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[>>2:52老人の浮かべる穏やかな笑みは、懐かしい温もりを湛えていて。
同じように何時かの光景を思い返していたのだろう、>>52独り言ちていたウミが問いかけてきたのは少しの間を挟んだ後。
それに答えることは一先ず置いて、こちらから違う問いを投げて]
…そっか。
おじーちゃんは、あのウサギの言っていたの、探してるんだ。
[>>2:53探そうとしている人が居る事は、ゼンジからのコエで知っていたけれど。
実際にその人を目の前にすれば、複雑な感情が胸に沸いてくる。
誰かが狭間に落ちたと兎も言っていた、早く探してやらないと─と。
そう考えるのも自然だとは、理解しているのだけれど]
…アタシ?
…良く、わかんない。
[持っていないか、という問いかけに返すのは何かを耐えた笑み。
痛いのか、苦しいのか、泣きたいのか。そのどれとも違うかもしれない。
押し込めてきた記憶の中から、あの子のコエが、顔が、胸をいっぱいに埋め尽くしていって]
──アタシがわかるのはさ。
もうちょっとだけ、探すのを待って欲しい、
気持ちだけなんだ。
[微笑む頬に透明な一筋を伝わせながら、ナニかと重なるコエを紡いだ。**]
年を取ると、待つと言う行為は然して苦にならん。
伊万里ちゃんが思うようにしなさい。
[探す力は飼い猫が得ているけれど、それを示すことが出来るのは己であり、己が口にしなければ暴かれることもない。
時間を作ることは可能なはずだ]
…伊万里ちゃんや。
わしは伊万里ちゃんの抱えているものを取り払ってはやれんが、共有して一緒に泣いたり笑ったりしてやることは出来る。
抱えきれなくなった時は、いつでも会いにおいで。
待っておるよ。
[ここにいる間に限らず、現実世界でも訪ねてくればいい、と。
イマリの頭を撫でながら、彼女の力になってやりたくて、そう言葉を紡ぐ]
[刹那、ウミの身体が薄れ、イマリの頭を撫でる感触が消えて行った*]
─ 回想 ─
[北陸の古都にあった初音の実家は、ある日、なくなった。
家屋が、ではない。
家族が、初音を残して全員死亡したのだ。
一家毒殺事件として、一時期ずいぶん話題になった。
曾祖母の米寿の祝いと、祖父の還暦祝いは、悲惨な呪いの場所と化してしまった。
3か月後、自殺遺体で見つかった男が犯人とされて捜査は決着したけれども、
初音は今も疑っている。
母が示唆して男に実行させたのではないかと。]
[当時8歳だった初音に、事件の記憶はほとんどない。
ショックが大きすぎて、それ以前の記憶も消えていた。
ただ、何かのはずみで、断片的に、
思い出すことがあった。
母の歌や、母の声や、母の持ち物や、母の衣服の特徴を。
そして、幼い初音を何度も怯えさせた、
母の丸々とした指を、分厚い手のひらを、力強い腕を。]
─ 診療所 ─
[青い世界から波の上に出たような感覚だった。
白い。
明るい。
初音はのろのろと目を開ける。
天井扇が回っていた。
漆喰だろうか、診療所の天井も壁も確かに白い。
入り口の近くで意識を失い、倒れていたようだ。
起き上がろうとするだけで大変な力が必要だった。
どうにか立ち上がる。
ヴァイオリンケースを抱えたまま、よろろろと歩く。]
[歩くたびに頭が痛んだ。
倒れた際にどこかで後頭部をぶつけたのかもしれない。
初音は半開きになった診察室へのドアに近づく。
すのこが置かれ、下駄箱が並んでいるのは、ここで靴を脱げという意味なのだろう。
が……、
迷ったが、初音はそのまま上がった。
無人の町で靴を脱ぐのは怖い気がして。]
[声や気配のする方へと進路を取った飼い猫は、茂みを通り抜けて別の道路へと出てくる。
そこにいたのは数名の男女。
診療所の方にも気配はあるよう。
飼い猫はその中の黒髪の女性へと近付いた]
「にゃあん」
[気紛れに使った力はこの女性へと向かったらしい。
一言鳴いて、ウミへと伝えようとしたが、奇妙な感覚が返って来て耳をピンと立てる。
きょろきょろと辺りを見回し、男女の一団から離れ行き、何かを探すように彷徨い始めた*]
[短い廊下の先はカーテンで区切られていた。
手前から少し覗いてみたが、予想通り診察室がふたつ、処置室がひとつ。
奥のドアの向こうにはソファとローテーブルが並べられていた。
患者が途切れると、ここで医師や看護師たちが待機したのだろうか。
初音は冷蔵庫に近づいた。
天井扇が回っていたので、電気は通じているはずだ。]
あれ...?
[なんとなく動きたくねーなって、ぼーっと海を眺めてたら、また一瞬歌が途切れた]
また、か?
[兎のまくしたてた台詞が蘇る、狭間に落ちちゃった、誰か......
がさり、と胸元で手紙が音を立てた]
『見つけないで』
(探しに来て)
[歌声の途切れた隙間に、入り込む、こえと、コエ]
......やっぱ、人探すか。
[鍵と螺子を探す気は起きない。けど、巻き込まれた人間が知らないうちにどーにかなっちゃうとか、ちょっと笑えねえ。
笑えねえんだよ、ほんと]
[流木から立ち上がって、街の方へと引き返す。多分、あっちに人がいるって気がする。
勘だけど.........なんかこう、匂いみたいなのがすんだよ。
人に会ってどうするかなんて、まだ決めてねえけどな*]
[パオリンと紅葉、二人に向けた問いへの答えはどうだったか。
自分の耳──というか、意識には、相変わらず歌が届いている。
懐かしさを帯びて響くそれは、今どこでどうしているかも知れぬ者──『一族会議』とやらの決定で別れさせられた者のそれと重なって。
それが、捜したくない、捜させたくない、という思いとするりと結び付いていた]
…………。
[ふる、と首を横に振る。
話の途中、一瞬意識が浮いたのは暑さのせいか。
いずれにしろ、浮いた意識は歌声に浚われて]
…………。
[何となく、呼ばれたような気がしたのは、やっぱり暑さのせいだろうか。
ともあれ、からん、と下駄を鳴らし。
朝顔が呼ぶよに揺れる方へ向けてある気だした。*]
[同じくらいの年かな、なんとなく、最初に会ったのが女性じゃなくて良かった、て気がするあたり情けねえ。]
兎に無茶振りされてるって意味なら、御同輩ですかね。
[なんとなく営業用スマイルで、近付こう、として、足が止まる]
『見つけないで』
(見つけたよ)
.........あんた、
[近付きたいような、逃げたしたいような、微妙な気分。
なんだこれ?]
[がさりと、また胸元で手紙が音を立てた。俺は息を整えるように吸い込んで、足を踏み出す]
俺は、我邑夏生...
ここで会ったのは、あんたが初めてなんだけど......
[とりあえず、自己紹介だろ、ここは、ああ、けど...]
.........あんた、鍵か螺子、持ってないか?
[いや、ストレートすぎるぞ、俺!*]
……てぇ……はい?
[鍵と螺子、それは兎の捜し物で]
いや……持ってるくらいなら、探す必要は……。
[ないでしょー、と軽い口調で言いかけて。
ふと、生じた疑問。
持ってるなら探さない。
探そうという気になれなかったのは、持っているから、だとしたら]
あー……。
[ふる、と首を横に振る。
なんだか頭の中がごちゃっ、としてきた]
ていうか、そこでそういう直球投げてくるそちらさんこそ、どーなんですかと。
[少し思考をまとめる時間が欲しくて、返したのはこんな問い返し。*]
いや、その...
[そりゃそうだ、持ってるなら探す必要ねえよな...あれ?]
兎が、誰かが持ってるかもって言ってたんで、つい......
[ここは謝っとくとこだろ、なんか疑ってるみたいに聞こえたに決まってるし、て、思ったんだ、思ったんだけどよ]
.........俺は、良く判らないんだ。
[問い返されたら、ほんとに判らなくなった。あの歌と、こえと、コエ...
近過ぎて、遠すぎる...]
いや、すみません、わけわかんないですね。
[なんとか浮かべた笑みはぎこちなく見えただろうと、自分でも思う**]
……なあ。
探されたくない、見つけないでほしいって。
そう、思うのには、なんか理由があると思わん?
[口にしたのは、多分、聞く方にはかなり唐突な言葉]
その理由が、はっきりせんと。
……無理に見つけだしても、また、ループするだけのような気がするんだよね、俺は。
[言いながら、懐に手を入れる。
鎖を通した、未だに処分できずに持ち歩く名残を軽く、撫でて]
兎が言ってた、時計の主……だっけ。
『それ』は、『何で』沈んでるのか。
それがわかれば、なあ……とか。
そんな事思ってたりするんたけど、これ、おかしいかね?
[相変わらずの苦笑いのまま、こんな問いを投げかけた。**]
─ 診療所 ─
[夢を見ていた。
海岸に立って波打ち際を見つめていると、
どこからか白い霧が立ち込めてきて、なぜか自分はこの海の上を歩けると確信する。
そして、波の上に足を乗せる……。
海の上から振り仰ぐと、崖と灯台と青空が眩しかった。
でも、自分はもうあの場所へは行けないのだと思った。
舞台やTVドラマのスモークの演出よろしく、初音は霧に包まれる。
白すぎて何も見えない。
そう思った瞬間、落下する感覚に全身が総毛立った。]
[海に落ちたのだ。
青、青、青。
叫ぼうとして、初音は気づいた。
自分が処置室のベッドで上半身を起こしていることに。
眠っていたのは数分か、数十分か、あるいはそれ以上だろうか。
動悸のおさまらない胸でヴァイオリンケースをぎゅっと抱え、背中を丸めた。**]
[この世界に来てからどれくらいの時間が経過したのだろう?
それとも、時間が停まっている世界なのだろうか?
初音はのろのろと動いてベッドから離れた。
頭痛は少し残っていたが、寝る前よりはずっとましだ。
天井扇からの風のおかげか、悪夢を見たにしても、気分はそう悪くない。]
落ちついて……大丈夫……
[深呼吸をしながら、自分に言い聞かせる。]
[濡らしたハンカチを額に当てて、初音は顔を上に――天井扇のゆるやかな風に向ける。
兎の口ぶりでは時間がなさそうだったけれども、
出会ったウミ、パオリン、ゼンジの3人はちっとも急いでいるふうではなかった。]
誰かがこの空間を消したがっている……?
でも、この空間が何のため存在するのか…わからない…
[兎の言葉を全部信じるわけにもいかないと思う。
そもそもの元凶は兎かもしれない。
呼びこまれた人間が右往左往するのを、どこからか眺めて面白がっているのかも。]
[結局、確かなことは何一つわからないのだ。
キーワードは、『鍵』、『螺子』、『時計』、そして]
……海?
[そういえば、青い波の幻覚を何度も見た。]
海に……何かある……?
『鍵』か『螺子』が…………?
[思いつきだったが、手がかりもない現状、
場所を絞って探すしかないようにも思える。
初音ひとりが海岸へ行ってそうなるわけでもない気はする。
するが、このまま診療所にいるのも落ちつかない。]
[初音は待合室のベンチでヴァイオリンを取り出した。
あの暑い日射しの下を再び歩くと思うだけでうんざりする。
自分を励ますために、1曲、好きな曲を弾いておこう。
アストル・ピアソラの『リベルタンゴ』を弾き始めた。**]
......理由、知りたいなら、海に行くといいかも。
あそこに沈んでます、きっと...
[あの歌は、あの海の底から聞こえているから*]
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