えー、いくら立ち入り禁止でもこんなところに置いていくって、そりゃ酷くないですかお嬢さん…。
[トイレ窓の桟に差されたまま、忘れ去られていた。]
[お嬢様が新しい鞄を買ってから、一度も使われなくなったこの鞄]
ひっく…ひっく…。
僕のことも鞄のことも忘れないでぇ…っ!
[暗闇からの悲痛な叫びは誰にも届くこともないだろう**]
やまきーかわみずーめーみみくちてーだいしょー…
[引き出し二段目奥の奥。
一番底に仕舞われている学習帳が、暇を持て余して1ページ目の内容を音読している。]
出番がないなぁ。退屈だなぁ。
とっても大事にされているけど、私のページは、半分以上残っているよ。
漢字ドリルを写すも良し、途中から書き写されている「ときめきバトラー☆物語 私のしつじさま」の続きを書くも良し。
どっちでもいいから、使ってくださぁーい!あとここ狭い!
[何層にも重なるノートや下敷きの底で、元漢字学習帳はとっても*暇を持て余していた*]
/*はじめまして。
初めての執事国に飛び込んでみました。
どきどきです。
200pt…喉喰い虫の私にできるのか…と思いつつ、れっつちゃれんじしてみるのです。
残りすでに159pt!!
あれー、おかしいなー。なんで皆いないのかなー。
[今頃気づいたのか周囲を見渡す。
どうやら現在地は屋根裏部屋のようだ]
あ。
[動いた拍子に間に挟まっていた紙が落ち
……そうになったのを器用にキャッチ]
危ない危ない。
せっかくのチャームポイントがどっか行くところだった。
とりあえずもう少し待とうかなー。
[ぱたりと倒れてそのままぐーすかと*眠りにつく*]
てか、痩せたんじゃねーか、オレ。
ぺらぺらによ。
[もう百科事典分冊でいい気がしてきた]
……。
いや、いやいやいやいや?
学習帳よオレ? 見てもらうだけの百科事典とは違うんだぜ?
学習帳のプライドを失うところだったぜあぶねえ。
……あ、おいガキ。
見ねえ顔だが、ちょうどいい。オレをお嬢さんの学習机まで運べ。
こっちだこっち! もっと下!
しゃがめ! 見ろ! こっち! 背伸びすんなー!
[戦いは*続く*]
『あらやだ落ちてる』
おとしものですから!
『昨日片付けたのに……地味。庭師のおじさんかしらね』
ちょっ! 女給ふぜいが簡単にめくれると思わないでちょうだいっ!
アタシはそんじゅそこらの安い学習帳じゃないのよっ!
……アーッ!
[*暗転*]
しくしく…。
[泣きすぎたせいか放置されている場所が良くないせいか、湿気て表紙がうねり始めた]
顔が濡れて…力が出ない…。
カツオ人間こわーい……(ぐーすかぐー)
[怖い割には安らかな寝息をかいている。
そこに、いつの間にか開いていた窓から
強風が吹き込んでくる。
階段の方に吹き飛ばされた落ちていった学習帳は
目が覚めたら寝る前と違う景色に驚く……のか*?*]
ぐがっ、がーー…!(パチン)
……おっといけねぇ、寝ちまってたようだな。嫌な夢見たぜ。
お嬢は今日も来てくれねーか。こんなんじゃ箱の中に入れられてんのと一緒で体が鈍っちまうよ。
俺を学んでくれりゃー、お嬢が懸想する相手がいてくれりゃその心もズドーンの胃袋もゲッチュ〜の唇にズキュゥゥゥン!だってのにな。
…お?噂をすればお嬢か?…なんでぇ、人違いか。
な、なんだ?何をする気だ。何処に連れてこうってんだ!やめろ、開くな!エロ同人みたいに俺を穢すんじゃねー!
[開かれちょっとした落書きをされた学習帳はどこぞへと連れていかれた*]
おやおや、明るくなった?
ここは私の出番!…なはずなかった。残念。
[引き出しの中身ごとごっそり持ち出されてページの端がしおしおと揺れる。]
はいはい、探し物は何ですか〜見つけにくいものですか〜上から三番目に隠れたプリントさん行ってらっしゃいませ〜
うわぁぁぁぁぁぁ!!大地が揺れるぞ
アイ キャン フラァァイ!!!
[気がつくと、周囲には重力に従って散らばっていく文房具や紙類の束。
抜きすぎた引き出しが落下したと気づいたのは後の事。
途中、古い鞄にぶち当たって一回転したことで、一番底にあったノートは期せずして自由の空間へと射出されていった。]
本来なら出した本は片づけろ、と言うところだが……
今回は勘弁してやろうガキよ。
ふ、寛大だな、オレ。
[ひら、と表紙を揺らす。
床の上で]