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アンコがここに来たばかりの今なら、こちらとあちらの壁もきっと薄い。
[そう言いながら少しだけ不安げに、鳥居を見上げる。
何かを確認して、戻す視線は永嶋に。]
永嶋さんが望むなら、絶対に戻れる。
[一歩踏み出し、今度は両手で一度離した手をぎゅっと握った。
何かを念じるように目を閉じてから、その手を離す。]
[固いなにかが落ちる音に、あちらの世界を振り返る。
鞘に収められていたはずの短刀が、曇り空の下鈍く光っていた。]
先生、駄目だよ。
[聞こえないことなど忘れて叫んだ。
声が届かないのがもどかしい。
自分はここに居るのに。
雨の気配を漂わせ始めた空を見上げ、空彦を庇うように隣に駆け戻る。
聞こえる鬼の声(>>*5)は駄々をこねる子供のよう。
どうすれば良いかわからなくて、顔を歪めた。]
消えなくて、消さなくてもいいの。
消えちゃ駄目。
消えるくらいなら、
[そう言って、木刀を握る空彦の手を引く。
届かない筈の手が、温もりに触れた気がした。]
“こっちへおいで“
[そう囁いたのは誰だろう。
雨音が*聞こえる*。]
消えてしまえ・・・
それが 何百年、何千年も ずっと
俺達を見守り続けたものの言葉ならば
消えた先になにがあるかわからないけど
それだけの事を自分達はしてきたのではないか・・・。
[自分たちの消し去ったもの。
青々とした緑が茂る大きな山や野原。
魚がたくさん溢れていた綺麗な小川を想う]
[空彦の話を聞いても、鈴の音に耳を傾けても、
狐も、鬼も、理解はできず。
する必要がある対象とも思えなかった。]
あの先生も吉野さんも、あたしは止められない…。
神様を憎むこと、
吉野さんを人身御供にすることに対して
正しいとか間違ってるとか……言えない。
出来ることは、二人を想って祈るだけ……。
[夢をみよう。
なぜかその一文が鮮明に浮かんだ。]
[石段を駆け上がって着いたところで身体を半分に折って息をする。
普段やらないことをするからなんだが、顔を上げれば人の輪があった。]
――――――……。
[先ほどの赤い木刀が降り下ろされようとしている。
見知った先生の手にも何かがあるように見えた。
白いワンピースの少女が飛び込んでいくようにも見えた。]
――――――…。
もう、理由なんてめんどくさい……。
隠したらダメなんてことは、幼稚園でも習うことじゃん…。
理由があればいいなんておかしいよ…。
[その騒ぎがどうなるか分からないが息を整えてゆっくり*近付いていく。*]
[また、『神隠し』にあった人が増えたようだ。
どこからともなく、そんな気配がした。
暫くふらふらとあちこちを見て周って、最後に神社へとたどり着く]
ま、神隠しってーのなら、ここにこないと始まらないんだろうけどな…
[神社の方からは、何かしら不穏な空気がする]
…どうしたもんかねぇ。
[気配に気おされたか、入り口で*戸惑っている*]
騒がしいですね。
[神社入口に佇むゾウサクに後ろから声をかけ、先に進む]
ねえ、バク君は「寂しい」って思ったことある?
[見上げて、少年の姿を*探した*]
うむ。
そうだったら、残された者が困るという事もないだろうな。
全て弾けて元に戻るのなら良いのだが。
[聞こえるか、というペケレに頷き]
ああ。私には、少々曖昧に聞こえるが……
バク、か。
[その呼び名を呟く。神社に行こうというのに、そうだな、と応え]
[神社の入口まで来ると、ゾウサクに一礼し]
先程ぶり、ですね。
[騒がしさが伝わってくる奥の方を見やる。それから、神社の中へ*向かったか*]
[躊躇いは無かった。
飛び込んできたプレーチェに気づくと小刀から手を離し、体をひねり、彼女の後ろに回ると、背中を突き飛ばした]
怪我をする。あなたに何かがあったら、教授は悲しむ。
それに…私は、プレーチェを消す覚悟なんて出来ていない。
[ヨシアキの木刀は避けきれず、右肩をしたたか打ち付けられる]
ごめんなさい…私は先生じゃない。
私は神の使いでもなんでもない、神様の言うとおりとも思わないし、神が滅びればいいなんて思わない。ただ、空の上から見ていればいい。
細い路地とつぎはぎだらけの町。
木なんて公園か神社にしかない。どんどん壊されて新しい物が作られる場所で育った…神様なんて見えない。聞こえない。
わがままで酷くずるくて身勝手な、どこにでも居る当たり前の人間。
私が今こうしているのも、誰かの為なんかじゃない。
そうしたいと思ったからそうしているだけ。
話し合いで、譲り合える、ことならばそうしていた。
[本人が選ぼうとしてたのはほとんど脅しだったが]
だけど、話し合いで済まないなら……痛みを感じなければ分からないなら、それを使うまで。
っ!
[背中を突き飛ばされて、前のめりに思い切り転んだ]
[膝を軽く擦って、痛みに顔を顰める]
……、老先生。
[教授の笑みが脳裏に過ぎる。
あの人は優しいから、きっと悲しむだろう。でも、]
私のこの体は、いつか消えなきゃいけないから。
……ううん、消えるんじゃない。戻るの。
“あやかし”がただの蛍に戻るだけ。
[起きたことはどうにもならない。
そう分かっていても、考えてしまうことがある。
例えば、声が聞こえることを、ここの世界があることを、もっと早く伝えていれば。
光野が、ネギヤが呼ばれていることを、伝えていれば。
今、石木先生と空彦が確信のないまま刃を握ることは無かったのかもしれない。
こちらの世界の言葉、神様の望むことを、ちゃんと聞いて伝えていたら、神様は、こちらの世界に皆を引き込まないでも、済んだだろうか。]
神様は、空彦くんのこと消えて欲しいなんて思ってないよ。
[神の使いなんて嘘だけれど。
神様の答えは聞いていないけれど、そう言った。]
神隠し、とよばれたモノは
どこまでそれを続けるつもりか・・・
忘れられる事がなくなるだけ?
寂しさが埋まるだけ?
時の流れから・・・
村すべて 包み込んで消すつもりなのか
……一体何のつもりなんだろ。
暴力で全部片をつけようだなんて……
野蛮だし、そんなの時代遅れじゃない。
[嘆息。
自分が消えてなければどこまで介入できたのだろうか]
神隠しは、消してしまうことじゃなくて、ここに居て欲しいから、起きるんだよ。
[木刀を握る空彦の手を引きながら、必死に話す。
帰れないかもなぁとふと思った。
子供の頃、神隠しにあった時、一緒に居た父親は戻ってこなかった。
何故かは覚えていない。]
――――――…。
[近づいて足を止める。]
なんなの…コレ…。
意味分かんない。
なんで先生が攻撃して、攻撃されてんの…?
[少し離れたところで呆然と見る。]
[多くの声がする方に向かうと、そこには緊迫した空気があった。消えた者の姿も幾つかあった。来たばかりで詳しい事情はわからなかったが、「あちら」にいる者が攻撃し合う様子に]
……皆、あまり怪我をしないと良いのだが。
[呟く。どこか場違いなものだったかもしれない]
[こちらの世界とあちらの世界、二つの世界で別々に交わされる声を聞いて、ふわりと音もなく地面に降り立った]
消えて欲しい、と望む人はいないよ。
[戻れなくても、まあいい。
家族や、安子、白銀、ここに居た皆は見えなくても自分のことを忘れないだろう。
光野なら、自分の声を聞いてくれるかもしれない。
降り始めた雨の音と、握った手に気をとられていたから、光野もまた、同じことを口にしてるとは気がつかず。
鬼面に落ちた雨粒を拭うように、触れた手を上へと伸ばした。]
立木?
[ニキの声が聞こえて振り返る。]
こんなところ お前来るなよ・・・どっか 遠くに
[そういって]
なんで こんな事になってるんだか 俺もよく理解できないけど・・
人とそうでない物はどちらも幸せに共存はできないらしい・・・
[ぎゅうと拳を握る]
>>100 先生!
吉野さんを殺して戻ってこなかったら・・・
もし ヒトデナイモノのせいなら・・・
次は 彼女を排除できるのか?
どんどん 人間が生きるためにすべてのものを排除していいのかよ・・・
[短刀を手に、ザクロが再びヨシアキへと向かう]
[動きたいのに、痛む足が咄嗟には動いてくれない]
[せっかく人の体を得たのに]
[結局、なにもできないのか]
……っ。
[ザクロから言葉を投げられて、小さく息を呑んだ]
おいで。
こっちへおいで。
[口をついた言葉は、いつも聞いていたもの。]
欲しいのは鬼だけ。
空彦くんはいらない。
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