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『そうだ。レン。起きればそれで良い。
改めて言おう。――おはよう、レン。
どうする先ほどの話をもう一度繰り返すかい?
君はいらいらしてるばかりで私の話など聞く耳持たないように見えたのだがね?
君は私の力で目覚めた。私はカナメ。
ぼうっとするだろう。君はまだ、私の声なしではこの世界で生きていくことすら困難であるはずだ。
まだ、体もぎこちないだろう?
もう一度言おう。
この島には君の他にも人間がいる。目覚めた者がどれくらいいるかは外に出てみないことにはわからないがね。部屋の外には・・・』
長話はもういい。聞いていたさ。
[ぴしゃり、と声を遮る。]
「レン」、「レン」とうるさいな・・・変な感覚だ。
それは、本当に俺の名前なのか?本当に俺のものか?
・・・とはいえ、他の名前なんて思い浮かばないな。
わかったわかった。「レン」でいいよ・・・。
そういうことにしておく。
『とりあえずは部屋の外に出てみるといい。
体を慣らす必要だってあるだろう?
今のそれは、あまり心地よい感覚ではないと思うのだがね。』
[気に入らない、耳障りな声だがその言葉に耳を傾け]
・・・そうだな。確かにそうだ。
ぼうっとしてるのを覚ましに、体を慣らしに行こうか。
こんな体中がギシギシ言うような不愉快な感覚とは早く縁を切りたいからな・・・。
[壁に手をつき、ぎこちない動きで部屋を出た*]
箱入り娘 プレーチェは、ここまで読んだつもりになった。[栞]
ミナツ……?
さっきディスプレイに無かった名前よね……?
どっから出てきたのかしら。
ダーリン、私の脳に何か送り込んだ?
[真顔で首を傾げる]
じゃあ……[失人 バク]?
[慎重に名前を上げる]
[ふわり、失人は飛び降りる。世界をみて回る為に。行き先など決まっていないけど。それでも、新しい何かと出会いたいから]
行くぞ、カナメ。俺の夢を探しに。
[見えぬ何かに声をかければ、それはついてくるだろうか?]
ひーい、ふーう、みーい、よーお、
いーつ、むーう、なーな やー――
[ブランケットをまとい子供は、
危うい足取りで階段を数えつつ踏んで、上へ着けば更に進む。
階下のとは少し趣を違えた扉。
そこに掛かっていたプレート、記されたその文字も読まずに、入った。施錠などはされていない]
これはなんですか、カナメ。
[なかの広さはそれなりか。
色とりどりに明滅し始めた壁の一部へ寄って触れる。
すると立体映像が、室の中央に結ばれた]
―墓碑群―
[そこは、先ほどまでとは違う世界だった。ここの空気は、冷たく痛い。悲しみの中に、浸かったような感覚。]
あぁ、この場所は涙の色をしている。
[ぽつり、呟いて。近くの扉に寄りかかって、ぼぅっと、この世界を眺める事にした。悲しみの色を覚える為に。]
[高い建物の群れ、電飾、その上に飛行船。
そして大勢の人間たち。
街の俯瞰か、さながら精巧なジオラマのように]
これはなんですか、カナメ。
[耳を傾けるルリ]
…キロク?
むかしの、映像ですか。
このひとたちもいまここに? あえますか?
[これが実体のない虚像である事はわかった。
人差し指が人々を指すと、像がかき消える。
カナメの声は聞き取れないほど遠ざかり]
[しばし佇んだ後、少女の興味は移る。
またその壁へ手が触れると、
別の映像が現れ次々と切り替わる。
操作方法などわからない、
映されるものをただ見るだけだった。
夢中になるうち、
ブランケットが足元へ滑り落ちて*]
ん? 何か……良い匂いがするな。
この匂いは……カレーかね?
[ふと漂ってきた匂いに、一旦止まって辺りを見回し。匂いのする方へと歩いていっては、一つの扉の前で立ち止まる。
こん、こん、と二度ノックをしてから扉を開け]
[身長と同じくらいの高さの出入口。頭をぶつけないよう、慎重に中に入り]
やあ、今日は、お嬢さんがた。
美味しそうな匂いがしたものでね。
余っていれば少し貰ってもいいかな?
[室内の面々を見てから問い]
と……失礼、挨拶が遅れたが。
私はライデンという者だ。
[初めて見る顔には名乗り、宜しく頼もう、と挨拶する。
胸の下辺りに腕を横にあて、丁寧に*一礼を*]
うん、覚えた。この世界は、藍色だ。
[ぽつり、ぽつり。一人で呟いて。]
次は何処へ行こうか。
新しい世界を、見に行きたい。
[寄りかかっていた扉から離れ、また歩き出して。]
[ こつ こつ こつ 螺旋階段を昇る靴音は、硬い。]
[2階の通路に出ると、吹抜けから階下を見下ろせる。
ビオトープ…美しく均整の取れた箱庭が其処にあった。]
禁じられた進化――――
…付き合わされて、気の毒と言うべきでしょうかね?
[呟きには困惑が滲む。
メタセコイアの枝間を駆け抜ける影は、リスか小猿か。]
[ライデンから得られた答えは別の形をした疑問だったが、
眠たげな眼をした存在はそれなりに感銘を受けたらしく…
推し量るのは苦手と言う彼へ、ゆるりと被りを振った。]
素直で謙虚な方は、
慎重でもおありだと思いますよ…ライデン。
[ささやかに呼び名を改めて、気怠げな歩を石畳へ乗せた。]
…ああ。
「今、ひとりの時間だ」とお感じのときは…
何か合図でもいただけるとよいのですがね。
無理でしょうかね。
否、ご機嫌よう…
[別れ際の台詞は、戯言にしても*他愛無さすぎて*]
――――カナメさんに宜しく。
―― 回想 終了 ――
[キッチンの戸棚からクロスを見つけ、座らせたぬいぐるみの首に巻く。
その隣に腰掛けて、小鉢の前にプレーチェ、普通の皿の前にひつじ]
いただきます?
[倣う言葉も動きもぎこちない。
一匙カレーを食べ、数秒後にパカーっと口を開いて動きを止めた]
[ノックの音に顔を向けるとライデンの姿が見えた]
また会おう。
[仰々しい男の仕草に返すのは、先ほど別れ際に聞いたセリフ。
真似て頭を下げると、さらりと髪が*揺れた*]
箱入り娘 プレーチェは、ここまで読んだつもりになった。[栞]
[壁づたいにゆっくり、ゆっくりと歩く。ぎこちない感覚が遠くに去ることはなくて。]
くっ、思うように動かないってのはこんなにも妙なものなんだな。
……なぁ、やっぱりもう一度眠ってもいいか?
[途端、頭の中に大音響で響く声。]
ッ、わかったわかった!起きてるよ・・・。
しかし・・・どこまで続いてるんだ、コレは。
同じドアばかり続くと気持ちが悪い。
……へぇ?人が眠る部屋、ね。
俺も眠りたいものなんだが……わかってるさ、言ってみただけさ。
[一歩、一歩。壁を頼りにゆっくりと歩みを進めて行き―――ふと、足を止める。
目の前にある扉は開いた形跡があって。今までの扉とは毛色の違う扉。手を触れてみる。伝わるのはどの扉とも違った温度。]
……誰かがいる、のか?
お前が言っていた「他の起きた人間」とやらか?
ふぅん……入るのは自由と。聞いてもいないことまで説明ご苦労なことだね。
[聞きたいことだけ聞いたのならばもう、お節介な声などに興味はなく。ただ、その先に進む為だけに扉を開いた。]
[扉を開いた向こうに広がる景色は今まで通ってきた道とはあまりにも違いすぎて、ほんの一瞬目をぱちくりとさせる。]
……なんだ、これは。
ビオトープと言うのか……意味の説明はいらない、自分で感じる。
綺麗だって?ぱっと目に映る感じでは確かにそうだな……でも、俺はなんか嫌だよ。上手く言えない。押し込められたような変な感じだ。この感覚はなんと言うんだ――『窮屈』、とでも言うのか……?
[ふと地面を見る。幾つかのあまり古くない足跡達。
足跡の進む方向を見やり、壁がないことを確認してため息を漏らし。]
ふぅん。あっちの方向、か……。
[壁から手を離し。よろよろと歩みを進めて行く。
人の手の加えられていないように『見える』地面を、足跡だけを頼りに進む]
[しばらく歩くと視界が開けた先に大きな――白い壁。]
……ぼ、ひ……?
此処はそういう名前なのか。
人間の眠る場所?ここでも眠っているのか。
さっきの部屋といい、此処といい、誰もが眠っているのに、俺は眠ろうとすると怒鳴られるとはね……。
ええ、送る事ができれば送りましょう。
また会う時を、……カナメに?
[最後の言葉に向けた疑問符は、
相手には恐らく、届かずに]
君、彼と知り合いなのかね?
[テンマが去ってから、「声」に問いかける。
「そうともいえるし、そうでないともいえますね」
抽象的な返事に、むうと眉を寄せ]
自分も私が俳優のようだと思う?
それは……何、三枚目なら似合う?
――全く、手厳しいね。
[誤魔化すような冗談には、やれやれと]
― 回想終了 ―
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