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『…違うよニーナ。
ここに戻ったのは私の意志』
[ぴくり]
[聞こえた声に眉を顰める]
…ニーナ…。
アンタの仕業だったのね。
あたしは外に出てもっと楽しみたかったのに。
外に出てもアンタの支配力が強くてろくに遊べなかったのに。
[ぎろり]
[自分の胸の辺りを睨みつける]
[声は自分の中から聞こえる]
[それはもう一人の自分]
『だって…外は怖いよ?
こっちの方がずっと良い…』
全く、ニーナは臆病なんだから…。
あたしは外で遊びたかったの!
[ふんっ]
[腕を組んで顔を背ける]
[自分の中でニーナが身を強張らせた]
[外から聞こえた声に、顔を向けた]
おや。
君はたしか――。
[記憶を辿り寄せる。どの位置にあった絵画の少女だろう。
そして、自分が彼女と同じ世界にいることに、やっとのことで気付いたのだ]
[くるり]
[聞こえた声に振り返る]
…ああ、警備員のおじさん。
そう言えば閉じ込められてたっけか。
[ちらり]
[胸の位置で腕を組んだまま]
[横目で視線を向けた]
おじさん。
[自分がおかれている立場よりも、その一言が胸に突き刺さる]
ま、君から見たらおっさんだろうけどね。
[湖に右手を浸す。揺れる湖面は、七つより多彩な色を孕む]
美術館の怪談が本当にあったとはな。
[存外に落ち着いているのは、覚悟があったからなのか、未練がないからなのか、戻れる確信があるからなのか]
怪談。
[くすり]
[おかしそうに笑いを漏らす]
おじさんにしてみればそうかもね。
でもあたし達にとっては、普通。
みぃんないつも出回ってるんだよ?
みんな?
[鸚鵡返しにそう言って]
それはそれで、面白い。
ただ、バレたらクビだな。
[やはり、元に戻れるつもりでいるようだ。
ぽちゃん、と音が反響する]
おじさんが言わなきゃバレ無いよ?
おじさんだけじゃない。
このことを知った人が言わなければ。
[くすり]
[何かを含んだ笑い]
尤も、ここから戻れたら、だけどね。
大人が、こういうことを言うのは許されないだろう。
[戻れたら、の言葉に肩を揺らして笑った]
君たちは外へいけるのに、私たちは閉じ込められるのか。
まぁ、それでも構わないが。
さぁ?
あたしには分からないわね。
[ひょい]
[肩を竦めて見せて]
あたし達は自由に出入りする術を持ってるもの。
でもおじさんは違う。
入れられたから、出られるかは、分からない。
[少女の軽い調子に、微かに残っていた緊張感や警戒心はすっかり消えた]
ここでは、不老不死なのかな。
[口角をぐっと持ち上げ、右手で大きく水をすくって上空へ舞い散らした]
[きらきらと輝く様は、どこか作り物めいていて、さほど美しくはなかった]
面白いな。
[何に対してか、*目を細めた*]
ここは絵の世界。
時間の流れは無いわ。
あたしも、ずぅっと昔からこのまま。
でも”人間”がここに来てどうなったのかは知らないわ?
興味が無いもの。
[ふふん]
[鼻を鳴らす]
…ああ、もう一人居たっけ。
[ちらり]
[聞こえた声に僅かに視線を向けた]
ウェンディ。
ふぅん。
アンタも閉じ込められた口だね。
[くすくす]
[楽しげな笑いが漏れる]
このおじさんと同じで。
[ちらり]
[傍に居る警備員に視線をやった]
閉じ込められた??
この美術館から出られないってこと?
どーしてなの?
……ねぇ。
どうしてそんな、笑ってるの??
[不安そうに尋ねる]
さぁ? どうしてなんだろうね。
[くすくす]
[今度は意地悪そうな笑み]
アンタがここから出られないかもしれないから、かな?
ここは絵の世界。
あたしはここの住人。
でもアンタはそうじゃない。
閉じ込められて、出られるか分からない。
だからおかしいのかもね?
あたしは次の夜になればまた外に出られる。
でもアンタは出られるか…分からない。
[くすくす]
[漏れる笑みは*絶えない*]
どういうこと??わかんないよぅ。
[うつむいてしまう]
出られないかもしれない……って。
それって……。
ふあぁ。
や、やだなぁ。
また眠くなってきちゃったよぅ。
どうしてなのかな??
[目の前の少女に問いかける]
[しかし。答えを待つより先に、目を閉じてしまう]
何だか。ホントは。
やらなきゃいけないことがあった気がしたんだけどなぁ……。
[そう呟きながら*うずくまった*]
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