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[ライデンとイマリにぼんやりした瞳を向け、手をあげた]
どうやら、みんないない人、みたいだねぇ
[す、っと立ち上がると部屋から出た。
豚汁があれば調理場で温めなおそうかと]
何か食べるもの用意してくるわね。
[言って、炊事場へと歩き出した。
途中、ふと不安になって寝室にしていた部屋を覗き込む。
異人の血を引いた少女は、朝部屋を出た時はよく眠っていた。
彼女は、まだいるだろうか?]
ちーちゃん?
起きた?
ちーちゃん?
[光を浴びて泣く少女に、目を瞬いた。]
人間はよく生きる意味を求めるが、そんなものあると思うか?
同じように、死に意味はあるか?
[本の表紙に視線を落としたまま、問い掛けるのは生者相手か死者相手なのか、自分でもわかっていない]
[部屋を出て行くホズミの言葉を聞くと]
みんないない人?
少なくとも俺は、いるぞ。
いるぞ。間違いなく。
[意味を良く理解していないが、反論するように
調理場へ向かう背中に向かって声を出した。]
[ライデンの言葉が背後から聞こえたならば足を止めて]
あぁ、わかってるさ
だってあたしも、「いる」もん。
[何かわかってきたような、でもわからないような不安]
[炊事場の近くでエビコと頭を撫でられるその姿を見て、
思わず空を見上げた]
[今はその影を見せていはいない月。
ただ、その存在が深く心を侵食されているかのような
感覚だけは強く残っていた]
[重い気持ちを振り切って炊事場のなべを片っ端から開けていく。
一番端の深鍋に豚汁が残っていた]
あぁ、炊き出しで出してなかった分が残ってたね
…悪くなってはいないだろうけど。
[棚から小皿を取り出して少し味見]
うん。大丈夫。…………多分。
[呟いてなべを火にかけた。
程よく温まったならば火を止めて、食べられるように器を*用意するだろう*]
先生、難しいことを言いなさるね。
生きる意味って、アホやって楽しかったり、
お月様がきれいで感動したり、
そんなんでもあたしはいいとおもうけど。
それじゃ、学者さんの方じゃ認められねえんかな。
よくわかんねえや。
でも死ぬって言うのはなんか。
元に戻ることだと思うよ。
なにもかも、元は、やみ。
[イマリの『残す』という言葉に、娘のことを思う]
そこにあるだけだ。
生も死も、そこにあるだけだ。
[深く吸い込んで吐き出す息は細く白い]
神様はそこまで暇人じゃない。
[ライデンに視線を向けて静かに笑う]
そう、生きる意味など自分でしか見つけられない。
そして、死んでめぐる。
[短くなった最後の一本を灰皿に押し付けた]
[エビコの声に、振り向いた。優しく声をかけて頭を撫でてくれるその人を、不思議そうに眺める。自分が泣いている事にも気づいてない風で]
怖くなんか、ないよ?
だって。
何も感じないんだよ。
[そう口にすると、ようやく表情が歪んで。ぎゅうと、エビコにしがみつく]
何も、感じない……?
[小学校を出たばかりの少女には、この状況は過酷だ。
何も感じないことによって、彼女はその身を守っているのかもしれない。
しがみついて来た少女の、光に透ける髪を撫でた。]
ちーちゃんも、何か思い出したの……?
難しいですなあ。
[ふっと笑い、煙草を灰皿に押し付けるのを見て]
ああ、先生。
もしよければ火、貸してもらえませんかい。
アタシもやるんだが、こっちくるとき
マッチ箱持ってくんの忘れちまってね。
昨日ならいっぱいあったんだがなあ。火。
[自分の立場に確信を持ったような声音で言う]
それならば、ひととき俺がここにいるのは何故だろう。
ネギヤ君を初めとした三名がここにいたのに消えたのは何故か?
そして、何故未だに彼らはいるのか?
[一連の会話に眩暈を覚える]
…誰も置いていっていない…。
俺たちは元からいなかった?
でも、島の皆は、つい数日前まで普通に一緒に話して、
、、たよな?あれ…?
[記憶が途切れがちに]
手紙を出すはずの曜日だったんだ。
[わずかに目を細めてから、胸ポケットから取り出したライターを鳴らす]
寿命かな。
そのまま捨ててくれて構わないよ。
[飲み屋の名前がプリントされたライターをライデンに放り投げた]
[調理室に向かおうとして、足を止める]
…やめておこうか。
また消えた奴が俺の作ったのを喰ってるとか、嫌だからな?
空のカルメ焼きを取ろうとしていなくなったとか、嫌だからな。
[いなくなった人を探し、いつしか海の前。対岸に目を凝らすと、陸地の姿がぼんやりと浮かんでいる。]
…みぇる
[とてとてと歩いて近づく猫。背中をよじ登って肩の上へ。]
[『何か思い出したの?』と問われて、考えてみるけれど。つなげ合わせる事を拒否するかのように、記憶は断片的で]
お母さんとね、手を繋いでたんだよ。
ちゃんと繋いでいたんだよ……。
……なのに、どうして。
あれは……。ねぇ。
危ないよ!行かないで。
……あぁ。
[ぼんやりと、とりとめのない言葉を紡いでいるばかり]
まぁ…
いるかいないかは、取りあえず「いる」でいいんじゃないか?だって俺らは「いる」だろ。お互いに見えるだろ。
あっち側から見えなかったとしてもここにいるんだよ。俺たちは。
そうだろ先生?生物学的に、は置いといて。
どうも。
[放り投げられたライターを受け取ると、
慣れない手つきで火をつけようとする]
[カチカチという音が何度かした後、
やっと火がつくが、なかなか紙巻に火はつかない]
ちっ、しけちまったかね。
[やっと火がつくと、イマリのほうを見て
「すまんね」と言ってから窓辺で紙巻を吸い始める。
薬草煙草の独特のにおいが、鼻につく]
[しばらく聞いた話を考えていた]
そこにあるだけ…せんせーは難しいこというなぁ。
うち、馬鹿やからよーわからんけど。
[ライデンが「すまんな」というのを聞いて]
あ、別にかまわへんで。
…兄さんもタバコすうんやなぁ。
いけないお願い……?
[祭りの、燃え盛る火を思い出す。
願いは空に届いたろうか。
自分は何を願ったのだろう。
自分の問いに、プレーチェが断片的な言葉を紡ぎだすと、不安げな顔で、その額に手を当てた。
熱は無い。]
お母さん……?
ちーちゃんのお母さんは、もう……。
[亡くなったのだと、聞いたことがあった。
けれどそれをおぼつかない口調の少女の前で口にするのはためらわれた。]
[部屋を出て、薄暗い廊下に呼びかける]
ギンスイ君、おいで。
[持ち出してきていた死亡届一通を折りながら、波打ち際へ向かう。
少年の名が書かれていた用紙だ]
[無くなるものばかりだ、という
ゼンジの言葉を考えながら]
月が帰りゃ、お日様が来る。
そうしてまた、お日様が帰って、月がやってくる。
月に群雲、花に風。
目が開いていて、そんな邪魔さえなきゃあ、
今日もまた見えるさね。
[窓の外を眺めながら、自分に言うように]
[外に出ると、日の光が目映かった]
幻日も出ているのかな。
[用紙はやがて紙飛行機の形を為す]
こういうのは苦手でね。
飛ばないかもしれない。
>>112
お母さんにね、会わせて下さいね。って。
一生懸命お願いしたんだよ。
そしたらね、お月様が。
笑ったんだ。
願いをかなえてくれると思ったのに。
[エビコが額にあててくれた手は冷たくて]
気持ち良いな……。
[うっとり目を閉じた]
誰にも……。
[いつの間にか部屋に顔を出していた若旦那の言葉に振り向く。]
なぜ、こんなことになってしまったんでしょう。
どうしたらこれは終わるのかしら……。
お母さん、に……?
[その願いは、彼岸をこちらへ呼び寄せるもの。
今さっき自分が口にした、なぜ、と言う言葉が頭の中で響いた。]
それは、お祭りでお願いしたの?
[ぐったりと瞳を閉じる少女の重みを受け止めらながら尋ねた。
空に浮かんでいた三つの月。笑ったのはどれだろう。]
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