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―人形店―
[ジンジャークッキーみたいな平たい人形は、様々な柄のトランクスを履いて並んでいる。]
間に合うかねえ。
出店用に<11>体は欲しいんじゃあ……
[ボタンの皺の寄った口が開閉する。
その人形たちの脇へ座ると、人形の小さなトランクスを布の山から取りだした。]
あの嫁ごは、ちいとも手伝いやしない……。
餡ころもち食べてばかりで、役にたちゃしない……。
[針刺しから針を取り、一人不平の呟きを零し続け。]
あんの孫も、遊びほうけてばかりで…
[老婆の不平よりも緩やかに針先は進む。
続けていれば目と腰に疲労が溜まったため、店先から出て温暖な空気を吸い、
骨を労わるようにして緩慢な伸びをした。]
雨は、降っとらんのか……。
――あんれ。
[通りかかり、頭を下げた女性。]
月下の女将さんかいな。
ああ、改まってどうしたんじゃあ?
あんたさんとこの娘っこも
ミス・トランクスに 参加するって?
V9阻止が目標とな。
はあ、よろしく頼まれてもなぁ…
…水着とトランクスも女将が用意済みかいな。
その組み合わせ、娘っこが着るんか。
嫌がらんかのう。
[対して女将はしとやかな笑みを浮かべただけで、挨拶をして去っていった。]
ああぁ、
腰が痛む。足も痛む。
……しかし御医者様はやたらと散歩を薦めてくる。
はあ……やれやれ、
人形作りももう仕舞いじゃ、
さびつかない為にその辺を歩いてみるかのう。
[奥の間に居た嫁に店を頼んでから、
ゆっくりゆっくりと歩を進め始めた。*]
なんじゃぁ急に。
相変わらず、不思議なやっちゃ。
ほうじゃのう……
雲ひとつない晴れが「いい天気」、ネギヤならそう言いそうじゃな。
[ネギヤの見解のみ述べ。ギンスイの姉へ話が及べば]
はあ、去年のミスが行方知れずと?
なんじゃあ、あの娘っこは相変わらずお騒がせじゃあ。
[ちょっとした事件を聞けば、もごもごと呟く。]
[そして突然、トランクから聞こえた音。
男の微笑みを上目に見た。]
この中で何か飼ってるんかね。
わしゃ、動物なんかは好かんがなぁ……
[やはり、ひとりぶつぶつと零し続け、素っ気なくも礼を述べて、歩き出した。]
[一歩また一歩と、
村道を踏みしめて歩いていると、またもや雨が降りだした。]
あいやぁ…。
今日は降らんかと思ったがぁ…。
[天を見上げる。
暫くすると、軽トラックのエンジン音が近づいてきた。]
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