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[前にこの村を訪れたのは田畑に水が入る頃だった。
灰色の土へ清水のしみゆくなんとも言えない気配と、
真っ青な五月晴れの下のけるるんくっくな大合唱。
めずらしがりの弁護士は、話のついでに誘われた
祭りの時期を忘れもせずにまた村を訪れている。]
だったら、
今時の人は なんて呼ぶんですか? ネギヤさん。
[祭りの準備に吊るす提灯には、
蝋燭でなく電球をねじ入れた。]
それとも…… もう、
ひとは雲を名づけたりはしないのでしょうかね。**
―― 神社の境内 ――
[木々へ渡した麻縄を数人がかりで引っ張ると、
頭の高さに吊るした提灯たちがぽうんと跳ねた。
次第に集いくる人々。時は夕刻へ差し掛かる。
めずらしがりの弁護士は、竜吐水の頭を撫でる。]
[ ばるるん、ばるん。 ]
[わたあめ屋台の裏で、店主が発電機の紐を引く。
旧式のぽんこつを叱咤する声混じりのその音が、
とてもいい、と雛市ヒナは唇の端を持ち上げて。]
ああ、はじまりますねえ。
[前回に訪れた際に見知った人にも見知らぬ人にも、
こんばんはあ、とすこし早いあいさつを*投げた*。]
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