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……俺は編集者であって、
記者じゃないし、作家のアシでもないんだがな……
[ぼやく口元から白い息が空気にまぎれる。
締め切りに追われる作家を激励にいったはいいが、どうしても気になる“噂”があるからたしかめてほしいと缶詰状態の作家に懇願されてしぶしぶ横丁へとやってきた。
なにせこの気掛かりが解消されなければ筆が進まないと言われてしまえばどうしようもない。
作家が口にした“噂”は編集者も話のネタとしては知っていた。
気にならないといえば嘘になる程度に気にしてはいたけれど――]
[編集者が足を踏み入れたのは、古臭さがそこかしこに残っている路地。
錆びた看板があれば、青いポリバケツが無造作に置かれていたりもする。
そんな路地に視線を運らせれば、ふと香ばしい匂い>>11が路地を行く風にまぎれて届く]
――焼き鳥、か。
[“噂の店”の近くに何があるのか。
それもまた噂として流れてはいたが、その内容は様々で。
噂を口にする人によって変わるものだから何があてになるのかすらも不明だ。
噂のあやふやさに、ため息を隠すようにずれた眼鏡を押し上げる。
言葉をかわす二人の人影は見える距離にあるが――]
焼き鳥屋の角を右、小さな社の先……だったか。
[鼻腔を擽る匂いで思い出した噂の一つに気をとられ、二人の会話は耳に届かない]
[緑のネクタイは幾分くたびれている。
抱えた書類袋を持ち直して、路地の先を見る。
会話をしていた二人のうち、一人が紙片を取り出した後歩き出すのは視界に入った。
約束を果たしたいという男の声がようやく耳に届く。
他に路地を行く人もいるのが見える]
……寂れた路地だと、聞いたのだがな……
[人っ子一人いないイメージがあった。
思ったよりも人が居るのをみやり、噂の聞き込みをするか否か。
*しばし考え込んだ*]
[通りがかる人よりも、店を構えている店主に聞くべきかと。
良い匂いを漂わせている焼き鳥屋を見た。
焼き鳥屋の暖簾をくぐるときに、帽子とマフラーで顔を隠した人を見かけて一度視線を向けた。
芸人をいつか雑誌に載せたことがあったかもしれないが、顔を隠されていればそうたやすくは気づかない。
どこかのビルの一室に明かりがともったようで、路地裏にまた一つ光源が増えたのを背に、焼き鳥屋へと入った**]
[焼き鳥屋の中はそれほど広くはない。
客はまばらにいるだけにみえる。
店に入ったときに聞こえた威勢のいい声>>35に自然と目が向き]
……
[女性一人、というのも珍しい気がしてついそちらをみた。
生憎、翻訳関係の書籍は担当違いのため、翻訳家の素性には気づかない。
編集者に気づいた店主が声をかけてくれば、一つ頷きを返し]
あー……そうだな、ももとかわを塩で一つずつ。
それとウーロン茶をくれ。
[通りに居を構えているものにとってはどんな噂になっているのか。
尋ねる前にとりあえずの注文をしてカウンターの空いている席に腰を下ろした]
[あきらかに酔っている口調の女性がまた一つ注文するのを聞く。
店主は慣れた様子で相手をしていた。
注文したものが左程間をおかずにでてくる。
ウーロン茶を口にして喉を潤したときに、酔っ払い独特の口調で尋ねられた言葉に僅かに眉を寄せた]
ひげのおっさん……まぁ……いいが……
常盤緑か。あれはたしか、英語でもそのままになるんじゃなかったか……?
[ひげのおかげで年齢が上に見られるのはいつものことだが、おっさんという呼びかけには少し肩を落とし。
酔っ払いの問いかけとおざなりにせずに少し考えて答えるが、英訳関係はあまり詳しくはない。
首をひねりつつ、翻訳家のほうへと視線を向ける]
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