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― 居間 ―
[手当てしようにも。
もう、包帯も薬もないことを悟った]
クレスト……
[目を閉じたクレストの前に、佇む]
[触れようとした手は、透ける。
見えていない、聞こえていない]
[ はい、かいいえ、か。首を振るだけで済む。
そこから始まった、受け応え。
梟の木細工を貰った。
勉強した字で、御礼の手紙を書いて送った。
ニルスには、これでいいかとそわそわしながら手紙を添削してもらった。
二人で初めていったお祭り。
まだ早いと周囲には言われながら、ユノラフに進められるがままに酒を知った。
魚を持っていくのが楽しみになった。友が手に豆をつくって育てた野菜を受け取るのが楽しかった。ちゃんと出来たと自慢げに目を輝かせる友の顔を見るのが好きだった]
[生まれるがまま朽ち果てると思った、田舎の村暮らし。
一人遅く、取り残されてゆく。抱いていた覚悟。
それが変化したのは。
当たり前だと思っていたことに、いちいち新鮮に、驚いたり、笑ったりする、彼がいたからだ]
クレスト。
お前が、この村に、来なければ…
おれは、つまらないまま、くたばってた。
お前は、生き続けて、くれ
おれの人生の中で、かけがえのない
大事な、友だから!
こんなことで、失われ、ないでくれ…!
[イェンニから、こういう時、どう祈ればいいか聞いておけばよかったという後悔。
ただ、動かぬ彼の前で、両手を合わせて、こっちに来るな、と、何度も何度も口の中で繰り返した**]
[友の意思を耳にして]
[泣き出しそうな顔で祈りを唱える表情が、壊れる]
[友が最後に抱く男の顔は、血にぬれた傷に抉れて亜ものではなく、泣き笑いの表情だろう]
[広間へと優しい陽光が差し込まれ――閉鎖空間は消失する]
[人ならざる化物も、死してなお未練を残すものも、ともに、日常への回帰とともに消えた**]
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