[ライデンに頭を撫でられたことに目を細め、席を立つ]
レン。
[名乗られた名を口にし、小さく頷いた。
ぬいぐるみを抱いたまま、キッチンから墓碑群への道を辿り始める]
お散歩。お散歩。
[頭上には昼よりずっと弱い光]
月。
[しばし立ち止まり見上げていたが、思い出したようにまた歩き出す。
墓碑群のある石畳は、素足をひんやり冷やした]
[白い墓碑の一つに、青い花が咲いているように見えた]
おやすみ?
[ぺたりを地面に座ると、それはちょうど顔の高さ。
刻まれた文字を指先でなぞりながら、カナメの教えではない言葉を呟く]
Good night honey.
Sweet dreams.
[白石から指を離して掠めるように口付けると、花の香りが鼻腔をくすぐった]
We'll meet again.
[その言葉を口にした途端、ずきんと頭が痛んだ。
ゆっくりと肩で息をする]
[墓から蕾を一つ手折る。
薄暗い泉に投げ入れ、流れを眺めていた]
おやすみ。おはよう。おやすみ。
[先ほどミナツがそうしていたように、ぬいぐるみの手を持ち上げる。
水面へそれをゆらりと振って、室内へ戻ることにした]
おやすみ?
[ペケレもレンも食卓に突っ伏している。
テーブルにあるのは、ミナツの画材。
スケッチブックの表紙をめくった]
絵?
>>44
きれい。
ミナツの鳥?
[そう答え、ページをどんどんめくっていく。
扉が開かれる気配に振り向いて]
ごはん。
プリン。
[ルリに偏った情報を伝えた]
>>48
わかんない?
[うーん、と真似して首を傾げる。
真っ白いページを開き、青い色鉛筆をミナツへ差し出した]
花。
>>53
ありがとー。
[ミナツがすらすらと描き上げた青いコスモスを見て、2度頷いた。
白い色鉛筆を手に取って、花の傍らに“RIP”と書き記す]
Rest in Peace
[その呟きは、ミナツの声と重なるタイミングだった]
ううん。
[カナメの問いに首を振りながら、カーテンを閉める]
おはよー?
[起き出したペケレを見て、プレーチェの足はまた外へ向かい出す]
橙色?
[泉に浮かぶ花の色は、投げ入れたときと変わっているように見えた]
おはよう。
時間。
[ふわりとなびく髪の様子が、娘の歩く早さを物語る]
オナガ?
[墓碑群の近く、騒がしい鳥の鳴き声が響いている。
見上げ、辺りを探す]
なんで?
[ぼんやりと立ち尽くしたまま、じっと見つめるのは*数刻前と変わらぬ墓碑の花*]
『やすらかにねむれ。
それは、死者への祈りではない。
生者の為の呪文。
別れの儀式は、死者の為に行われるものではない。
自分を言い聞かせる為の物』
[カナメの言葉が頭の中で響く]
『それならば何故、墓碑で記憶を留めようとするの?』
>>98
“安らかに眠れ”。
[目をパチクリさせて、ライデンを見つめる。
次いで視線を移し、花咲く墓碑の一つを指差した]
テンマ。
[しゃがみ込んだライデンの右隣に立って、墓碑に声をかける]
どーしたの?
[ぬいぐるみを持つ左手はそのままに、右手だけライデンの首へ回した。
抱擁になりきれぬ形で、男の肩先で目を閉じる]
おはよう……。
“寒い”……?
[瞬く間に、上着が羽織らされていた。
膝近くまで丈のあるそれを見下ろして、レンの顔を見た]
ありがとー?
>>120
救い……?
[現れたルリに振り向いて、少女の表情を見据える]
あったかい。
[ルリの言葉をそのまま真似て、上着のゴージライン辺りをぎゅっとつまんだ]
ミナツ。
[大きい上着を羽織ったまま、ミナツの元へ駆け寄る。
腕を引っ張り、墓碑まで歩かせた]
青い花。
[テンマの名がある墓を示した]
綺麗だね。
[ミナツ>>132に頷いて、テンマを知らない様子に、上着の内側を探し始めた]
テンマ。
[背広の内側には、T.Tと刺しゅうされている]
いや?
[小さく聞こえてくるルリの言葉>>137に瞬いた]
テンマさんのもの。
[こくこく、とミナツ>>138へ頷く]
かえす?
[問いは、まず墓碑へ。続いてきょろきょろ見渡してから、ルリへ視線を]
>>150
“ありがとう”……
[ルリの口から発せられた、テンマが言ったという言葉を繰り返す。
目が細められ顔が歪みかけたが、間を置いてからレン>>152に振り向き小さく頷いた]
また会おう。
[そうして、去り行くライデンの背中に呟いた]
[いくらかの時間が過ぎた後、何も言わずに深々と頭を下げた]
……散歩。
[行き先を言い残して、墓の前から歩き出すことにした]
[泉には水を飲みに来た小鳥がいた。
飛び立つ様を目で追う]
青い鳥。
[スーツの上着を羽織ったまま、泉へ足をひたす。
腰掛けたタイルはひだまりの*ぬくもり*]
―泉―
[ぴちゃん、ぴちゃんと、水音が響く。
両足を順に水面に叩きつけている音]
てぃー、てぃー。
[背広の内側の刺しゅうを見て読み上げる。
ゆるりと視線を水面へ戻しながら、うなじに手を伸ばした]
[立ち上がり、泉から離れ出す。
きょろきょろと辺りを見渡していると、突然の衝撃]
うひゃぁ……
[素っ頓狂な声を上げて、地面に尻餅をついた。
見上げると、そこには息を切らした黒髪の少女]
……おはよー?
てがみ?
[同じように地面に座る少女の足元には、口の開いた封筒が落ちていた。
娘がそれを指差すが、瞬く間に少女は逃げるように走り去っていく]
だぁれ?
[問いに答えたのはカナメ。去って行った少女はアンという名だと言った。
落し物を拾って、汚れを払い落とす]
>>219
散歩。
[肩に羽織る上着をぎゅっと手繰り、数秒間口を開いたままバクの顔を見ていた]
テンマ。
[それ以上言葉は続かず、ゆっくり口を閉じた]
>>231
ここ。
[墓碑群が見えると手を離し、指先は青い花が咲く墓に向けられる。
近づけば、テンマの名があることがわかるだろう]
向こう?
[落ち着いた様子のバク>>237に、目を瞬く]
[地面に落とした視線は、ルリの叫び声>>240が聞こえるまで*そのまま動かない*]