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[気配を感じて、頬杖を突いたまま、視線だけを動かした。
微かな声は聞こえない。立ち去る気配。瞑目する]
煙草でも、吸ってこようか。
[*白衣を翻して、居間を後にした*]
-スイ-
[ユウキに話しかけられ、一瞬びくりと身を緊張させる]
たたた、ただいま……とうさん。
[しばしば間をおいて、頬を赤くしながら答える]
こたつ、いいよね。
みんなで暖まれるから、おいら、こたつ好きだよ。
[九九を口ずさむミナツにつられた]
ににんがし、にさんがろく、にしがぺち、にごじゅー……。
[最初は表情が強ばっていたが、だんだんとやわらぐ]
しちいちがいち、しちにじゅーし、しちさんにじゅーいち、しちしにじゅーはち、しちろくごじゅーし、しちくろくじゅーさん。
[ギンが九九に合わせてにゃあにゃあと鳴いた]
[ギンはみかん箱に突っ伏したミナツのまわりを心配そうにくるくる回り、背中をてしてしと叩いた。
スイは笑みを浮かべてそれを見ている]
[スイはいつの間にか、こたつに潜り込むように、膝を寄せて丸くなり身を縮込ませている。
額には汗。眉間には深い皺。目尻にはうっすらと涙が浮かんでいる。
わずかに開いた口から小さな言葉が漏れる]
ちが……好き……大好きなんだよ!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
もう、誰にも近づかないから……だから……ごめ……。
[誰に向けたものか分からない、無数の謝罪が繰り返される*]
[布団の中で、一人目を覚ます]
哎!
[とっさに、どこにいるのか?何をしているのか?わからずに、心細い声を上げるけれど。この家の、賑やかな面々を思い出すと、ホッと安心したように笑った]
我想吃米飯ー。おかーさん!
お腹が空きました。
[パタパタと廊下を走って居間へ]
あれ?スイが居ます。おかえりー?
[火燵で丸くなる人影に声をかける]
ん?寝てますか?……寝言?
[謝罪の言葉に、困惑しながらも、猫にそうするのと同じように、スイの背中をそっと撫でた]
[窓の外は雪が降っている様で]
漂亮……。
でも、寒いです。
あ。ミナツー。風邪ひきますよ?
[部屋の隅にあった小さな毛布をミナツの肩にかけると、隣に座り込んで。そのまま、再び*うとうと*]
うう、にゃにゃんがにゃあ、にゃんにゃにゃんがにゃあ……
[みかん箱の上、数字がぐるぐる回る夢。降り積もる雪から微かな桃の香り]
んあ?……パオ?
……おーい、風邪ひくぞ
[目を覚まし、隣でまどろむパオに手を伸ばすと、ずるりと肩から重みが抜ける感覚。かけられていた毛布に気づき、目を細め。パオの頭に積もる雪を掃い、そっと両腕で抱き上げて炬燵へと運ぶ]
うう、身体、冷えちまった。風呂にでも……ん?
[スイのいる辺りに視線を泳がせ、首をかしげ。スイの姿を認識することはなく、背中にギンの足跡をつけたまま、*風呂を沸かしに*]
-居間・スイ-
え。あ?
[目が覚めれば、パオリンもミナツも眠っていて、ギンはしたり顔で毛繕いなどをしていて、ツキハナもベックも居る居間で自分がどうしたらいいか分からずあたふたとした。
5分位すれば落ち着き、ふぅとため息を付く。
わずかに違和感のある胃のあたりに手を置き、悲しげにほほえみ、夕ご飯の支度をすべく台所に消えた]
[スイは台所で手際よく米を研ぎ、菜を刻む。
──しばらくの後。
ちゃぶ台の上に大根の味噌汁、大根の青葉と胡麻を混ぜ込んだ色鮮やかな大根飯、きんぴらごぼう、ネギと茗荷と青葉の冷や奴、かぼちゃの煮付けが並んだ]
にゃああん!
[スイの足元でギンの抗議の声が響き、ミナツの買ってきた猫缶を一つ皿に空けた]
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