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おいおい、あんまり近寄るとやけどしちまうぞ。気を付けなさい。
[焼きそばを作る鉄板の前に陣取った男の子が、旨そうな香りに引き寄せられるように、顔を近付けていた。]
やあ、**さん。今夜は足は痛くないようだな。けっこうけっこう。
[神経痛で通ってくる老人、頭痛持ちの若妻、日頃の患者たちも診療所にご無沙汰の者たちも、今晩はたぶんほぼ全員が、この神社のあちこちで祭りを楽しんでいる筈だ。]
[村中が集まった中に、この老いだ医者もまた。
万一に備えて、簡単な応急処置ぐらいはできる程度の諸々を黒い鞄に詰めているのは、ここ十数年変わらない。]
『……きつね……ぐも……』
『……いなり……』
おお、エビコさん。豚汁は今年はどのあたりで作ってるかね。
[耳に入ってきたのは、炊き出しの女衆と、昔懐かしい無声映画の弁士との会話の端々。]
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悩ましいにゃー。誰を診察したらええねん。しかもピクシーいてますねんであーた。
溶けたらなんて言ったらええの?
というか、今日だけは溶かしたくないなあ。
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ほお、毎年縁起のいい方角を暦か何かで調べているのかい。
[それは初耳であった。]
……出来ればネギは少な目に願いだい。
[本当は入れてくれるなと言いたいのだが、日頃誰それの食事に口を出している手前、あからさまに好き嫌いは出せないのである。]
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