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こうなっては……
一層早く儀式を済ませなければ、なりませんね。
[家屋に着くと隅の懐中電灯を一つ点してその側に座り、地図と測定結果のかかれたメモを見つめ、思案し始める。
そのうちに*眠りに就いて*]
[起床して少しすると外に出た。白く染まる地面を踏みしめ、静かな村中を歩いていく。左手には傘を、右手には30cm定規を持ち]
……はあ。
[吐き出す息は白く濁る。周囲に目を向ければあちらこちらにハナミズキが見え]
? ああ、貴方は……
[かけられた声に振り向き、ビセの姿を見る。管理棟で会った記憶のある彼女に、まず一礼し]
はい。雨園孝治、と申します。
どうも、おはようございます。
[呼ばれた名前を肯定してから、挨拶をした]
備前さん、改めて宜しくお願いしますね。
[傘について問われると]
ええ。これを手放すわけにはいかないんです。
彼らの攻撃を防ぐために……
この黒い傘は必要なんです。
完全に防ぎ切るというわけにはいきませんが……
[頷き、やはり彼らにまつわる説明を]
チョコ……? どうかしましたか?
[ビセの呟きと、どこかきょろきょろした様子に、首を傾げ。軽く周囲を見やってみたが、ハナミズキ以外に妙なものはなく]
そう、名も知れぬ強大な存在を……
僕は仮に「彼ら」と呼んでいますが。
彼らは宇宙に在り、僕らを攻撃してきているんです。
この異様な現象も……
まず間違いなく、彼らの直接攻撃か間接的な攻撃、影響によるものでしょう。
村に伝わる伝承というのも、恐らくは……
[真実、と言いかけたところで、ふいに空気のそれとは違う微かな冷たさを感じ]
[冷たさについては気のせいだと思う事にしたのか、ビセに向き直って]
ええ、存在は確かでありながら、実態を掴み切れない……まさに人知を超えた存在であるから、彼らは恐ろしいんです。
[声がする、と始められた話には少しく瞬き]
先程から、時々……ですか。
そうですね、元々でないのなら……
この現象と関わっているんでしょう。
怒ったような……?
何と言っているのか、聞き取れますか?
[興味を持ったように問いかけ]
幽霊に……力を。……霊、なんでしょうか。
宇宙とも現とも繋がり、同時に遮断された……
霊界。そこから他を覆い、他からそこを覆う脆い垣根は、時として破れ去る事がある。
[動いているという気配には、つられるように辺りへ目を向け。頭を下げるビセに、礼をし返し]
ええ、此方こそ有難う御座いました。
[ビセの言葉にハナミズキを一瞥し、また、とその姿を見送る。彼女の後を追う姿には、当然気が付かずに]
……さて。
[手にした定規で、ゆっくりと測定を*し始めた*]
[ビセと別れてから、しばらく経った頃。測定をしながら遠回りをする形で、管理棟――正確にはその裏にあたる場所に辿り着いた。
暗さを増す周囲。ぼんやりとした中で雪とハナミズキだけが奇妙に目立つ]
……
[空を仰ぎ、近くに見えた井戸の方へと歩み寄り]
[井戸の傍に立つと、その中、周囲の闇より更に深い闇を覗き込み。少時そうしていたが、後ろからした声に]
……? ああ、貴方は……
はい、今晩は。
僕は……井戸を覗いていたんですよ。
[振り向いてバクの姿を確認しては、問いかけに見たままな答えを返し]
見えますよ。見ようと思えば……
彼らの足跡が見える。
青く……赤い、やはり早くどうにかしなければ……そう、思うような。酷く強い、暗い、光が。
[隣へ来たバクを、一瞥して]
――怪物と戦う者は、その過程で自身も怪物とならないように気を付けなくてはならない。深淵を覗き込む時、深淵もまた此方を覗いているのだ――
……僕も、日ごろ胸に刻んでいる言葉です。
この季節にハナミズキが咲き乱れる。
刹那に、手品か何かのように……
そうですね、自然には、有り得ない事です。
[また井戸の中を覗き込みつつ]
ええ。彼らの存在に気が付けた者の役目を遂行しなければなりません。
彼らの存在を知らしめ、また、自身でも立ち向かっていかなければ。
だから、その途中にあるべき苦難を、厭いはしません。
何かを変えようとする者は……
幾ら正しくとも、初めは少数派であり、奇異の目に晒されるというのが、世の常です。
理論でも、思想でも、科学でも……決まっています。
……それに、痛みには、慣れています。
[最後は独りごちるように。
傘を持つ左腕を、右手で軽く握った]
[応援する、というバクの言葉には、小さく頭を下げ]
有難う御座います。
[静かに礼を言って、右手を左手に添えるようにした。両手で傘の持ち手を握り]
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