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──そう言えば、あの時バク君は……。
[帝都に帰るための汽車を待ちながら思い返すのは、自警団にもう一人の人狼だったらしい少女が連れて行かれる前に、少年が言いかけた言葉。]
あの子は、人狼ではなかったのだろうけれど、「何か」が出来る子だったのかもしれないな。
[詳細な事情はわからぬが、自分の何かに不安を抱いたのかもしれぬ、そんな気がした。]
さて、帰るはいいが……。
[自分が作る雑誌そこのけな事件を見てしまって、職場に戻ってから元通りの仕事ができるのだろうか、そんな不安が一瞬よぎる。
この土地に来た原因であった症状は、元々心の疲れが身体に出る類のものだったのだが、皮肉な事に、事件以降影を潜めている。逆療法という奴だったのだろう]
──あ、そうか。バク君に。
[勤め先を教えていたのを思い出す。]
あの子がもしも訪ねて来てくれた時にいないのは──拙いな。
[今回の一件は、自警団から口止めを厳命されてしまっているため、当面仕事に活かすつもりはない。]
だがまあ、江戸川端先生あたりは、聞きつけているかもしれないな。私が関わっているとは知らずに、調べろとか言い出すかもしれ──おっ、と。
[雑誌に寄稿している、変わり者の作家の事を思い返していると、汽笛が聞こえた。]
[乗り込んだ汽車の窓から見える森。]
──あそこだったのだなぁ。
[走り出す汽車。
青空の下、木々の豊かな緑は遠目には黒く映る。
そこから来た何物かの事を思いながら、遠ざかる森と村を目で追い続けた**。]
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