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[彼女は三人きょうだいの真ん中である。
上に兄、下に妹を持つ、長女。
妹がこの世に生を受けた時点で、決まっていることがあった。
ひとつは名前。
もうひとつは姉とは違い少々放任主義的に育てること。
気がつけば、妹の面倒を見るのが自分の役目のようになっていた、
そんな、遠い、記憶を、はじめに思い浮かべる]
[少女の視線の真っ直ぐさだけは、
まだ自分のあとをあどけなくついていってた頃の妹を、
自然と思い起こさせた。
この子と妹に似ているところはあんまりないというのに]
[「もうお兄ちゃんになったんだから、
お兄ちゃんらしくしてね」
そう言われたときを思い出す。
腹部が膨らんでいくだけの母は入院し、
次に見たときにはよく分からない生き物を抱きかかえていた。]
なんだよ、これ。
[「らしく」という意味が分からない。
妹が生まれてきたことが分からない。
意味も、必要性も、どこにあるのか。]
[しかし、これから男が出会うのはそういった場。
気持ちが悪かった。
帰りたかった。
しかし、帰るところがない。
帰るところに新しく異物が加わる、それだけなのだ。
なんであいつは、妊娠なんかしたんだ。]
…………変な歌。
[よそゆきのものではない、曖昧な笑みを浮かべながらぽつんと呟いて。
少女が飴玉を差し出している間に外していたイヤフォンに手を伸ばす。かけ直すために**]
[当たり前に、当たり前な子供が生まれるのだと思っていた。
それが「普通」だから。
しかし普通とは何だろうか。
何の感慨もなく結婚して、
今日にでも父親になろうとしているのに
全く実感は湧かないでいた。
妻の陣痛が酷くなったと聞かされたのは今朝のこと。
男はなにも持たず、財布と携帯とだけを持って家を出た。
面倒なものは妻の実家にあるはずで、
男が持って行くべきものなどなにもなかったのだ。
そこにまた、小さな疎外感。
家族とは何だろうか。
自分は家族ではなかったのか。
自分と妻の子供が生まれようとしているのに、
「家族」から自分だけ抜け落ちたような感覚。]
欲望を欲望する…。
[グロテスクなセリフをうっとりと。
そこはまだ開店前の店。カウンター席に腰かけ、頬杖をつきながら、指に挟んだズイハラの名刺をひらひらと眺めている。]
あたしが「先生」。あのかわいい女学生が「私」。
それとも。あたしが「私」。あの子は「K」かしら…
ねえ。ママ?
「白いぼうし」ってお話、知ってる?
思い出したの。子供のころ、教科書に載ってたのよ。
とれたての八朔がね?タクシーの中においてあるの。
乗り込んできた紳士が「良い匂いですね」って。とてもいいお話だったわ…。
[知らないわ。カウンターの向こうのママは笑う。
それは夏ミカン。と訂正するひとはここにはいない。それが彼…彼女の日常。やがて店は華やぎ、ポルテは歌う。たとえ夏風邪を患おうとも、それを微塵にも見せず歌い上げる。それが、彼女の日常。**]
[ポルテの降りた後、電車は緩やかに速度を取り戻し始める
振動に少しよろめきつつ、先程の女学生の方を再び見やれば文庫本で顔を隠している]
…………?
[顔に当てられた文庫本の向こうで相手が何かしらを呟いたような気がした
首を傾げつつ、歩いて元のボックス席の通路側――ポルテが座っていた場所に腰掛ける
窓際に置いていた荷物を手繰り寄せ、膝の上に肘を置いて考え事をするような格好を取る
そのまま、読んでいた本に再度眼を落とす]
――――何か言ったか。
[活字を追う格好のまま大きくない声量で、誰に向けてでもないような言葉を呟く
電車の走行音に掻き消え隣のボックス席に座る者に届かないならば。
それはただの独り言だ]
[どうも、おかしい
女学生からくる視線が好奇や奇異の視線とはまた異質なものに思える
彼女が何を考えているのか。気になりこそすれ、強く追求しようとも思わない
返事がないならばそれはそれで、勘違いだったということもあるだろう]
[後方であった何事かへの興味はいつのまにか薄れ。
イヤフォンをかけ直した手はその後今の気分に合いそうな曲を探して画面を上下させる。
その手がふいに止まることはあれど、目的に変化はない。
もう片方の手はいつの間にかポケットの中に。
ポケットの中で存在感を帯びだす飴玉の袋を包み込むように]
(こういうのって「当たって砕けろー」ってやつだよねぇ)
[とりとめなく思う。
例えば――家族のことにしろ、
未だ掴み損ねたままの件の男子学生との“この前”のことにしろ。
家族はまあ、家にいれば会えるとして。
男子学生が電車を降りるのは確か、
自分より先ではなかったか。
友人と一緒に談笑しつつ降りる姿は、
目だけでなく、耳にも残るものだ。それなりに]
(「当たって砕けろー」ってのが肝心……)
[もっとも、話したことがなければその逆、
話しかけられたこともない相手――
…………。
うん、そうだ。
“この電車内では”話しかけられたことのない相手、
で間違いはなさそうだ]
夏目漱石、お好きなんですか。
[自分の文庫本を、くいっと上げてみせる。
まっすぐに「イケメンさん」を見つめて。
にこり、と笑いかけた**]
(――うまく、笑えているかな)
[ナオは心の中でつぶやく。
ぎこちなくはないだろうか。
「イケメンさん」に向ける笑顔は、できれば自然なものでありたいと願った。
普段は、静かに読書をして過ごす車内。
ばくばく、と緊張で心臓が跳ね上がっていた]
/*
ポルテさんには気を遣わせてしまいましたね。
悪いことをしてしまいました。
中の人は、ズイハラとポルテのやり取り見て、ナオの顔を赤くさせてるだけで楽しかったのですが。
落としどころが難しいな。メモの紙を渡して終わりたいけれども。
/*
申し訳ないない
ちょっと夏風邪がなおらなくって。
ケンくんの方でも打っておきたいものはあったのですが
このくそほどに暑い中風邪をひくなんて なんてこったい。夏風邪はバカが引くとの言葉をかみしめています
うおおおお
うお うおお!!花火のいい音が恨めしい
[ふしゅう、と電車は一度到着しました。乗客の一人が降りていきます。でもここはルリの駅ではありません、もうひとつ先です。ルリは一度リュックをあけて、飴玉を取り出しました。そしてリュックを背負います。リュックにぶら下がるネームプレートが、ガンバレッ!って言うかのようにぽんぽん弾みました。もっとも、当たるのはリュックの背中で、ルリの背中ではありません。]
[でもルリは、確かに一つ大きくなったのです。
お行儀もなにもないことですし、もう何でもできる!とも、言えることではないのですが、ルリは、確かに、さっきまでのルリと一味違います。
だから、ルリには出来るのです。
あの怖い人に飴を渡す――ご挨拶することだって!]
『夏目漱石、お好きなんですか。』
[今度は明確に、返事が耳に届く。目線のみを向けると女学生はにこりと笑っている
顔の近くに添えられた本は同じく夏目漱石の"こころ"。
どうやら、先程のポルテとの事はあまり気に留めていないようだった
なれば、この女学生が見ていたものとは―]
[そういやいつだったか、
男の妹が家出騒動を起こしたことがあった。
妹が中学生にもならなかった頃か。
確か、軽率な妹は手提げ鞄にリコーダーなんかを
入れっぱなしにしたまま出て行った。
筆箱やいらないプリントや、
その夜さえ越せそうにない出で立ちで。
結局は、駅前でうろついて
途方に暮れているのを男が確保した。
ぐずる妹に、半ば無理矢理のように
自販機で買ってやった粒入りオレンジジュースが
魅力的に見えて、自分でも飲みたくなった覚えがある。]
(―――俺か?)
[そう考えれば辻褄が合うような気がする
ただ夏目漱石という共通点で行けば、女学生が共通項のある人間に興味を示す傾向があることは頷ける
だが、それだけでは先程のポルテとの件が不可解だ
あの時に席を移っても良さそうなものを。とズイハラは考えていた]
[男(?)が出て行ったときに開いたドアから、
生暖かい風が入ってきていた。
わずかなそれすらも、男の眉間にしわを寄せさせるには充分。]
あっついな……。
[日差しは凶悪で、できるならばずっと電車に乗り続けていたい。
車内の冷房は男には丁度良く、日差しを遮る座席の位置も
大きな魅力のように思われた。]
[好きかどうか。そう問われて思考を巡らせる
"坊ちゃん"は一度、最後まで読んだ事がある。主人公が最後に赤シャツ等に天誅を加えるのを、何故かよく憶えていた
きっとこういった痛快な展開を何処かで望んでいるのだろう。話の主人公とは違って、こっちの世界では首と引き換えにはなるが
そんなことを巡らせながらどうまとめたものかと頭を回転させる。
女学生と同じタイミングになっているのは偶然として面白い、とも感じていた]
[眼鏡越しに、秘めた思いをもって対峙する――
――なんて、言えればかっこいいのだが。
実際男子学生がやってることはガンつけだ。
そのうえ、対象は、寝入ってる同年代ではなく、
彼の鞄にくっついている兎だ。
かっこ悪さにかっこ悪さをトッピングした動きは
電車の片隅でしずかに行われているのだった。
そして弓道部男子学生は、やおら、行動を起こした。]
かわいーじゃん
[起こさないように酷く小さく呟いた。
視線の先には、アメリカンコミックスーパーマンさながらの
カラーリングをした、プラスティックの熊が笑う。
この細かな作業を、相手を
――しかも見知らぬ相手だ!
途中でばれてしまったらどうするつもりだったのか――
起こさずやりきった自分へ拍手したい気持ちでいっぱいだった。]
[彼はやりたいことをやりたいように
為して立ち上がる。
自分の作り出した光景を幾分か満足げに眺め、
そして少しだけ、首をかしげた。
寝入る学生の両手だ。
ペンだこのようなものか、
指先に現れている微かな徴を見、
それから自分の手を見て、小さく肩をすくめると
学生の前から去った。
振り返らず、一番前の座席までいくと身を預けた**]
[今度は明確に、女学生の方を向いて]
…基本的には古典文学全般が好きだが、その中でも夏目漱石は読み易い
だからだろうか。ふいに読み返したくなるんだ。
まぁその点では、好きなんだろう。
[平坦な声で、返事を返して]
…君は?
[問いを投げ返した]
[何だっただろうか、思わせぶりな女の話。
よく知っているものとは違ったはずの、女の言い方。
「迷える子――解って?」
そうだ、ストレイシープ。]
[苛立ちの原因のひとつに、思い至る。
……あのときの、駅前での妹の顔。
そこに浮かんだ、不安そうな色。
それが、先に見た少女にもあったのだ。
だから、男は自分も不安を煽られたのだ。]
[探すわけではない。
断じて、心配しているわけでもない。
だが――男は先程見掛けた少女がどこに座っていたかと、
狭い車内をもう一度改めた。
自分の不安が、具現化されているような気がした。]
/*
正確には首が飛ぶのも恐れず行動すること、だな
どのみち現代にはほぼ通用せん。
まぁ虚構と現実の区別がついてないと言えばそれまでだが
あ、あの。なにかの縁ですし。
良かったら……。
[ガサゴソと、鞄の中から。
丁寧に折りたたまれた紙を取り出して。
震える手で、「イケメンさん」に差し出した]
(お願い、受け取って――)
[天にも祈るような気持ちで]
(ああ、もう)
[目がぐるぐると回る。顔が熱い。
声が上ずってしまったことに、「イケメンさん」は気付いただろうか。
もっと自然に差し出すつもりだったのに。
どうして自分は]
(「なにかの縁」って、なによ。ばかばか)
[もっと良い言い回しがあっただろうに。
日常のはずの電車内での、ちょっとした非日常。
今日の自分はどうしてしまったというのだろう。
心臓は今にも爆発しそうで]
(「お色気さん」が! 悪い!)
[あんな挑発をされなければ。
いつもどおりに読書して。いつもどおりに通学する。
ただそれだけだったはずなのに。
どうして自分は、メールアドレスが書かれた紙を握って、こんなに震えているのだろう]
/*
ズイハラさん、メモで「外見そんなによくない」って書いてたのに、イケメン扱いしちゃってごめんなさいね。たぶん予定狂っちゃいましたよねー…。
だって格好良かったんだもん、仕方ない←
[見ている。見られている。
教室に、僕だけが一人立っている。
みんな座ったまま僕を見ている。
先生も座って、僕を見ている。
何を言うべきだっけ。
何が正解だっけ。
見ている。見られている。
僕もひたすら、自分を見ている]
[向井はまた、ぼんやりと瞼を持ち上げた。
扉が閉まる音を聞いた気もしたが、
列車は既に走り出している。
慌ててもしょうがない。それでも時間を確認しようと鞄の中にあるはずの携帯に手を伸ばし――]
……ん?
[不細工でも、一応兎はぬいぐるみだ。
なのに、なんだか固いものが手に触った]
[こんなん、持ってたっけ。
覚えてない。
兎は覚えている。
でも、熊は。
覚えてなくても、持ってたかも。
捨てられなくて困って……違う]
[向井は車内を見渡した。
前に座る学生。
ボックス席の大人と……女子高生?
それに
向井は、ここではじめて、車内に小学生がいることに気がついた]
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