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ねぇ?メイ、あそこにデボラお婆ちゃんがさっきまであそこに…
[振り向いて話しかけた相手もすでに消えていなくなっていた]
な…んで?
―溶けた雪のように―
[は、と祈りを止めて顔を上げる。揺り椅子には毛布が掛けられているだけで]
……御慈悲を…。
時間という名の御慈悲をどうか…。
[その場にへたり込んで、先まで揺れていた椅子の動きが止まるのを呆然と見つめていた]
[ウェディングドレスをヒューバートの作業机に置くと、へたり込んだシスターの肩に手を置く]
ねぇ…ステラ。私たちどうなってしまったの?
死んだはずじゃなかったの?ここは天国?貴女の神様はなんて言ってる…の?
どうして、メイたちは消えてしまったの…?
[青い顔で立ちつくしている]
[キャロルの手に我に返り、ぎこちなく笑って見せた。それは上手く出来ただろうか]
…確かに、私達は死んでおります。
ただ…本来ならばこの魂は直ちに主の御許へと誘われるのですが、強い何らかの思いがこの地に私達を留めているのだと思いますわ…主もその思いを叶える事を一時お許しになられたのでしょう。
しかしそれは生命の法則から離れた事、主もいつまでもお許しにはなられないでしょう。
…先程ユージーンさんも仰っておられましたが、時間はあまりないと……私も思いますわ。
デボラお婆様やメイさんが消えてしまったのは…申し訳御座いません、私にも解りませんの…。
ただ、単に時間だけの問題ではないようにも思えますの。
[落胆してはいるものの、饒舌に語る気力だけは残っていたらしい。真っ直ぐにキャロルを見上げて答えた]
[ステラの肩に置いた手に力が入る]
願いが叶うって叶える為の時間だって、じゃあ、メイもお婆ちゃんも願いはかなったって言うの?
…ただ無作為に消されたみたいじゃないの!!
勝手に蘇らせて気まぐれに消すの?!
神の悪戯にしてもひどすぎるわよ!!
[憤った声が部屋に響いた。
一瞬の後に我に返り、顔をそむけると小さな声で呟く]
ごめん…ステラ。貴女に言ってもしょうがないのに。
[肩に強い力がかかるのを、堪えるように眉を歪ませて]
…主の御考えはいくら聖職者と言えど、人という存在である以上全てを理解し汲み取る事は不可能ですわ…。
でも、不安な思いをさせてしまうような事を言ってしまって…申し訳御座いません…。
[再び俯いて、握ったままの十字架を撫でた]
─集会場、厨房─
[桶で、珈琲色に染まった布巾を洗う。
ざばり、と、水を流して、]
……、
心残りがあるなら、行動にうつせ──
とは、言ったものの。
[熱さ同様、寒さも感じていないのか、
作業的に水を流しながら男は首を傾げた。]
…さて。
…… 身体が残らないんじゃァ、
埋められやァ…しませんし
[何かを思い出すように、男は手元を眺める。]
おれの、
あんときの気持ちは、
"弔いたかった"、ってのとは違って、
[無言で首を振りステラの傍を離れ]
父さん、ごめんね?
もっと早くこんな村から連れ出してれば、こんな村に戻らなければ私たち幸せなままでずっと暮らせたのに…。
[ドレスの前で茫然としているヒューバートに歩み寄り、その肩を抱きしめる]
新しい家族が増えて、あの人と 父さんと 私と―…。
[続く言葉は声にならず、ヒューバートの肩に顔を預け疲れた様に目を閉じた**]
幻なのかも…、知れないね。
[周囲の話に、ぽつりと呟く。
そうして、生前見ることのなかった…出来なかった
──この手が煙にした、純白のドレスを手にした父娘の様子を見遣った。]
―回想、広間―
>>2:130キャロル
[ドレスを当てて回る娘を見つめながら]
ああ、本当に似合っている。
[幸福な時間。ふと不安がよぎる]
(もしここが死後の世界なら、キャロルも死んでいるのだろう。
だがもし、ここが死んだ私の見ている夢ならば……キャロルが傍に、いない。
―――キャロルに無事でいてほしい。
―――キャロルの傍にいたい。)
[どちらも本心だった]
[フッ、と何かが流れる気配がした]
…デボラさん?
[老婆の姿はなく、ゆっくりと揺り椅子だけが揺れている]
>>2:122
『長続きはしない』……こういうこと、なのか……。
>>9キャロル
キャロル……。
お前のせいではない。
私が、父さんがお前を守ってやれなかったから……。
[キャロルを抱きしめ返す]
キャロル、この時間は償いのために与えられたのではないかと思う。
お前を罵声から守れなかった、まだたったの15歳だったお前を独り彷徨わせてしまった……。
お前を守れなかった不甲斐ない私が父としてもう一度やり直すための……。
(例えこのぬくもりが幻だとしても……)
……、…そっか。
[空の揺り椅子とメイのいた場所を、ぼんやりと見た。
2人が消えたことに驚く風もなく、悲鳴を聞く風もない。]
────……。
[揺り椅子に歩み寄り、毛布を手に取る。
温もりが手に触れた気がして、僅かな時間俯いた。]
『……どうして、今…』
[何故、と。
向けるべき相手は本当は──誰に向けるべきものだったのか。
ポケットに入れた、小さな紙切れ。
渡したかった、小さな紙切れ。
───今、渡しても──…だろう。
そうして、かさりと奥へ押し込める。]
『もう帰るよ…』
[結局、暖かな皿に手をつけることはなかった。
皿からは、とても、とても暖かな湯気が立ち上っていたけれど。
暖かな記憶。
兄と慕った、大切な記憶。
詩を、うたを。
もう一度聴きたかった。
──遠い日の、雪解け前の記憶。**]
寂しく、なってしまいましたわね…。
[キャロルがメイに問い掛けた方、一際賑やかだったはずのその場所を振り返る。]
でも…あの時のように辛くは、ありませんわ…。
今度こそ、きっと。
お2人は主の御許へと誘われ、この出来事の意図をお聞きになられているのですわ。
[そっと目を閉じてメイとデボラの面影を思い出し、祈った]
―回想・いつだったか過ぎた日の教会―
えっ…?牧師様、本当ですの?彼が…コーネリアスが帰って来ているんですの?
[ぱ、と解り易すぎる程に明るくなる表情に牧師は苦笑し]
『だがまたいつ旅に出てしまうか分からない。じきに丁度あの集会所へと行くだろうからきっと逢えるだろう』
本当ですの?
あ…申し訳御座いませんわ、私はお勤めが御座いますのに私事ではしゃいでしまって…。
『はは、そうだね。そちらの方は長く掛かるかも知れない、儀礼用に大切に持っているあの十字架は忘れないように。』
でも…牧師様が執り行わなくてもよろしいのですか?
私のような修道女が1人、お式のお手伝いだなんて。
『恐らく中心になって行うという事は無い筈、それならば大丈夫だろう。こちらは別の式を受けているので行く事が出来ないんだ』
[1人で派遣、という事態に一抹の不安はあったものの、どこかそわそわした様子なのは幼馴染にまた逢えるかも知れないという期待からか]
『そうだ…云いそびれた事があってな、ひとつ伝言を頼まれてくれまいか』
あらまあ、なんですの?
『―――』
[それはたった一言の、父としての願い]
(遅いかも知れませんが…私は伝えませんと)
[顔を上げ、顔をぷるりと震わせて思考を*元に戻した*]
―少し前―
[ゆらりと、一瞬きすると蝋燭の炎のように消えてしまった老婆を目にして、椅子を蹴飛ばすようにして立ち上がり、厨房へ駆け込む。
そこに居るはずの少女の姿はなく、代わりに墓守が一人、布巾を洗っている。]
―あ。
遅かったか…な。
あの子も。
結局>>2:67僕の呼びかけに、どんな顔をしてくれたのか…、見られなかったか…。
―――ん?
>>5 踊り子さん、いや、キャロル。これを見てください。
メイの使っていた、マグカップの中に入っていました。
[そこには一枚の桃色をした小さなメモ。
少女らしい、丸みを帯びた字で書かれている文字は
『皆大好きだよ・・・じゃぁね!』]
そしてデボラさんは最後に>>2:131「死んだとは思えない」と言っていましたね?
つまり僕は、生前の、はちきれんばかりに幸せな気分で、曾孫のセーターを編んでいた、あの頃に戻っていたのだと思うのですよ。
いささか勝手な解釈なのは否めませんがね。僕はそう信じます。
つまり…。私も目が覚めたよ。悔いを残したままでは死んでも死に切れない。
ハーヴェイ。まずは結婚おめでとう。
そして―、
何をそんなに怒っているのか、聞かせてくれないか?
理由は君を処刑にかけた事自体ではないだろう?
その前から、何故か君は苛立った様子だった。
何か他に理由があるんじゃないのか?
[と、真っ直ぐに青年の瞳を覗き込んだ。]**
[>>15ヒューバートの言葉に顔をあげ]
いいの?父さん。勝手に出て行った私を許してくれるの?
[そして父親に抱き締められその言葉に耳を傾ける]
償いの時間…。
私にとっても父さんへの償いの時間なんだわ。こんな村に一人残してしまった父さんとの。
[父親の手を握り>>24>>25コーネリアスの方へ顔を向ける]
こんなメモが?じゃあコーネリアス、メイは自分が消える事を知っていたって言う事…?こんな気軽な様子でなんて。
消滅するんじゃないのかも、知れないのね?ならきっと天国へ行けるのかも知れないわ。だって私たち何も悪いことしてないもの!
[少し明るくなった顔で、ね?とヒューバートに微笑む。無意識のうちに、あの人の事は考えないように思考に鍵をかけた**]
─集会場広間─
[発見されるメモをもって広間へ戻るコーネリアスの後について墓守の男も広間に戻り]
……おちびさんは…、
[ぼそ。とやはり何事か言いかけるも、
男は途中でやめて、口を閉じる。]
… おやさしい子でしたんで。
[ぼそ。と、一言だけそう付け加えて]
[影の側でまだ、誰かが座っているように、揺れる、
座るものの居ない揺り椅子を、
明るい声が掻き消えた場所を、それぞれ眺め]
……、…
ひとつ。
…いまいち…、おれには、
思い出せねえ事があるんですが。
[独り言のように男は呟く。]
[老女が編んでいた小さいセーターだけが、]
あのセーターは…
…ちいさい手にゃ、
…わたらなかったはずだ。
[──ぽつん。と、椅子の上に残っている**。]
―今となってはいつか解らない時―
[はらはらと。雪のように舞い散るのは林檎の花。
日曜の、礼拝に向かうような改まった服装で少女は目の前に居る。]
え―…。今なんて?
[聞こえているが、理解すらしているが。聞き返されて、生真面目に少女は繰り返す。]
シスターに…って。解ってるのか?それはつまり、「神の―
[花嫁」に、と続けようとして、17歳の少年にはいささか刺激が強い言葉で口篭もる。]
「牧師様と何度も話し合ったわ」
(親父…!)
「そしてこれは私の決断でもあるの」
[勢い込んだところに、穏やかに言われ、怒りが別の感情へと変化するのを感じる。]
「だって―、いずれあなたも、牧師様になるのでしょう?そうすればずっと、ずっと一緒に―…」
(頬にかっと血が上るのを感じる。)
「僕は牧師になんてならないよっ!こんな村に、閉じ込められるのなんてまっぴらだっ!」
(言ってから、しまった、と思う。
本当に言いたかったのは、そんな言葉…?)
(傷ついた表情に、いたたまれなくなって駆け出した。)
父さん…!ぼくを、僕を隣町の音楽学校に通わせて下さい!
(その足で、父親を探し出し、これまで何度となく出した要請をする。)
「神学校へ通う学費なら、出してやる」
(そしてまた、何度となくなされた問答。
その夜、僕は村を出た。)
―今となってはいつか解らない夜―
「こんな時間になんだよぅ、―ネリアスぅ」
[幼い頃にしていたように、楡の木を伝って、少年の部屋の窓から進入する。目をこする姿に、少し悪いと思う。]
なあこれ、―テラに渡しておいてくれないか?
「うん、いいよ。でもどうして?
あとで渡したらいいのに。───…コーネ……。」
いいから、頼んだぞ。
「……ねえ、どうして…」
詩の勉強、続けろよな!いいのができたら、曲つけてやるから!
(多分、遠い世界のどこかで。)
[それだけ言うと、するりと窓の外に抜け出す。]
(渡したのは大事な、母の形見の十字架。
そして僕自身の形見。
その時は、けっして故郷に戻るつもりはなくて。)
(彼女は僕ではなく、「神」を選んだ。
そう思って恨んでいたけれど。
実はそれしか、彼女には選択肢が無かったとしたら―?
彼女の「特別な」何かの故に。)**
… なに…。
[怯えたように繰り返す。
祝福の言葉に目を見開き、ポケットに片手を突っ込んだ。
かさり。
小さな紙切れが指先に触れる。
こくりと、喉が動いた。]
……、べつに。
怒って、な ん……。
『──今日の処刑は…』『…彼女のことを…』『……勉強、続けろよな!』『何で今──!』
[フラッシュバック][頭痛がする]
[こめかみに指をあて、一歩下がった。]
──……、自分のことを「殺した」相手なんて、恨んで当然だろ?(違う)だから僕は、僕──…
……コーネリアス。
[こうして名を呼ぶのは、いつぶりのことだったろう?]
……帰って、来なきゃ良かった。
あのまま、遠くにいれば良かったろ。
なのに、どうして─…
何であのとき、帰って来たんだよ…!!
選りによって……!
[ああ。
いつか遠い日に、やはり同じように彼に怒鳴ったことがある。
奇妙な既視感。]
あいつが、あんなのことを言い出して─…
[そうして、ギルバートをも睨みつける。
人狼の対策をと、言い出したのは誰だった?]
──…あんなことが、なかった、ら。
[純白のドレス。小さなセーター。
温度を持たぬはずの手が、白く揺り椅子の背を掴む。]
―回想 いつかのどこかで―
――さて、今日の仕事はこの辺で良いだろうね。
逃げる者を路地に追いつめて、だなんてのは性には合わんが・・・。
生きるためだからしかたがあるまい。恨まんでおくれよ?
ただ、明日はもっとまともな仕事にありつける事を祈ろう・・・。
――ふぅ、このような仕事は嫌なものだ。
しかし、いつもどんなに大きく賑やかな街でもこの仕事は必ずある。
・・・世界というものはこのようなものだったのか・・・。
――・・・なんだろうね。
恨みもなく見知らぬ人間を追い詰め、そして得る物は幾らかの路銀と、残された者の恨み・・・。
どれだけの恨みをかったのだろう。どれだけの怨念を得たのだろう。
だが・・・、もう何も感じない。・・・私は狂ってしまったのだろうかね?
・・・故郷へ、帰ろう。
狂いきってしまわないうちに。
―回想 終わり―
―現在 集会所―
[悪夢でうなされ、疲れきってはいつつも
自分の部屋から降りてくる]
はは、異性恐怖症で多人数の場所ではまともに喋る事も出来ない私なのに、
毎日のようにこの場所に居る。
家庭を求めていた名残だろうかね?
[集会所に入り、いつもの騒がしい声と、いつも居た小さい揺り椅子の主が
居ない事に気づく]
・・・メイ君?・・・語り部殿?
おかしいね。あの二人は方やその存在感と、方や安心感で大体居ると分かるのだが・・・。
・・・我々は死人、ここはあの世、つまり・・・そういう事、か?
[デボラが掛けていた揺り椅子を、ゆらゆらと僅かにゆらし]
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