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(……誰かを殺して。人狼だと言って突き出せば?)
[ポケットの中のナイフを握りしめる。奇術用の刃の潰れたものだけれど、寝込みを襲うか何かすれば、行けるかもしれない。]
(いや……僕が突きだしたところで、信頼されるのか……?)
[舌打ちする。昨日帽子の女に言われたことを思いだした。]
……愛想が必要……。このこと、知っていたんじゃないですかね……。
[近くの誰かに聞こえるように、呟いてみた。]
―― 宿一階 ――
護身用。
何かあったら割って武器にする。
[空いたワイン瓶を胸に抱え込んで、椅子に腰掛けた。
それは、パンケーキを食した窓辺の席だ。]
人狼は、真夜中に姿を変えるんですって。
だから――。
[瞳はまずペッカの姿を捉える。
順番に全員の顔を見ていくアイノの唇は、弧を描いていた。*]
……昨日言われたんですよ。帽子の女の人に。
愛想を振りまいておけ、ってね。
[人の記憶は曖昧で、それは彼女の発言とはずれていたけれど。]
……確かに彼女は正しかったですよ。僕は愛想のない旅人と言うだけでこんなに疑われている。
折角ご親切に忠告してくれたんだから、もう少し素直で可愛らしい子供でも演じていれば良かったですね!
[皮肉気に吐き捨てる。]
……なんでこのタイミングで、そんな忠告をくれたんでしょうねぇ。
──宿一階──
[集められた五人はそれぞれに、離れた席に座って過ごしている。その視線はお互いを見張るように。]
……僕は部屋にいますよ。いいでしょう、別に逃げられるはずもないんだから。
[そう言って、誰が何を言おうとも聞かず、部屋に戻る。
……自分の行動をきっかけに、皆がばらけてくれればいいと思いながら。]
(睡眠薬でもあればよかったんだけど。無理か。僕の手が触れたものをあの人達が食べるとも思えない。)
[眠るつもりなどもちろんない。ナイフを握りしめながら、外の様子をうかがい、時に床に耳をぴったりつけて一階の様子をうかがって。
自分が助かるための方法を考えながら、少年は落ち着きなく過ごしている。**]
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