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[拗ねないというプレーチェには、いい子だ、と]
気にかかる。そうだな、気にかかる……
いや。大した事でもない。
[レンの問いには肯定しかけて否定する。相手とプレーチェの様子を考えてだったか]
――、ルリ。
[突然後ろから聞こえた声に、振り向いて]
声が聞こえた、とは……
どういう事だね。
[問いかける。少女の奇妙な雰囲気に、少々戸惑った気配を見せながらも]
[ルリには一たび緩慢に首を振り]
いや、私は……聞かなかった。
昨日一度会って、それからは会っていない。
ルリは声を聞いたのかね?
[ルリの近付いた扉を見やる。プレートにテンマの名が刻まれていた扉。ミナツの声には一度其方を向いて]
何、少し話をしていたのだよ。
……君は今日、テンマさんの姿を見たかね?
[呟くように尋ね]
黒いスーツを着た、三十代くらいの……
……そうかね。会っていないのだね。
[ミナツに短く説明してから、思い至ったよう、頷いて。口元に手をあて、俯きがちに、思案げに]
……tenet lux perpetua luceat eis.
[数分の間、そうしていたが。
歌い終えると緩慢なまばたきをしてから並ぶ扉を見直し、一瞬だけ、眉を下げて]
また会おう。
[前もした挨拶を、今度は平坦に。
そのまま踵を返し、己の部屋の方へと*向かった*]
認めましたか?
彼がもう生きていない、という事を。
[歌が終わった後、カナメはそう聞いてきた。少しの間の後、いいや、と返す]
「そういうわけではない。
彼についてはまだ信じ切っていないが、……あの場所が墓だというのならば。
眠っている者に対する祈りは必要だろう」
[信じ切っていない。そうだ。信じられるはずもない。だが、それならあの少女、ルリは、何故あんな事を言うのだろう。そしてあのプレートは]
そうですか。
テンマさんに会えるといいですね。
まあ、会えたらその時は――
[カナメの声が掠れる。ノイズのように。耳が、*痛い*]
[部屋の壁際。脚の長い椅子に腰掛け、腕を組み、前の壁にかけられた鏡を見つめていた]
君。改めて聞くが……
此処は何処なのかね?
[問いかけは「声」、カナメに向けて。
「ドームですよ」という、目覚めた時と変わらないカナメの返答]
私は何故此処にいる?
[「冷凍睡眠していたからです」、やはり前と同じ返答]
私は誰だ?
「貴方は、ライデンです」
……、そうかね。恐らく君は……
何度聞いても、答えてくれはしないのだろうね。
などと、既にわかっていた事ではあるが。
[力ない笑みを浮かべる。やれやれというような、同時にどこか自嘲するような。鏡面に指を伸ばし、映る己の鏡像の輪郭をなぞって]
……というのは……
……いや。これも今は君は教えない、か。
[続けかけた問いを途中で撤回した。
起立し、扉へと向かい]
ただ部屋にいるとどうにも考えすぎてしまう。
[部屋から出、目的地のない足取りで、扉の並ぶ壁近くを歩いていき始め]
[ゲームというのは何なのか。
最初にいわれた時から現れて消える気配のない疑問。どこか胸がざわめくような感覚を持ちながら、歩いていく、私の足はどこに向かおうとしているのだろうか]
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