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[男はたくさんの名を持っていた。
現在のところ、この街ではカウコと呼ばれていることが多いから、まあそれが彼の名、ということにしておこう。
はいよ、という声とともにかすかに煙の香りのする水割りがトン、とカウンタに置かれた。
いつもの銘柄、モルト仲間にはせっかくの個性をそんなに薄めるなんて、という苦笑いをされるほどの比率。しかしこれが彼にとっての完璧な水割りだ。]
……旨い。
[しみじみと呟いて、薄い水割りを一杯だけ、ちびちびと飲む。これが彼の日課だった。]
[彼は気がついていない。
いつもの酒を飲むそのカウンタが、いつものあの場所ではない事に。
マスターも、常連たちも、彼の知らない、誰か。
ただ海の香りのする水割りだけが、いつもと変わらずそこにはあった。]
ねえ、その水割りちょうだいよ。
ええと、何だっけ。ウルフ? ジンジャー? レス? キャットテイル?
[いくつもいくつも名前を並べ立てる。
その中に彼の呼び名がひとつでもあったのか、ないのかも知らないままに、催促の手が伸びる**]
/*
かうこ だから 買う子→売る夫 で ウルフ
ジンジャー+レス+キャットテイル→「しょうがないにゃあ」ってよむんだよ!
んだよそれ。
[並べ立てられた名前らしきもの。
そもそも彼は誰だっけ。記憶を探る。が、途中で面倒になった。]
ああ、そうだな。
んじゃウルフでいいわ。
[答えて、ほらよ、と三分の二ほど残ったグラスを差し出した。
また名前が増えてしまったわけだが、そんなこと、彼は全然気にしない。]
旨いだろ?
[自慢げに言うが、好みを選ぶ酒だ。思い切り薄めてあるとはいえ、何しろ殆ど煙を飲んでいるような香りなのだ。]
ありがとう
[睦言になりきれない言葉には、意識して瞳を大きくさせて頷いた。白い頬に黒髪が揺れる]
貴方も綺麗な顔してるわ
男の人は、努力なく綺麗なんだもの
肌、とか
[紅を差した頬を、さきほど"秘密"を示した人差し指でつついて見せた]
もう冬に入る頃だ。
……オーロラが見られるかどうか、だな。
[その鮮やかとは通じない、むしろ彼の言う雪の方に近いだろう乳白色を掻き混ぜつつ、僅かだけ思案するような素振りをした。
誕生日の話には肩を竦め]
誕生日なんて、そう嬉しいものでもない。
若者までならいざ知らずな。
まあ、嫌いという事もないが。
茶会なら、私は好まない。
[彼が別の姿に話しかけるのを見やり、グラスを傾ける。見慣れたカウンターの奥を見るでもなく見つつ]
["やはり"このバーは男の客が多い。
それはバーという形態故か、時間帯か、窓に女がいるという、この状況がそうさせているのか。
女から視線を逸らす前の、男の仕草。
よく見るものだ。
喉が渇いた時のそれは、何かを欲する時共通のもの。
手を伸ばせば手に入るのに。
勿論、お金があればだけれど]
[並べ立てられるいくうもの名前をよそに、再びカクテルグラスに口をつける。
酔うためでもなく、食事に来ているわけでもないから、カクテルの減る速度はとても遅い。
キャットテイルなんて可愛らしい、などと考えていたからか。
ウルフと聞こえた時には、思わず作っていたはずの笑みが濃くなった。声を出しはしないし、視線も向けなかったけれど]
……あら
[店の奥。暗い照明の光も届きにくい隅の席に、女が一人座っていた。
真黒な帽子に飾られた花は、首の俯きと同じくして、今にも落ちてしまいそうに見えた]
――ほんの少し前――
[頬に触れる指先。少し伸びた爪のかたい感触。
綺麗と言われたって、そうあってほしいと願ったものじゃないから、どうにも的外れに思った。]
努力なく綺麗、ね。
綺麗になろうと思っているわけじゃないんだけれど。
そういう風に言うと、嫉妬する?
[視線を逸らす前のこと。
つつかれた指に自分の指も添えて、絡めて降ろさせる。
なんてことない、ただの女だ。
背けてしまえば、刹那の欲も薄れた。
もう思考回路は、11月3日のことばかり。]
――現在――
ウルフ。ウルフか。わかった。思い出したよ。
そういえばそんな名前だったっけね。
[口から出まかせ数撃ちゃ当たる、なわけもないが、欠片も思い出せてなどいない男の名前をさもはっきりと記憶にあるかのように頷く。
薄めに薄められた水割りはまともな味すらなくなっているが、それで構わなかった。あまり味の違いなどわからない。
けれど煙を飲むとは言い得て妙かもしれない。苦みか、渋み。味がするとも言い切れない、鼻から抜けるだけの、とらえどころのない味わいが喉を落ちていく。]
うん、美味い。非生誕祝いにうってつけだ。
[それは、茶会は嫌いだといった男へ傾けるためのグラス。]
[小さく軋む音を立てドアが開いた。
野暮ったいコートを着込んだ人物はするりと店内に入り、背中で押し当てるようにドアを閉める。
さっと客たちの顔を確認して、それが数刻前まで眺めていたものとは違う事を認めると、まっすぐに奥へと歩いていく。
二人掛けの席の一つに重そうな鞄を載せ、がさごそとテーブルに物を置く。それから上着を壁際にあるコートハンガーに掛けていれば、いつの間に来たのだろう、いつも通りの酒が灰皿が供されていた]
……参るなぁ。
[頼もうと思っていたものが何も言わずに出てきていることに対して、苦笑しか出ない。
それだけ自分が通い詰めているということだろうか。
日中の煩雑な人間関係から逃げたくて、此処ではいつも他を拒絶するように一人で本を読んでいたが、その在り方さえこうして築かれるものがあるのかと気付かされてしまう]
[本当に独りでいたいなら家の中にでも籠ればいい。しかし一人でいることを許容しつつ独りにしないこの店に、どこか苦く、どこか暖かく感じた]
[染み付いたような脂のにおい。
目の前の水割りと似て非なるそれに、くんと鼻をひくつかせる。
頁を捲る音が聞こえはじめたら、盃を交わしに行こうとはしない。]
ねえ、甘いもん欲しい。
砂糖ないの、砂糖。
[呆れるような溜め息をお供に、白砂糖がカウンターに。
定位置はそこだろうと、暗に示す。]
ああ、
……まあ、構いはしないさ。
何でもない日に、杯を捧げよう。
[薄い酒に甘い酒を寄せる。グラスが合わさり、氷が揺れる、涼やかな音が一つ*響いた*]
話わかる。
そういうのって大事だと思うな。
[ちん、とグラス同士の合わさる音。
カウンターに無理やり手を伸ばして砂糖が小山に盛られた皿を取れば、祝い酒のアテも充分だ。
舐めて湿した指に、白砂糖。口元に運んで、しゃりしゃりと食感を楽しんでいる**]
…じゃねえっての。
まあ、なんでもいいけどよ。
[ひとつ増えた名前も、その端から忘れた。
その日暮らしの彼にとっては、名前などそう重要なものではない。]
なんでもない日万歳、ってか。
[昔見た映画の一節だった気がする。が、それが何だったかは思い出せない。]
[ふと、ポケットの中でセルフォンが震えたような気が、した。
取り出してみたが画面には何の通知もなく、むしろ電波が届かないことを示すアイコンが小さく表示されていた。]
…マスター。この店いつから圏外になったんだ?
[記憶が正しければ、たしか先週、ここで女を口説いている最中に他の女から電話があって――]
『ずっとですよ』
[と、マスターは微笑んだ。]
ん、あれ
じゃあ、あれ夢か。だいぶ酔ってんのかな、俺
[女子供並みのアルコールの弱さを暴露しながら、カウコ―ここでは、たぶんウルフだ―は頭を掻いた。]
[ばさり。
褐色の翼はご機嫌に羽ばたいて旋回した。向かいの店の軒先に舞い降りて、重そうな扉をジイ、と見つめる。]
人を殺してみたいと思ったこと…一度や二度は、あるだろう。家族を、恋人を、友人を、その手にかけてみたい、と。
――え?そんなことはできない、だって?はは、君はいいやつだ。
それなら、見ず知らずの誰か なら?
素直になりなよ。
人は誰だって、奥底にそういう願望を秘めているものなんだ。私はそれを解き放つのを、ちょっと後押しするだけさ。
じゃ、ないの。
さっきそうだって言ったのに。変な人。
[おそらくお前に言われたくないランキング第一位だと思われるが、天高く己放り上げる棚。]
なんでもない日なんて、本当はないと思うんだけどね。
ウルフの誕生日はいつ?
[セルフォンを見たり頭を掻いていたりするウルフに、白砂糖のお裾分けを差し出しながら問う。]
[どこかで羽音みたいなものを聞いた気がした。
軽くぐるりと周りを見たけれど、飛ぶようなものはない。
ならば外だろうが、生憎窓際は女の定席だ。]
鴉かな。
いいよね、黒くて。
[羽音が聞こえるような大きめの鳥を鴉くらいしか知らないとも言う。]
誕生日?
忘れちまったなあ、そんなもん。
[小さく欠伸をしながら、答えた。祝ってもらった記憶はないし、自分の誕生日など知らなくても生きていくには困らない。]
…甘
[渡された白い顆粒を舐めて、顔をしかめた。]
誰だっけなあ。
『お砂糖と卵は人の心を優しくする』
なんてゆったの。フロイドか?
[砂糖の小皿をぼんやりと眺めながら、カウンタにべたりと頬をつけて、眠そうにゆっくりと瞬く。]
烏ゥ?
俺は嫌いだ、奴ら俺を馬鹿にしやがる
[突っ伏したままグラスを掲げ、*マスター、もう一杯*]
ふうん。
[忘れた、という言葉。別段興味はないとばかり受け流す。
話題がほしいだけだ。口を動かしているのは楽しい。]
甘いものは嫌い?
[そうでなくても砂糖をそのまま口にする人間はそういないかもしれないが。
美味しいのにな、とまた舐める。]
そう。じゃあ次は卵だ。
ゆで卵くらいなら出るんじゃない?
ボクあんまり固ゆですぎるの好きじゃないから、程々にしてね、マスター。
[ね、とカウンターの向こうのマスターに、笑みを向けた。
反応はどうだったか。卵が出るも出ないもどちらでもいいのだが、ゆで卵には砂糖より塩のほうが好きだ。]
ははは、鴉に馬鹿にされるの?
なら、ウルフは鴉よりも下の存在なんだ、はははは!
[べったりとカウンターに伏せるウルフに、いっそ心地良いくらいの大笑い**]
[また一口、カクテルを口に含む。
酔うほどは飲まない。そんな醜態は誰にも見せたことがない。
唇を舐めれば苦い紅の味がした。
グラスの縁を拭いながら、窓の外へと視線を投げ――]
……変わった客ね
[何かと目があった。
何かは、よくわからない。見えない。もしくは知らない。
ただじぃ、と此方を見つめる目に、ゆっくりと瞬きを数度して、微笑を返した]
[憮然とした顔で入ってくる。子分どもは外だ。
部下の失敗は自分の責任だ、それは分かっている。
尻拭いはしてやるが頭に来るから痛い目は見てもらう。
思い切り殴りつけても気は晴れず、一杯やりにきたわけだ]
何でもいい、酔えるのを寄越せ。
ブッ倒れるような奴をよ。
[ダン、とカウンターに拳を打ち付けて催促する]
お、悪い人だ。
[完全に見た目と雰囲気だけで決めつけて、堂々指をさす。
悪い人を悪いと言えないようでは変人は難しい。]
倒れるようなのって例えばどんなだろ。
あれ? あの、火がつくようなのとか?
[火がつくなら見てみたい。
ライターを誰か持っていないだろうか、脂の染みた本の虫ならあるいは、けれど振り返ればいつの間にかその席はもぬけの殻。]
[聞こえた声に一瞥をくれる。どうも自分に話しかけているらしい。
度胸があると言うよりは神経がないらしいと断定して興味の外に置いた。
その辺の荒くれやチンピラにはない余裕]
早く寄越せよ。
[ウイスキーをそのまま煽る。
喉が焼けていく感覚が冷めるより早く二杯めを入れた]
うるせえぞ、このタコ。
誰が烏より下だ、だァれが。
[既に発音が怪しくなり始めている。
新たな客の訪れには視線だけを投げかけたが、もう瞼は重く]
やけ酒は良くねえぞ、良くねえな。
酒が可哀想だろォ…?
[最後のほうは何かもごもごとした音になって、そのままうつらうつらと微睡みの中へ。]
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