[>>1:29ニキにコクコクと頷く]
村の伝承をわかりやすく伝えるには絵本がいいのではないかって、歴研部からの提案があってね。
[ライデンをちらりと見やってから、また視線をニキへ戻して微笑んだ]
ニキちゃんなら、何と引き換えにどんなお願いする?
確かに絵本だったら子供にも分かるしね。
[なるほどと納得した後で、ミナツの質問には]
何かと引き換えのお願い、か……。
悩むなあ。
どうでもいいものじゃ願いもかなわないだろうし。
そういうミナツちゃんは何かある?
[質問に質問で返すという悪手を堂々と犯した]
昔約束したの。
[>>1ニキの袖に触れて小首を傾げた]
だから、ネギヤさんがずっとここにいてくれますように、ってお願いするよ。
[しゃりん、と聞こえる微かな音に首を振る。
制服のポケットに手を入れて取り出したのは星の形のソフト煎餅]
健やかな一年になりますように。
[ニキの手に握らせたそれは粉々だった]
ライデン先輩は聞こえますか?
星のくずれる、小さな音。
[スケッチブックを持つ美大生へ、背中を向けたまま尋ねる*]
ネギヤさんがここに?
村から出るようにも思えないけど……。
[ミナツの言葉に首を傾げつつ、粉々の煎餅を受け取って笑う]
扱いが雑すぎるでしょ。それじゃ私は……
幸せでありますように。
苦しいことがあっても、乗り越えられますように。
[そう言って星形のキャンディを差し出す]
[平らげた器を片して、ちょっと首を傾げる。]
…
心配いらないですよオーナー。
…作ってないんで。
[机が減る勢いで拭き続けるンガムラへと言う。
いなくなった客は客じゃないとでも言いたげ。]
仕込みした材料は、明日のランチに使っちゃいます。
[――ともあれ、
今の今までネギヤ失踪を知らずにいたのなら
ンガムラを"占う"こともない と小姐は思う。
壊れた腕時計は、人知れず彼の何を救ったか]
[>>5渡されたキャンディを目線の高さに持ち上げて、ニキの顔との間に浮かべる]
ありがとう?
[尻上がりの語尾のあと、乾いた声で笑った。
ネギヤさんちで涼もうかなぁ、言いながら足は*ネギヤ邸の方角に向く*]
―― 裏山にて ――
[平たいザルには、山盛りのよもぎ。
摘んだ指先はみどりいろに染まる。]
よし このくらいでいっか。
[バクに頼まれたお供え菓子に使う材料。
星祭りの季節だから、村の食材を使う。]
…新しくできた洋菓子屋なんかに、
負けないんだから。
[木々の間を流れる小川が注ぎこむ
澄んだ池の畔で、小姐はよもぎを洗う。]
[ザルを振りながら清水から引き上げる。
ばしゃん、きらきら。
跳ねる、跳ねる、大小の水飛沫、光の粒。]
お星さまみたい。
[小姐は、眦の切れ上がった双眸を細め呟く。]
[星祭りに贈り合う菓子は「星の形」と決まっているが、
きらめく星のかたちは実際のところわからないもので。
小姐は、この村に暮らした10年のあいだ、
ずっと模索していたそのかたちの輪郭を
いまなんとなく掴めた――――気がした。]
……
[ザルを置いて、水面を覗きこむ。映る自分の顔。]
[いちどにっこりとくちびるの端を持ち上げた直後、
先刻にバクへ向けた仕草で、べーっと舌を出した。]
["占い"の眼でみたバク少年は、流れ星を見た
ネギヤ氏を「どうにかした」者ではなくて。]
だったら…
帰りたくないのは、誰だろう?
[小姐は、あの夜散った星のかけらを
受け取った人々を順に*思い浮かべた*]
―― ネギヤ邸・夜 ――
こんばんは。
[畳ほどの大きさの肖像画を見上げて、ヒゲもじゃの男性と目を合わせてみる。
続いて隣に立つネギヤの目を見上げた]
目元は似てるよね。
[家の住人は、二人の姿に気づかずに行ったり来たり。
ふくろうの鳴く声が聞こえ、人影もまばらになってきた]
ライデン先輩?
[そうして、誰も居なくなった廊下で右と左へ声かける。
それから上に、最後に下に向かって名前を呼ぶ]
[夕方にはバク少年宅にお供え菓子が届く。
日持ちするように蒸し上げた、蓬まんじゅう。
たっぷり使った村の食材は、
裏山のよもぎと昨年の秋に採れた自然薯の粉末。
それから、村特産の満天スイカの種をトッピング。
…星型をしたその種は、未成熟でやわらかい黄色。
淡くかがやく星をのせたまんじゅうは、
素朴な白肌に、あおい薫りの*コントラスト*。]
童話に出てきそうな形。
[いつの間にか現れていつのまにか消えていたネギヤに渡された、古めかしい鍵を、ぷらんと目の前で揺らす。
おもむろに口に含んで、小さく笑った]
星の味がする。
流れ星?
[ぱちりと瞬きする]
そしたら当たった時にどうにかなった気がするけど……
そういえば、祠のあたりにも大きなのが落ちたって言ってたっけ。
[唇を小指で撫でながら]
……。
まさか、ねえ。
[流れ星が落ちた後、不思議な症状を訴える人がいた。ネギヤも、そうだったろうか。
忘れっぽい男は、うーむむと思案したが、やっぱり忘れっぽかった]
ごちそうさまー。
[用意されていた封筒からお金を出すと、さっき見ていたお菓子の中から星型の糖衣掛けされた粒チョコレートを持ってきて]
これは、オレが、買うやつ。
[ストライプのペラ財布から小銭を出した*]
[少女たちを別れた後。
ライデンは画材を背負い直し、裏山に足を向けた。
目指すは展望台。舗装された階段を登りながら、ふと重大な手落ちに気づく。
──階段を登りはじめたのは、一体どちらの足からだったか]
──……。
[何が起こるかわからない。
……と、いうのは言い過ぎにしても、「左足から階段を上る」というジンクスを破ったのは数年ぶりだった。
ちなみに以前この決まりごとを破った時は、村に隕石が落ちている。
──因果関係は、きっとないのだけれど。
なぜだか心に引っかかって、止め時を見失っていたのだ]
──裏山・展望台──
……やあっと、ついた。
[夕暮れ時、見下ろした村には、次々と新たな灯がともり出していた。
家の電気がつけられるたび、ひとつ星が生まれたかのように薄闇に浮かんだ。
暗い画面のキャンバスを取り出す。
描かれているのは、眼下に広がる村の光。
手元が全く見えなくなるまでは、作品作りの時間なのだ]
──ネギヤ邸・夜──
……あれ?ネギヤのおっさん、戻ったんだ?
朝屋敷の人らが探してたぜ。
[帰宅途中、屋敷の前にぼうっと立つネギヤに出会った。
片手を上げると、キャンバスとイーゼルとががしゃんと音を立ててぶつかる]
[ネギヤは黙って、開かれた屋敷の扉を指さす。
いつもの話好きな彼とは様子が違い、一向に喋り出す素振りはない。
玄関の奥は真っ暗で、人の気配はなかった。
──「ライデン先輩?」
女の声に、呼ばれた気がする]
……小鳥川?
[思わず屋敷に向かって、一歩踏み出した*]
─ 祠 ─
[店には「お出かけ中」の看板をかけてきた。まあ鍵はかかっていない、いつものことだ]
光に中てられる、ねえ。
[流れ星が落ちてきたあの日のこと]
アタシ、よく覚えてないのよねえ。
[困る、という感情はない。そんな感情、忘れてしまった]
[壊れてしまった腕時計に視線を落とす。
肩をすくめた]
……んまあ。
[風雨にさらされた、立ち入り禁止の看板。あらかじめ用意してきた軍手をはめて、看板をどける]
……。
[草むらにうずもれるようにある、動物とも、人間ともとれない形の道祖神に、立ち入り禁止の看板を持たせるように立てかけた]
[小姐は、歩きながら裏山を見遣る。]
[裏山が何の「裏」かは、ふだん語られないが
村での暮らしが長い者なら誰でも知っている。
――旧家である餅肌屋敷の「裏」だ。
当主のネギヤはいなくなったままで、
見つかったという話はやはりなかった。]
[順繰りの連想。
彼が見たという流れ星の軌跡へ思いを馳せて…
小姐は、夕焼けの薄れゆく村の空を見上げる。]
きっと もう 帰れる場所なんてないのに。
どうして、こんなに…
…――――――――
[折に、滑る視線が通り過ぎゆく裏山の中腹には
立入禁止のほこらがあるが――雇い主たる男が
草むらに足を踏み入れているなど知る由も*なく*]
アリエナイ! アリエナイわ!
[真っ白いハンカチで鼻と口とを押さえる。酷い草いきれと虫と多分見えないだろうけれど足下もドロで酷い有様だ。なるたけ想像しないようにする]
おねぎさんったら、なーにが「ちょっと草むしりすれば」よお! こんなの業者呼ばなきゃ無理! むりむりむり!
[かつては人の行き来できるよう砂利がしかれていた道も、今は見る影もなく。男はがちがち歯をならしながら祠を探す]
ああ、先輩よかったぁ。
[肖像画の隣で背伸びをした格好で、ライデン>>34に視線を向けた]
届かないんです。
こう、こういう感じで線引いてもらえませんか?
[身体いっぱい使って、頭上に横線を引っ張る。
青いパステルを渡し、ためらう背中をぐいぐい押した]