えーと…。見なかったことに…しましょう。うん、それが良いわ。
[結論付けると、素早く回れ右をして部屋を出た。その反動で箱の上に載せていた名簿が部屋の中に落ちたが、彼女は気付かず委員会室へと戻った。]
えーと? なにかしら? この紙。アンケート?
[箱のそばに置いてあった用紙を取り目を通す。]
□おまかせするわ。もし都合が悪くなった際には抜けますので。
[一読して再び元の位置におき、箱の中から柚子衣を一つ取り席に戻る。その際新しく来た人に気付き]
あなたもパンパカ係に選ばれたのね。よろしくね、えーと…畑くん。
[無くしてしまった名簿を思い浮かべながらモニタを見、会釈をした。]
いいえ? 事務局に直談判した結果です。山吹色の饅頭はさすがに用意していなかったようです。残念です。
[手にしていた釘バットの行方は知れず、何事も無かったかのように呟き、柚衣を頬張る。そして緑茶を啜り]
パンパカ係の名簿も頂いて来たんですけどもね。途中で無くしてしまいました。
[残念です。
そう言って向けた視線の先は、何処か遠くを眺めていた。]
牧野下です。
[結城の間違いを指摘し、視線をゆっくりと彼へと向ける。]
思春期の少年少女より、わたしは金星人の事がよく解りません。
[はぁ、と溜息を吐き頭を横に振って]
えぇ、事務局から名簿を強奪…いえ、快く譲り受けたんですけどもね。ここにくる途中に落としちゃって。かたじけない。
へ? 名簿無くても大丈夫ですか?
[少し間抜けな声を出して顔を上げる。今程目の前にいる研修医…いや、土星人が頼もしく思えたことは無い。]
結城センセーっていい人ですね。それだとすっぽかした人も報われます。
[うっすら涙ぐむ目許にハンカチを当てた。]
金星人はいるんです。ほら、この資料によると四足歩行で歩くって書かれていますから。
[近くに置いてあったファイルを再び引っ張り出し高く掲げ力説した。無表情のまま。]
研修医って安い給料で働かされているんですね。土星人さんって可哀相…。
[結城を思い、ハンカチで涙を拭い]
やっぱりニッポンはだめですか。ジャパニーズテイストもお気に召さなかったようですし…。土星人さんってホント生真面目なんですね。
[電光掲示板から剥がしたふざけた跡や髷カツラを一瞬見ては視線を伏せ、残念そうに呟いた。]
[クルミが土星人との交流に失敗ししょげている頃、菊子の自己紹介が始まっていた。]
森山…牧野下…そのうち山野下とか間違えそうな人が出てきそうね。
[一人ぶつぶつと囁くが、菊子がハンチングとサングラスを装着すると]
仲間がいたわ。
[ちょっとだけ嬉しそうな声を上げたとか。]
交渉能力だなんてそんな…。わたしはただお茶のお供を差し出せって、事務局の人に頭を下げただけだし…。
[菊子に褒められたと知ると、照れた様子を見せた。が、顔は能面のまま。]
そうね、足の本数だけで比べると火星人の方が勝っているの。でも侮れないわ、金星人…。
[手にしたファイルをパシパシ叩いて力説する。]
[食べても良いのかと伺う銀水に、どうぞと言葉を添えて]
事務局の方はことに怠慢です。名簿だってなかなか出てこなくって。だからこそ余計申し訳なくて…。
[菊子の労いの言葉に、思わずほろりと涙し]
ありがとう、森山さん。ささ、どんどん召し上がって?
[特選和菓子セットの箱をずずいと差し出した。]
[もしゃもしゃ和菓子を頬張りながら尋ねてきた銀水に、クルミは僅かに首を傾げ]
あら? 畑くんは手紙を受け取りませんでしたか? あの【パンパカパーン】と書かれた手紙を。
[ゆず上用を手に取りながら、しまって置いた手紙をずるずると取り出し銀水へ見えるように翳した。]
仕事とは見回り係の事です。
名簿とは学園祭に紛れ込んだ宇宙人の名簿です。見つけて、交流を深めるのです。早くコンプリートした人の勝ち。
そしてパンチラはどうやらマチコ先生のようですね。
[菊子が鞄から取り出した変装セットに、きらりと目を光らせた。]
森山さん、お主も悪よのぅ…。
[頭を抱えている結城はそっちのけで早速変装セットの鼻めがねを装着。]
金星人の情報は、頭に入れておいたほうが良いと思うけど。マチコ先生も大切よね。
[ジレンマに陥っている菊子に同情の眼差しを向けた。]
[見回り係の通達に覚えが無いという銀水に、クルミは一通り説明をしながら]
『文面違っていたのかしら? それとも事務局の不手際?』
[眉を顰めながら首を傾げる。説明を一通り終え、自分はソフトボール部なのでスコートとは無縁だと、パンチラ談議に耳を傾けていると、廊下で一騒動起きたらしい。]
賑やかな事はよきことかな…。
[淹れなおしたお茶をずずっと啜り、入り口へ視線を向けた。]
[菊子から山吹色の菓子を受け取り、上機嫌に。]
ふぉっふぉっふぉ、苦しゅうないぞ? 好きに計らえ。
[鼻眼鏡姿が似合うと言われ、上機嫌モードはうなぎ登り。]
…ん? そこで寛いでいるのは斎賀?
[菊子とのお代官ごっこを愉しみながらソファに向けた視線は、クラスメイトの姿を捉える。]
斎賀もパンパカパーンの餌食になったようね。それと…氷嚢の人も。怪我人なのに…。
[結城に氷嚢を乗せられた少女を見、哀れむようにハンカチで涙を拭った。]