情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了
[1] 絞り込み / 発言欄へ
[女は、生きていた。
謎の生き物に捕まり、肩と脚と腹部から血を流すことになってもなお]
……ふ、もっとあっけないものかと――――…。
[眼鏡を通さない眼で、白みゆく空を眺める。
銀の懐中時計は、片手に持ったまま。顔の前に持ってこようとして、力を失いつつある手から、ぽろり、滑り、落ちた]
…………。
[思い出す。いつかの]
[些細な出来事。
前に、相棒がこっそり、女の腕時計を3分遅らせていたことがあった。
これなら3分遅刻しても、女の時計上では待ち合わせ時間ちょうどを指しているから、遅れたことにはならないと屁理屈をこねて]
時計を遅らせれば、―――、なかったことに――る?
「ならないよ。」
[その時、女に応えた相棒の声が、「いつの」ものなのか、
知る術は、ない**]
[やがて。
完全に動きを止めた女の身体の横で、女と同じ姿をした霊体が、ひそりと立ち上がった]
ふふ、………生と死の境界を越えたみたいだけど、
結局何も変わらないのね。
[霊体は滑るように死体に手を伸ばす。
その顔に眼鏡がかかっていないことに気付くと顔をひそめたが、]
まあいいや、なくても“視えてる”みたいだし。
あの眼鏡は他の人にくれてやりましょ。
ソラはどうなったのかな。
もし私と同じになってたら、時計がなくても時間を正確に測れるようになってたりして。
[もしも同じになってなかったら? ――考えたくはない。
いっそ時間を戻せたらいいのに、と。血の気のない顔で想像を廻らせる。
死ぬ間際に聞いた声のことは、既に忘却の彼方]
[そうして。
霊体は彷徨うのだ。
相棒の姿を求めて。
異界の裡に覗く、さらなる異界との境界を“見る”ことだけを願って。
そうして、輪に囚われたる女の魂は。
永遠に、えいえんに、同じ時間を廻るのだ。
*境界を“操る”ことを願わぬ限り。*]
[1] 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了