……
[ゆるく、首を傾げた]
男の子、だもんね
泣いてもいいのよ?
めちゃくちゃに、されてもいんだけどね。
[女の体重。その重さが官能的だ。
また、自然詰めていた息を深く吐いた。]
そうするのは、どっちかってと、ボクの趣味、だから。
いいんだ。
[泣きやしない。はずだ。
受け入れるように、目を伏せる。]
いい趣味
[目を閉じたのを確認して、閉じたままでいて、と瞼に口付けを落とし、ゆっくりと身体から降りた]
気が合いそう……
[スカートの裾を絡げて、足を晒す。ぼんやりとした灯りに白い肌が煌いた。
そのまま軽く持ち上げて――]
嬉しいわ!
[声と共に、尖ったヒールを、思い切り男の鳩尾へと振り下ろした]
[女の言うとおりに、目を閉じたままでいる。
あ、そうだ、と、何かを言いかけて、唇が開いたのに。
その先は紡がれることがない。]
がッ――……、
[細いヒールを突き立てられて、具合良く開いた口からは、低い呻きが漏れた。
呼吸が妨げられるような衝撃。意識が瞬間飛びかける。]
[この男、稀代の変わり者ではあるが、喧嘩はそうそう強くない。
人の神経を逆撫でするのは大好きで、何を言ってもただけらけら中身の無い笑い顔を向けるだけだったから、そりゃあもうよく殴られた。
殴られたのに、強くはならない。
一方的に殴られているだけなのだから、当然だ。
死ぬのなんて、そんな痛みたちの集合体だと思っていた。
この世界ではあっけなく人は死ぬ。
だから自分もあっけなく死ぬんだと思っていた。]
[一度、二度。同じ場所を踏みつける。
引き抜いたヒールは赤く染まり、薄暗がりの中では黒ずんで見えた]
ねえ、
[少しずらして下腹を踏む。
一撃で死にそうな場所は、あえてずらしていた]
めちゃくちゃにされた気分
[す、と息を吸い込んで、思い切り
足の間――局部へ向けて足を踏み下ろした]
どう?
[微笑みは、その声音は
何処までも優しかった]
[ぞぶり、ぞぶり、ヒールはおかしな位置から体内を壊していく。
痛いのか痛くないのか、熱いのか冷たいのか、どれもこれもがその一転に襲ってきているような気がする。
頭が痛い。痛い? これは痛いのか?
めちゃくちゃにされているのはそこじゃないはずなのに、脳の芯からぐちゃぐちゃだ。]
い、ぁが、
[伝えたい言葉は出てこない。ウルフもこうだったのか、と遠く過ぎる。]
――――ッ!!
[なのに思考は。
踏み下ろされた足の狙いにかき消される。
もう、痛いではなくて。
脳天を突き抜ける白いフラッシュだった。]
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